管理職の役職手当と割増賃金の関係を就業規則に定めていますか?

オフィスのデスクに広げられたノートパソコン、コーヒーの入ったカップ、ペン立て。傍らにページが広げられた就業規則。

社内では労基法で定めるところの「管理監督者」として処遇してきたが、労働基準監督官の判断によると「労基法に定める管理監督者には該当しない」とのことだった。

(もしくは裁判で「該当しない」と判決された。)

この社員には、時間外や休日労働の対価的な意味も込めて、今まで役職手当を支払ってきた。管理監督者に該当しないということなら割増賃金の支払いが発生するが、今まで支払ってきた役職手当を割増賃金に充当できるのだろうか・・・

 

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まず、管理監督者に該当するかどうかの具体的な判断基準については、過去記事「どのくらいの役職につくと管理職扱いになりますか」をご覧ください。

 

では、前述の「管理監督者に該当しない」と判断された場合の役職手当を割増賃金に充当できるのかどうかという問題については、賃金関係のコンサルティングをしているとよくいただく質問です。役職手当を割増賃金に充当できないということになると、企業経営に少なくないインパクトを与えることになるからです。

今回はこの問題について、就業規則の書き方のポイントとあわせてみていきましょう。

役職手当を割増賃金に充当できるか

コーヒーをお供にノートパソコンに向かう管理職社員。青のチェックシャツ。

「管理監督者に該当しない」と判断された場合に役職手当を割増賃金に充当できるかについては、役職手当に割増賃金相当分が含まれていることが明白でなければいけません。

 

言い換えると、役職手当のなかに割増賃金相当分がいかほど含まれているのか、役職手当と割増賃金相当分とが区別できる状態でなければならないということです。

 

そうでなければ、たとえ役職手当という名称であっても割増賃金に相当する手当が実質的に支給されていた、とは認められずに、「地位、職務、権限、責任といったものの対価として支払われていた」とみなされることになります。

 

そこで対策としては、社内において管理職として処遇し、時間外・休日労働等の適用を除外している社員について、「役職手当中〇〇万円は、時間外・休日労働の割増賃金相当額である」といった旨の規定を定めておくことが考えられます。

 

けれど、実際には「そこまで定めるのは難しい・・・」とのお声をよく伺います。

就業規則にどう定めておくか

デスクに広げられたノートパソコン。傍らにノート。

もし裁判等になったとしても、役職手当の中に割増賃金相当額が含まれていたことが認められるよう、前段に続いて第二の策として考えられるのが、就業規則や賃金規程において次のように規定しておくことです。

 

「役職手当の支給を受ける者については、時間外・休日労働の割増賃金は支給しない」

 

このように定めることで、役職手当と割増賃金の二重支給はしない、ということを明示しておきます。それによって、もしも裁判等で「管理監督者に該当しない」と判断された場合でも、 

  • 割増賃金が支払われないから役職手当を支払っていた(割増賃金が支払われるなら役職手当を支払っていなかった)
  • よって、役職手当は割増賃金相当分として充当しなければ二重取りとなって、社員間で不公平が生じる
  • 社員にしてもこのような不公平な取り扱いは望んでいない

少なくとも、管理職の役職手当と割増賃金の関係について、このような主張ができます。

 

ですから、制度的な取り扱いしていることを就業規則に規定するなど、役職手当の全部又は一部が時間外労働の割増賃金の趣旨で支給されていることを主張できる対応を行っていることがポイントとなります。

 

特に、役職手当と割増賃金の二重支給ということになれば、社員の間での不満の種になりかねません。

上記のように就業規則に明記し、「役職手当は、管理職に時間外や休日に働いてもらった報償の意味も込めて支払う。だから役職手当の支給を受ける管理職については、時間外・休日労働の割増賃金は支給しない」との旨を、社員にきちんと説明しておくことは、仕事へのモチベーションにも関わってくるのでとても大切です。

 

おりしも働き方改革推進関連法の成立により、どの企業においても、さまざまな対応について見直さなければならない時期にあることでしょう。

就業規則も振り返ることになるでしょうから、その際にこれらのこともぜひ、改めて確認していただければと思います。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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