「残業代を計算するときに、〇〇手当や××手当も含めないといけないですか?」
割増賃金、いわゆる残業代の計算で問題となるのは、(割増賃金計算の)基礎に算入される賃金と除外される賃金です。残業代の単価が変わってくるからです。そのため、賃金にまつわるコンサルティングをしていると、先のようなご質問をよく伺います。
労基法では、割増賃金の基礎から除外される賃金の種類が限定されています(限定列挙)。つまり、それ以外の賃金は必ず計算に含めなければなりません。なお、除外される賃金は7種類ありますが、その中でも特に「住宅手当」の取扱いに注意が必要でしょう(誤解されているケースが多くあります)。
そこで今回は、割増賃金の基礎賃金について、どういった賃金が算入されて、どういった賃金が除外されるのか、具体的に詳しくみていきたいと思います。
仕事のできるAさん、上司からの信頼は厚く、同僚や後輩からも慕われている。育休を取得後も職場に復帰する意思があり、復職後の活躍をみんなで心待ちにしていた。
それなのに、育休明けすぐに退職してしまった・・・
後輩のお手本のような存在だったAさんだけに、「復職するといって育休を取っても、(育児と仕事の両立が)いざ無理となったら辞めてもいっか、Aさんもそうだったし」といった、いい加減なムードになってしまうのは避けたい。
Aさんには復帰後の期待も込めて、育休期間中にも一定の賞与を支給したが、今後は育休明けすぐに退職した場合には、これを返還させるのはどうだろうか。就業規則にも規定することで、示しをつけよう・・・
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職場への復帰後の活躍を期待していただけに、育休明けの退職にショックを受ける会社側の心情も理解できないことはありません。ただ、育休期間中に支給した賞与を会社に返還させることに問題はないのでしょうか。さっそく、詳しく確認していきましょう。
「上期の人事評価が5段階評価で最高ランクのS評価の社員がいます。ただ、下期については評価期間中ちょうど育休を取得していたので、勤務実績がありません。そこで年度の評価として、最低ランクのD評価をつけてしまうと、法律的にはダメなのでしょうか?」
会計年度の上期・下期と連動して、人事評価を行っている企業は多いのではないでしょうか。業績(社員の努力)とインセンティブの関係がわかりやすいからです。
そのため、半期の評価期間と育児休暇期間がかぶっている場合、出勤していない社員に対する評価をどうするべきなのか、悩まれるケースも多いようです。評価いかんによっては、育児・介護休業法が禁止する「不利益な取扱い」に抵触するのではないか?というのが、いちばんの懸念事項でしょう。
そこで今回は、育児休業中の社員の人事評価を会社はどう考えるべきなのかについて、詳しくみていきたいと思います。
社員の年収は、月給と賞与によって構成されています。年収に占める賞与の比率は高いので、企業にとっては賞与が年収管理のポイントといえます。
そこで「まず年収を決めてから、月給や賞与に振り分けるといいのでは?」という発想から、年俸制という概念があります。
ですが、年俸制にしたからといっても、労基法の定める管理監督者などに該当しない限り、会社は残業代(割増賃金)を支払わなければなりません。また、大前提として社員がどれだけ働いたのか、労働時間を把握しておく義務があります。
ここで問題となるのは、年俸制における残業代の算定基礎となる賃金についてです。年俸制の賞与部分は、この算定基礎となる賃金に含まれるのでしょうか?
ともすれば間違いやすいポイントといえます。さっそく詳しく確認していきましょう。
懲戒処分とは、「企業秩序の違反に対して会社によって課せられる制裁罰のこと」として考えられています。企業秩序を乱したことに対するペナルティーですから、あくまでも会社に在籍していることが前提です。
では、社員が退職した後にその社員による不正が発覚した場合、懲戒処分はできるのでしょうか。「すでに辞めてしまった社員のことを言っても仕方がない」と思われる経営者や管理職の方もいらっしゃるでしょう。ご心中、察するに余りあります。
ただ、退職した社員について「懲戒処分にするべきなのか?」という悩みが深くなるのは、退職金の不支給もしくは返還についての問題があるときです。
そこで今回は、社員の退職後に違反行為がわかったとき、会社として懲戒処分と退職金の問題にどう対処するといいのか、について詳しくみていきましょう。
9月に入っても、日中の大阪は夏を思わせるような暑さです。日ごとに空が青く澄んでいるのをみて、かろうじて秋の気配を感じます・・・
さて、秋といえば人事異動の季節。10月からの配置転換・出向を検討している企業もあることだと思います。
出向社員は、出向元企業に在籍したまま出向先企業で、業務に従事することになります。
では、出向前には出向元企業から支払われていた給料や賞与は、出向後はどちらの企業から支払われることになるのでしょうか?
