役割と貢献度に応じた資格等級をつくるには

色とりどりカラフルなマジックペン、色鉛筆、クレヨン、絵の具のパレット。

これからの時代にマッチした賃金体系など人事制度を考えたい、とのご相談が最近増えてきています。

これまでは「会社が家族を含めて社員の面倒をみる」との考え方が主流だったが、今は働く人の勤労観も変わってきているので改めて働き方や賃金のあり方を見直したい、というのがその理由です。

 

かつて多くの日本企業では、終身雇用制や年功制が採用されていました。けれど今や、政府主導で同一労働同一賃金の議論や、能力で評価する人事システムの推進が提唱されるなど、人材マネジメントのトレンドは大きく変わろうとしています。

 

そこで「自社において大切な役割とは何か」「会社に貢献するとはどういったことなのか」について、明確にすることが必要となってきます。

その関連記事として「これからの正社員とパートの賃金体系のあり方とは」では、人事管理の仕組みをつくるポイントのひとつとして、「社員のランクを決めること」とお伝えしました。

 

社員のランクを決めるとは、従事する仕事の重要度や会社への貢献度のレベルを格付けすること。仕事の重要度や貢献度が同じレベルの社員を集めたものを、資格等級として設定するのですが、

「具体的にはどうやって資格等級をつくっていくといいのですか?」

との質問をいただきました。

今回は、資格等級のつくり方についてみていきたいと思います。

資格等級をつくる意義

青空と住宅街が見える窓辺に、家のミニチュアハウスが3体並んでいる。

賃金のあり方を見直すにあたって、コンサルティングで実際に経営者の方からお話を伺っていると、「社員の生活費に見合った給料を保障してあげたい」といったことをよくお聞きします。

 

かつての日本企業では、終身雇用制や年功制のもとで人材マネジメントを行ってきました。社員は同じ会社で長い期間働くことになるので、自分の生活や人生が会社の運命に大きく左右されることになります。そのため社員には経営に参画する意識が生まれ、経営者にしても経営状況が悪化したからといって簡単に社員を見捨てない、ともに協力してやっていこうとする関係性がつくられてきました。そのため社員の生活をできるだけ保障したい、と思われるのでしょう。

 

けれど今や政府による働き方改革の一環で、年功ではなく能力で評価する人事システムの普及が掲げられています。そこで「年功によらない賃金システムへ移行すると、ドライすぎる印象を社員に与えないだろうか?」との制度移行への不安もよく伺います。

確かに、能力・技術・職責に応じた賃金システムが今の日本にどれだけ浸透しているかには疑問がありますが、世論が高まるなか、企業として真っ向から考えないわけにもいきません。

資格等級づくりのファーストステップ

オフィス内でパソコンのキーボードを打ち込む女性社員。さわやかな笑顔。

ですからまずは、「うちの会社ではどういった行動を高く買うのか」という自社における社員の役割や貢献度を明確にすることが大切です。この貢献度の差が、「等級」となります。貢献度のレベルが近い社員を集めてグループにしたものが、「資格等級」です。この資格等級ごとに期待することを明確にして賃金を決定すると、社員の貢献に見合った処遇を実現できます。

 

ちなみに日本では等級制度として、

  1. 職能等級
  2. 職務等級
  3. 役割等級

の3つが考えられてきました。

1)職能等級

本人の努力で能力を身に付け、ある一定レベルの能力があると認められたら昇格する。

(いったん身に付けた能力はそうそうなくならない、だから降格にはつながらないという考え方)

2)職務等級 担当する仕事の価値のグレード(責任度合い、貢献度、難易度など)に応じて昇格・降格が決まる。
3)役割等級

 2)に近い。

担当する仕事の価値のグレードが低くても、本人の才覚次第で高い価値に仕立て上げていくことは可能とする考え方が背景にある。

この1)から3)の違いは概念的であり、実務上はそれぞれの会社で定義し、運用していくことになります。

最近の傾向としては、2)や3)の考え方から等級を設定するケースが多くなっています。

1)のように能力を「保有」していても、「発揮」していなければ成果に結びつかない、それなら降格もありなのではないか、との考え方が厳しい経済環境のなかで出てきたからです。特に管理職について能力の定義や評価が難しく、管理職待遇の人数だけ増えてしまった、との批判もあります。

また労働力人口の減少時代において、女性、シニア、外国人の活用を今まで以上に考える必要性が出てきます。その環境のなかでは、終身雇用ではないけれど、それなりの長期スパンでの雇用を前提とした人材マネジメントを考えていくことになります。ですからこれからのトレンドとして、職務や役割を基軸にした考え方によりシフトしていくと思います。

資格等級のつくり方のポイント

キーボードに打ち込む女性社員の手。

では具体的に資格等級をつくっていきましょう。

大まかな手順としては以下のようになります。

 

  1. 「自社においてどんな行動を高く買うのか」社員の役割や貢献度を具体的にする
  2. 「貢献度の差」からいくつにグルーピングできるかを考える
  3. 各等級レベルのイメージを確定させる
  4. 各等級レベルでどんなスキルや役割が求められるのかを決める
  5. 昇格時の基準やルールを決める

 

1)については前段で触れましたので、2)からポイントをお伝えします。

資格等級の数は「絶対にこうしなければならない」というのではなく、企業ごとに考えるものです。数が少なければなかなか昇格のチャンスに恵まれないことになりますが、数を増やしすぎて、その違いがわからなくなるのも考えものです。まずは3段階(初級・中級・上級)に分けてみましょう。たとえば給与計算業務なら、「タイムカードの集計ができる(初級)」「給与ソフトに必要事項を入力できる(中級)」「社会保険、所得税、住民税の仕組みを理解している(上級)」といった具合です。

 

3)はイメージを確定するため、各等級にネーミングするとわかりやすいと思います。1等級、2等級・・・という呼び方では、各等級の具体的なレベル感がわかないからです。たとえば「新人」「リーダー」といったかんじで考えてみましょう。

 

4)は各等級に求める具体的なスキルや役割を考えます。きっとそれぞれの企業において「入社3年目でこのくらいができなければ先は厳しい」、「リーダーならこのくらいの知識を持っていなければ後輩の指導はできない」といったことがあると思います。けれど日常的な業務のなかで、こういったコミュニケーションはなかなかできないものです。この機会に期待レベルを明示していきましょう。

 

5)はどうすればひとつ上の等級に上がることができるのかを明らかにします。たとえば「資格等級による人事評価がプラスである」、「勤務状況」、「上長の推薦」といったことが考えられます。こういった基準やルールが示されると、社員は目標意識を持つことができ、キャリアの道筋がみえるので安心して仕事に取り組むことができます。

 

 

以上、資格等級のつくり方のポイントをお伝えしましたが、この資格等級の整備がしっかりしていなければ、賃金体系も連動してぐらついてしまいます。ぜひ「この行動は会社を伸ばすことにつながるか?」と、いつもの仕事のやり方をよく振り返ってみることから始めてみましょう!

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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