職場で1回200円の罰金制度をつくってはダメですか?

ページが開かれた洋書。ミルクティーのカップ。フリージアなど春の花たち。

「作業場では必ず作業帽を被れと注意しているのに、しばらくすると被らない者が出てきます。作業帽の不着用1回200円、みたいに罰金制度をつくってはダメですか?

 

着帽を呼びかけるものの、「頭が蒸れて気持ち悪いから被りたくない」「ダサいから被りたくない」と不満をもらす社員がいて困っています・・・といった現場のお悩みをお聞きすることがあります。

 

会社としては何としてでも社員の安全を守らないといけないので、罰金制度をお考えになる気持ちもわかります。とはいえ、会社が設ける罰金制度については、労基法が定める「減給の制裁」、「損害賠償額の予定の禁止」の内容を押さえておくことが大切です。

 

そこで今回は、社員の意識づけ向上のための社内罰金制度の取扱いについて詳しく確認していきたいと思います。

気をつけたい社内罰金制度の取扱い

オフィスのデスクに置かれた観葉植物。黄色の鉢。

社員が業務命令に違反したことや、不注意や怠慢から起こした失敗によって会社に損害を与えた場合、現実に生じた損害について賠償すること自体は禁止されていません

(たとえば、運送会社のドライバーが飲酒運転によって事故を起こし、車両が大破したとき、会社が当人に対して損害賠償を求めることができる)

 

また、遅刻や早退についてその時間に比例しないで「1回につきいくら」と決めて給与から差し引くことや、「備品を私用につかった」「同僚と取っ組み合いの喧嘩をした」といった事由に対して一律に賃金を減額することは、労基法第91条の「減給の制裁」と解釈されます

 

これは、あくまでペナルティー(懲戒処分)としての対応であり、減給制裁の範囲(減給1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払い期における賃金総額の10分の1を超えるのはダメ)なら可能といえます。

 

ですが、交通事故による物損などについて、あらかじめ「物損1回いくら」「人身事故1回いくら」というように金額を決めた罰金制度を設けることは、労基法16条の「賠償予定の禁止」に抵触しないかが問題となります。

実務的にはどうなる?

ページが開かれた英英辞典のうえに無造作に置かれたピンクのヒヤシンス。

たとえば交通事故を防止するために、会社が社員に安全運転を意識づけるべく「物損1回いくら」といった基準を定めて社内罰金制度を設けたとします。

 

ですが、労基法16条の「賠償予定の禁止」では、損害賠償額を事前に決めておくことを禁止しています(損害賠償請求を禁止しているのではありません)。

 

実際の損害額がいくらになるかは起きてみないとわからないのに、会社が社員にやたらと高い損害額をあらかじめ提示して合意を強要すると、社員の足止め策となって退職の自由が拘束されてしまうからです。

 

では、前述のように会社が制度を設けて罰金を徴収するのではなく、「社用車はみんなが見ている会社の顔だし、安全運転意識をもっと高めよう!」ということで社員たちが自主的に申し合わせて罰金制度をつくるのはどうでしょうか。

 

このように、職場で自主的に「安全行動違反1回200円」といった罰金制度を決めて、その罰金の積み立てを任意のボランティア寄付金にあてることは禁止されていません。

 

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「社内罰金制度」にまつわる法律的なお話は本文のとおりですが、冒頭の例でいうと、なぜ作業帽を被らない人が出てくるのでしょうか?

 

もしかすると「着帽のメリット」が理解されていないのかもしれません(たとえば、作業場でのやけど防止、誤って頭を強打することの予防、など。自分の安全を守るためですよね)。それがわかれば、「見た目が悪いから被りたくないな~」といった不満も解消されそうです。

 

お金の持つパワーは強いので、罰金という発想になりがちですが、みんなに納得してもらえるよう「その行動がもたらすイイこと」を伝えたいですね。

いちごと生クリームたっぷりのホールケーキ。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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