また、出向元企業と出向先企業では、昇給基準も異なるでしょうが、どちらの基準によるのでしょうか?
賃金は重要な労働条件のひとつであり、社員の関心も高いトピックです。
そこで今回は、出向社員に対する賃金や賞与の支払い義務はどちらにあるのか、また昇給基準はどう考えるのか、について確認していきましょう。
失敗や挫折の経験は、次に進むためのステップです。逆に「失敗がない」というのは、新しいことにチャレンジしていないからだともいえます。ところが・・・
「営業部のエース社員が取引先との大事なイベントでミスをしてしまいました。取引先に迷惑をかけることになり、本人も責任を感じています。そのため『今月の給料から(迷惑料として)引いてほしい』との申し出があったのですが、どう対応するべきでしょうか」
仕事上の失敗に思い悩んだ社員からの減給の申出に、「反省も十分しているようだが、『けじめ』として本人の意向を汲むべきなのか・・・?」と、戸惑う経営者や管理職の方からご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、ミスした社員からの減給の申出に会社はどう対応するべきなのか、減給に関する労基法の規制を確認しながら、詳しくみていきましょう。
今日、6月10日が賞与の支給日にあたる企業は多いのではないでしょうか。この賞与、ほとんどの働く社員にとっては「支給されて当たり前のもの」という感覚かもしれません。
たとえば毎年6月と12月に賞与が支給されてきたとします。
それでは、毎年賞与を支給していると、「毎年必ず6月と12月に賞与を支給しないといけない」と、慣行化されてしまうのでしょうか?
それなら、業績が振るわない年に賞与を減額したり、もしくは不支給とすることは、法律的にダメなのでしょうか?
不確実性の高い現在、いつもいつも右肩上がりで業績が伸びていくとはかぎりません。賞与の支給がお決まりのもの、ということなら、経営者的には支給すること自体がリスクとなってしまいますよね。
そこで今回は、毎年の賞与支給はお決まりのものとして慣行化するのかどうか、について確認していきましょう。
3月に入りましたが、朝夕はまだまだ冷え込みが厳しく、三寒四温の言葉どおりの今日この頃ですね。
この春からの実施に向けて、就業規則をはじめとする規程の見直しにあたられている企業も多いかもしれません。
最近は、海外出張も増えてきていることから、それについての規程も別途作成する場合もみられます。旅費の水準は、それぞれの企業での出張の実情に応じて考えるべきですが、「社員の給料に関わることなので慎重になります」といったお声を伺うことがあります。
実は、出張旅費など実費弁償的なものは労基法で定める賃金にあたりません。ですが、給料と実費弁償的なものを混同してしまっているケースは意外と多いのではないでしょうか(これには理由があるのですが)。
そこで今回は、出張の旅費・日当は社員の給料にあたるのかをはじめ、そもそもどのようなものが社員の給料にあたるのか、またはあたらないのかについて、詳しく確認していきましょう。
社内では労基法で定めるところの「管理監督者」として処遇してきたが、労働基準監督官の判断によると「労基法に定める管理監督者には該当しない」とのことだった。
(もしくは裁判で「該当しない」と判決された。)
この社員には、時間外や休日労働の対価的な意味も込めて、今まで役職手当を支払ってきた。管理監督者に該当しないということなら割増賃金の支払いが発生するが、今まで支払ってきた役職手当を割増賃金に充当できるのだろうか・・・
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まず、管理監督者に該当するかどうかの具体的な判断基準については、過去記事「どのくらいの役職につくと管理職扱いになりますか」をご覧ください。
では、前述の「管理監督者に該当しない」と判断された場合の役職手当を割増賃金に充当できるのかどうかという問題については、賃金関係のコンサルティングをしているとよくいただく質問です。役職手当を割増賃金に充当できないということになると、企業経営に少なくないインパクトを与えることになるからです。今回はこの問題について、就業規則の書き方のポイントとあわせてみていきましょう。
出向によって、賃金や休日、労働時間などの労働条件が変わることは考えうる状況です。よくある例で言うと、今の会社(出向元)とは違って土曜日も出勤しなければならない、といったこともあるでしょう。
出向先での労働条件が出向元に比べて低下することが見込まれるとき、社員にとっては不安があるでしょうが、会社としてはなんとかなだめすかして我慢してもらう・・・しかないのでしょうか?
