ミスした社員からの減給の申出に会社はどう対応するか

イベントの準備。青を基調としたペットボトル、ペーパーナプキン、プラスチックのカトラリー、水玉の紙コップ。

失敗や挫折の経験は、次に進むためのステップです。逆に「失敗がない」というのは、新しいことにチャレンジしていないから、ともいえます。ところが・・・

 

「営業部のエース社員が取引先との大事なイベントでミスをしてしまいました。取引先に迷惑をかけることになり、本人も責任を感じていて『今月の給料から(迷惑料として)引いてほしい』との申し出があったのですが、どう対応するべきでしょうか」

 

仕事上の失敗に思い悩んだ社員からの減給の申出に、「反省も十分しているようだが、『けじめ』として本人の意向を汲むべきなのか・・・?」と、戸惑う経営者や管理職の方からご相談をいただくことがあります。

 

そこで今回は、ミスした社員からの減給の申出に会社はどう対応するべきなのか、減給に関する労基法の規制を確認しながら、詳しくみていきましょう。

減給の制裁に対する制限とは

テーブルコーディネート。お皿、ナプキン、フォーク、ナイフ、スプーン、グラス。

労基法は、就業規則で定める制裁(ペナルティー)のなかでも、減給の制裁を定めるときには、減給の額があまりに大きすぎて社員の生活を脅かすことのないように、減給の最高限度を定めています。

 

その限度とは、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」としています。「総額の10分の1」と「日額の半額」というのは、両方を満たさなければなりません。

 

賞与も賃金ですから、「総額の10分の1」と「日額の半額」という制約は月給だけでなく賞与の場合も同じく適用されます。ただし賞与の場合、「制裁(ペナルティー)に処する事由があった事実」から査定によって賞与の支給額を決めても、当然に制裁とはいえないでしょう。

 

というのも、多くの企業では賞与額の決定において、賞与原資の一部を経営者の裁量によるものとしており、それは制裁とはいえないからです。

ただし、年俸制により賞与が確定している場合には、賞与を減額することが制裁と解釈される可能性があるので注意が必要です。

ミスした社員からの減給の申出

ピンクのキャンディマシーン。

前段でお伝えしたように、減給の制裁が労基法の規制する最高限度を超える場合には、同法に違反することになります。

 

では、減給がミスした社員自身からの申出であった場合には、会社による制裁ではないので、これをどう考えるべきでしょうか。

 

ここで問題となるのが、労基法による賃金の全額払いの原則との関係です。

 

賃金の全額払いの原則とは、「賃金は、原則として、賃金の全額を社員に支払わなければならない」ということであり、つまり、会社が賃金の一部を差し引いて支払うことを禁止しています。

例外として、税金や社会保険料など法令に根拠がある場合と、社内預金など労使協定が締結されている場合のみ、控除が認められています。

 

そのため賃金減額の申出については、これまでの判例の積み重ねによって、「純粋に賃金債権を放棄する」という社員本人の強い自由意思が問われることになります。

 

実務的には、この社員の自由な意思を本人の自筆により書面化するなど、明確な証拠としておくことが考えられます。

けれど、社員に賃金を放棄させたからといって、冒頭の例でいうと、「取引先との大事なイベントをミスなく成功させる」という、会社としての当初の目的が手に入るわけでもありません。

たとえ社員からの申出であっても、これを会社が受け入れていると、そのうち社員は失敗をこわがり委縮して、「自ら動かない→指示を待つ→何もしない」という選択をするようになるでしょう。

 

会社として大切なのは、ミスした社員に「失敗経験を自分の成長につなげること」を言い聞かせ、その方法をいっしょに考えることではないでしょうか。

 

失敗から学んで成長に結びつける、という行動パターンを職場に定着させることが、積極的に自分から動く社員を育てるポイントだと思います。

赤のギンガムチェックの上に置かれたドーナッツの皿。ジェリービーンズ。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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