もしそうだとすると、出向先での社員のモチベーションが落ちてしまうことが懸念されます。さらに社員に出向を拒否されることになれば、事態はこじれる一方です。
こんなとき、社員の不安感を取り除いて出向先でもパフォーマンスを発揮してもらうために、会社はどのように対応するとよいのでしょうか。
今回は、出向による労働条件の低下に対して会社が行うべき是正措置についてみていきたいと思います。
「これから退職する社員が実は、会社が損害や不利益を被るような悪事を働いているらしい、という噂がたったとします。会社として事実確認の調査をしているうちに、その社員の退職日がきた場合、退職金は支払わないといけませんか?」
10月も最終週となり、気がつくと今年も残るところ2か月あまりとなりました。人事・総務部門では、レギュラーの仕事に加えて年末調整などやることが多くなる時期です。
そんな多忙な時期に、上記のようなことが発生すると大変です。担当者としては、年内に退職日が迫る社員の退職金計算にやきもきしなければなりません。(それで上記のようなご質問をいただきます)
退職金は退職社員にとって「先立つもの」なので、その支払いをめぐる問題が発生することも少なくありません。
そこで今回は、社員の非行調査中に退職金の支払いを見合わせることはできるのか、また無用な問題発生を回避するため就業規則に明記しておくべきことについてみていきたいと思います。
「届出を忘れていたので、要件に合致する手当をずっともらっていなかった。さかのぼって手当をもらえませんか?」
多くの企業では、就業規則(賃金規程)で家族手当や住宅手当、通勤手当をはじめとする諸手当の支給条件が規定されていると思います。支給条件に合致した場合には、社員が所定のフォーマットへ記入し、会社へ届出を行うことによって、会社は本人に手当を支払う・・・という流れが通常考えられます。
ところが、「こどもが生まれたのに、届出をしてこない社員が多くて。周りの社員のなんとなくの世間話や噂を聞いて、慌ててこちら(担当者)が本人に確認するんです・・・」
といった話もよくお聞きします。社員さんから冒頭のような申出があり、対応に戸惑った経験のある人事担当者の方もいらっしゃるかもしれませんね。
担当者が気を回して本人に確認できたときはいいですが、毎度うまくいくとは限りません。もともと所定の届出を行わなかった社員本人に、落ち度があることは確かです。では、冒頭の例のように本人の届出ミスがあった場合、会社はさかのぼって手当を支給しなくていいのでしょうか?
今回はこのあたりについて詳しくみていきたいと思います。
会社組織において一定の管理監督的地位にある社員については、労働時間や休日・休憩等の適用が除外されるので、会社に残業代(割増賃金)の支払い義務はありません。
コンサルティングで企業の方とお話ししていると、
「A社では課長になると管理職扱いになって残業手当の支給がなくなるそうですが、B社では主任になると管理職扱いになると聞きます。管理職にあたる、あたらない、の基準がよくわかりません。一体どのくらいのポジションに就くと、管理職扱いになるのですか?」
といった質問をよくいただきます。
残業代等の支給の有無が判断される「一定の管理監督的地位」とは、その職務権限と実際の処遇によって決まることになります。
そこで今回は、よくご質問をいただく次の2点について詳しくみていきたいと思います。
人事担当者にとって、毎月必ず発生する賃金実務。給与計算もそのひとつですが、他部署の人からみると「誰にでもできるルーティンワーク」と思われがちなのかもしれません。
けれど、給与計算をはじめとする賃金実務は、実はそんなに単純な仕事ではありません。給与から控除される税金や保険料の知識も必要ですし、自社の賃金体系をしっかり把握しておかなければなりません。
賃金実務は、決して単純作業などではなく、効率性と丁寧さが求められる、工夫のしがいがあるクリエイティブな仕事なのです。新年度からよりスムーズに業務を進めたい、ということでこのところ賃金実務にまつわる法律問題についてよく質問をいただきます。
よくいただくのが次のような内容です。
残業計算が煩雑になる、振込先がたくさんあると手間がかかる、などどれも担当者の頭を悩ませる課題です。
また、会社のコスト面にも関わってきます。今回はこれらについて確認していきましょう。
多くの企業では、月給が基本給と諸手当で構成されているのではないでしょうか。そこで賃金がテーマのコンサルティングでは、制度自体を見直すときは、まず手当についてチェックすることをお勧めしています。
なぜなら、手当の目的や意義がよくわからないまま「昔から出しているのでなんとなく」支給しているケースも多く、それらを整理してから基本給の検討を進めるほうが、スムーズに制度を見直せるからです。
また、世間では同一労働同一賃金の議論が高まっており、「なぜその手当を(正社員に、あるいはパートに)支払うのか」と、正社員とパートの諸手当のあり方を吟味しなければならないときが来ています。
近年の人材マネジメントの傾向としては、生計補助的な意味合いのある家族手当や住宅手当などはできるだけ廃止する方向にあります。けれど一方で、会社が社員の生活のことを考慮している、という手当の持つメッセージ性が損なわれる点も考えなければなりません。そこで今回は、賃金制度を見直すときのファーストステップとして、
について、確認していきたいと思います。
人事制度(人事評価と賃金制度)を刷新したいとは考えているものの、今の体制から新しい制度へうまく移行できるのか心配だ。
給料が上がる人はうれしいかもしれないが、反対に下がる人に対してどう対応すればいいのか。社員のみんなは果たして納得してくれるのか。
クリアしなければならない問題を考えると、うちの会社が制度を新しくするのはハードルが高いことなのだろうか、と考えてしまう。
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人事制度を新しく改定するとき、こんな不安はありませんか?
コンサルティングをしていると、実はこのようなお声をよく耳にします。特に賃金は人材マネジメントの中核となるものであり、どのように扱うかで会社の成長に大きくかかわってきます。
人が日常生活を送るうえでお金は必ず必要なものなので、社員のやる気に少なくない影響を与えるからです。社員に理解してもらえるよう、丁寧かつ迅速な対応が求められます。そこで今回は、新しく構築した賃金制度へ移行する3つの手順についてみていきましょう。
みなさんの新しい制度に対する、不安のハードルが下がるヒントになればと思います。
自社に合った賃金制度をつくりたい、と経営者の方からよくお伺いします。とは言っても、今の制度にどんな問題や課題があるのか具体的にはわからない。だからどういった制度が自社には合って、合わないのか、何を基準に見極めるといいのか・・・などと思案されていることも多いようです。
そこでまずは、自社の賃金実態がどうなっているかを把握することから始めてみましょう。月給、賞与、年収総額について、年齢や役職、人事評価などの観点から詳しくみてみると、どんなことがネックとなっているのか、検討しなければならない問題や課題に気付くことができます。
では、現状の賃金実態をつかむための分析ポイントを、詳しくみていきましょう。ポイントは大きく分けて次の3つです。これらを確認するプロセスで、自社に合った賃金制度のカタチが見えてきます。では、さっそく確認していきましょう。
今年も残すところ1か月あまりとなりました。12月といえば冬のボーナス、賞与の支給日を間近に控えた企業も多いのではないでしょうか。
年収は月給と賞与によって決まりますし、年収に占める賞与のボリュームは大きいもの。企業にしては、賞与には会社の業績をみながら総額人件費の管理を行うとともに、社員の年収も管理する機能があります。
社員の年収管理で大きな役割を持つ賞与ですが、
「年俸制にすると、賞与を調整弁にして年収管理するわけにはいかないですよね?」
との質問をいただくことがあります。
そこで今回は、年俸制における場合も含めて、賞与と年収管理の関係について詳しくみていきたいと思います。
これからの人材マネジメントの流れは、職務や役割を基軸にしたものになる。貢献度のレベルが近い社員を集めてグループにしたのが資格等級、そのつくり方のイメージも大枠はつかめた。この資格等級にもとづいて社員の賃金を決定する。
そこで、今いる社員を資格等級に割り当てなければならない。しかし、どう当てはめていいのかわからない・・・
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人事制度を整備するとき、資格等級にもとづいて社員それぞれの月給を決めるにはどうすればいいのか、そんなご相談をよくいただきます。
「社員の格付に、私情をはさんでしまうのではないか」「せっかく作った資格等級も結局活用できないままになってしまうのでは」といった不安の声もよくお聞きします。
そこで今回は、資格等級にもとづいて月給を決めるには、具体的にどのようにするといいのかをみていきたいと思います。
賃金制度のコンサルティングをしていると、「どんなことに気を付けて、社員の月給を決めるといいのですか?」との質問をいただきます。
まず会社として考えるべきは、「その人件費は適正かどうか」ということです。つまり目標とする利益(もしくはせめて赤字にならない)をしっかりと出せて、企業の支払い能力に合っているどうかを検討する必要があります。
このことをお伝えすると、続いて次のようなことを伺います。
「適正な人件費を考えるということですね。そうやって昇給額を考えていくと、若手社員の昇給水準をどうしても低く抑えないといけませんよね。採用時の賃金設定に悩みます。」
社員の役割や貢献度に見合った賃金を決定することが、これからのトレンドであるしても、若手社員やベテラン社員の月給を考えるとき、場合によっては、年齢や勤続年数についての「オプション」を検討してみてもいいかもしれません。
では、次から詳しくみていきましょう。
「働き手の価値観も変わってきているので、改めて今の時代に合った働き方や賃金のあり方を見直したい」とのご相談が最近増えています。
かつて多くの日本企業では、終身雇用制や年功制が採用されており、会社が家族を含めて社員の面倒をみる、といった考え方が主流でした。けれど今や、政府主導で同一労働同一賃金の議論や、能力で評価する人事システムの推進が提唱されるなど、人材マネジメントのトレンドは大きく変わろうとしています。
「自社において大切な役割とは何か」「会社に貢献するとはどういったことなのか」について、今まで以上に明確にすることが必要でしょう。
その関連記事として「これからの正社員とパートの賃金体系のあり方とは」では、人事管理の仕組みをつくるポイントのひとつとして、「社員のランクを決めること」とお伝えしました。
社員のランクを決めるとは、従事する仕事の重要度や会社への貢献度のレベルを格付けすること。仕事の重要度や貢献度が同じレベルの社員を集めたものを、資格等級として設定するのですが、具体的にはどうやって資格等級をつくっていくといいのでしょうか。
今回は、資格等級のつくり方について詳しくみていきたいと思います。
前回の記事(これからの正社員とパートの賃金体系のあり方とは)で、正社員とパートの賃金体系を考えるにあたって、賃金差が単なる「年齢や勤続年数によるもの」という理由しかないのであれば、合理的な説明をもって会社の説明義務を果たすことは難しくなる、ということをお伝えしました。
そこで、「合理的な説明になっていない事例は、他にどんなものがありますか?」との感想をいただきました。 合理的な説明ができていないケースがよくみられるのは、賞与や手当についてです。
確かにこれから同一労働同一賃金の議論が高まってくるなかで、正社員とパートの賞与や諸手当も含めた賃金のあり方について、どのように対応するかを考えておく必要があるでしょう。現実的かどうは別として、無期雇用フルタイム社員と有期・パート社員の会社への貢献度が同一の場合、賞与も同一に支給するべき、との議論もあります。
ですから、両者の役割や貢献度がどのように違うかについて、明確な説明をできるようにしておきたいですね。
今回は、具体的な事例を交えながら、これからの正社員とパートの賞与や諸手当のあり方についてみていきましょう。
政府では、「日本の非正規雇用労働者の賃金水準は欧州諸国と比べて低い」「不合理な待遇差の解消は重要な政策課題」として、同一労働同一賃金の実現に向けた立法化が検討されています。
政府が同一労働同一賃金の目標にあげるヨーロッパ諸国では、職務評価制度が確立されています。
産業別労働組合と経営者の間で賃金が決定され、たとえば「受付」という職務について、同じ地域であればどこの企業でも同じ賃金となります。「技能」「努力」「責任」「作業条件」・・・といった職務評価基準がしっかりと運用されているのです。
そのため定期昇給はなく、賃金を上げるには職務間の移動(「受付」から「秘書」などへ職務を変更する)を行うことになります。
一方、日本ではこのような企業を問わない、横断的な賃金制度は確立されていません。企業ごとに年齢、勤続年数、仕事の内容、学歴、会社への貢献度といったさまざまな要素で、賃金が決定されています。職務別にではなく、新卒を一括採用するケースが多いからです。
また、日本では職務評価基準が確立していないので同一労働同一賃金の原則の適用はない、との判例もあります。
では現在、検討されている同一労働同一賃金とはいったいどのようなもので、企業はどう対応していくといいのでしょうか。
自社に合った賃金制度を考える経営者から、「頑張ってくれた人に報いたいが、それぞれに生活もあることなので処遇や評価に悩む」とのお話をよく伺います。社員の月給を一度上げると、法律的に下げることが難しくなります。また会社への貢献度を図る評価項目が多く複雑になると、運用がややこしくなってしまう可能性も考えられます。
これらを考えると、社員の短期間の頑張りを報いるには、賞与で思い切って評価するほうが、スムーズなのかもしれません。
そもそも賞与には大きく分けて
といった意味合いがあり、諸手当などと比べると社員の年収に占める比率も高くなります。そのためどのように配分すれば、社員はもっと頑張れるのか?と経営者の方は頭を悩まされることも多いのではないでしょうか。
今回は、理想的な配分を実現できる賞与制度のあり方についてみていきたいと思います。
9月に入り、朝晩の暑さは少し和らぎましたね。青空の高さやイワシ雲をみるとさわやかな秋の気配を感じます。
とはいえ台風シーズンの真っただ中なので、その進路が気にかかるところです。予報によると今年のピークは9月だそうですね。
大型で強い台風が朝の出勤の時間帯に接近すると、社員の通勤に影響が出ます。休校や休園となった、こどもの面倒を見なければならない社員もいるかもしれません。
そのためこの季節になると、「交通機関の混乱に社員が巻き込まれないようにしたいが、その場合、勤怠や賃金の支払いはどう処理するとよいのか」とのご相談をお聞きします。
そこで今回は、
この2つのケースにおける、台風が来たときの勤怠と賃金の取り扱いについて具体的に確認していきたいと思います。
梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、夏の賞与支給の時期が近づいてきました。
公務員の賞与支給日は法律や条例で定められていますが、民間企業ではいつに支給しなければならないなど、ガイドラインがあるわけではありません。慣例に従って、同じ時期に支給する企業が大半ではないでしょうか。一般的には6月末から7月にかけての期間に夏のボーナスが支給されることが多いようですね。
賞与の支払いについての注意点は、過去記事(「賞与で社員にメッセージを届けるには」)にも書きましたが、「支払うのか支払わないのか」「いつ」「どんな計算方法で」といったことは、自社独自のルールで決められるものです。
けれどそれゆえに、「こんな支給要件でいいのか?」と悩まれることも多いようです。
そのなかでよくご相談を受ける、「出勤率」を支給要件として設ける場合の注意点について、今回はみていきたいと思います。
過去記事「社員が会社で働きたくなる5つのメリット」では、給料の高さによらない会社の価値や魅力についてお伝えしました。とはいえもちろん、ズバリ賃金制度そのものについて、ご相談をいただくこともあります。よくお聞きするのは次のような内容です。
「以前、他の社労士さんやコンサルタントに相談して、賃金改定のシミュレーションをたくさん出してもらったが、どれにすればいいのか決め手がわからなかった」
「昇給ピッチの計算方法やその条件について説明を受けたが、現実的な実感がなかった」
「ものすごく難しい数学的な式で理解できなかった」
会社のこだわりポイントや今後の方向性が明確でないまま、テクニカルに試算結果の検討を行っても、現実的な納得感は湧きません。なので、どの試算結果が自社にフィットしているかなんて選択しようがありません。
賃金制度を整備するのに大切なのは、シミュレーションよりも会社のこだわりや方向性を考えることです。次から詳しくみていきましょう。
これまでは社員が定期券を失くしてしまう懸念から、1か月ごとに通勤代を支給していた。今では、万が一なくした場合でも、再発行してもらえるIC定期券とやらがあるらしい。それなら安心だ。同業のA社さんでは、マイカー通勤の社員が多いが、ガソリン価格の変動から定期的に見直しているらしい。だからうちも1か月定期代相当を支払ってきたところを、いちばん安い6か月定期代相当にぜひ見直したい。
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コスト削減のため通勤手当を見直したい、とのご相談をコンサルティングでお伺いすることがあります。通勤手当として定期券相当額を支給している場合は多いでしょう。そこで冒頭のような事情から、見直しを検討される会社もみられます。1か月定期の額と6か月定期の額では、後者の方が高い割引率だからです。
そこで、6か月定期券相当額への通勤手当の見直しは、社員にとって不利益変更とならないのかが問題となります。
今回は、通勤手当の見直しで気を付けるべき点についてみていきましょう。
社員の生活費の一部を補助するために、家族手当を支給している会社は多いと思います。
家族手当の内容も、「配偶者がいる社員に」「子どもがいる場合」など会社によって様々でしょうが、支給要件を見直したいとのご相談を最近よく伺います。
その背景には、家族構成の変化、共働き家庭が増えてきたこと、行政による児童手当の支給があること、国が(会社の支給する)配偶者手当の見直しを提言していること、などがあるかと思います。
今回は、家族手当の減額や廃止など見直しを行うときに、気をつけるべき点をみていきましょう。
「当社のライバル企業へ転職していった者に、そうとは知らずに退職金を払って晴れやかに送り出していたかと思うとやり切れない。だから退職後の一定期間は競合他社で働いてほしくない。本音をいうと、裏切られた気持ちになるので退職金を払いたくない」
コンサルティングをしていると、経営者や幹部社員の方からこのような競合他社への転職を知らずに退職金を支払う事態を避けることはできないのか、とのお声をよく伺います。
就業規則に「競業避止義務」を設けている場合もあるでしょう。
これは「社員には労働契約を結ぶにあたって、会社へ不当に損害を与えないよう誠実に働く義務があるので、競合他社での兼業を禁止する」ということです。
そこで、下記のような点が問題になってきます。今回はこれら2点について詳しくみていきましょう。
賃金制度を見直した。それに合わせて賃金表も再設計した。
社員を新しい号俸に格付けしようとしたら、今支給している給料の額が、なんと号俸数の上限を超えてしまっているじゃないか。今の支給額に合わせて、号俸を新しく設定すると、原資の額がどんどん膨れ上がってしまう・・・
初号俸の金額や昇給ピッチをどう設定するかなど、賃金表のシミュレーションにみなさん頭を悩ませて、ご相談にお越しになります。
結構な時間や労力を割く前に、賃金表をつくる必要が本当にあるのか、まず考えてみませんか。
それでは今回は、今の時代において賃金表は必要なのかどうか詳しくみていきましょう。
会社が社員に支払う毎月の給料は、基本給にプラスして、家族手当や役職手当をはじめいろいろな手当を支給している場合が多いでしょう。
とはいえ、「以前は何か意味があったのだろうが、今となっては支給の意味がわからない・・・」といった、支給目的のわからない手当は、みなさんの会社にはありませんか?
そんなときは手当を見直す、もしくは廃止するタイミングです。
とはいえ、慌ててすぐさま手当の支給をやめるのは待ってください。
手当を廃止する前に、ぜひとも考えていただきたいことがあるのです。
今回は、いま支給している手当を廃止に不向きる前に検討しておきたいことについて、詳しくみていきましょう。
6、7月は賞与の支給時期にあてている会社さんも多く、賞与に関するご相談がよくあります。頑張ってくれた社員にできる限り賞与として還元したいけれど、原資を確保するのに苦労する、との話も伺います。
けれど経営者がせっかく工面して支給した賞与も、社員にとってはもらって当たり前…とはよくあること。
せっかくの賞与ですから、社員へのメッセージをこめられるツールとしてうまく活用することを考えてみませんか?
今回は、賞与で社員にメッセージを届ける方法についてお伝えしたいと思います。
社員の給料を考えるうえで年俸制や歩合制を導入したい、とご相談をいただくことがあります。
「人件費が管理しやすい」「本人の成績や会社の業績に応じた支払い」
などの点にメリットがある、と思われるからでしょう。
もちろんメリットだけでなく、デメリットもあります。よって、デメリットを上回るメリットがあるか、自社の現場の実情にあっているか、今いる社員のモチベーションはあがるのか、などを考えたうえで導入について判断する必要があります。
そこで今回は、年俸制と歩合制のメリットとデメリットについてみていきたいと思います。
就業規則や人事制度のコンサルティングをしていると、退職金についての質問もよくいただきます。
よくいただくのは、次のような内容です。
「法律で退職金を支給しなければいけないと決まっているのですか?」
「どのくらい払うと、世間並ですか?」
「退職金制度がある、と求人広告に載せないと、人材を獲得するのに不利になるでしょうか?」
中小企業では、「人材マネジメント」と「財務」というふたつの側面に留意しながら退職金制度について考える必要があります。
いちばん大切なのは、自社にとってどういった目的で退職金制度を設けるのか?という問いかけに対して明確な答えを用意することです。
今回は、このあたりについて詳しくみていきたいと思います。