「懲戒解雇を行った場合、社内の掲示板で対象の社員を公表することを就業規則に定めようと思うのですが、何か問題はありますか?」
懲戒処分の内容を公表することで、今後の社員の指導・教育に努めたいとのことでご相談がありました。
とはいえ、公表することで、懲戒処分の対象社員から逆に名誉棄損で訴えられるリスクがあるのでは?とも心配されています。
結論からお伝えすると、「懲戒解雇が有効」なのであれば社内公表することで特段の問題はありません。逆に言えば、「懲戒解雇が無効」であるような場合は違法となりますから注意が必要です。
そこで今回は、懲戒解雇について社内公表する場合の注意点について詳しく確認していきたいと思います。
「社員の給与形態を完全出来高払い制にすると、法律的にアウトですか?」
給与の支払い形態を、社員が行った仕事の量に応じて支払う出来高払いにすると法律的にダメなのか、とご相談をいただくことがあります。
出来高払い制や請負制では、会社が仕事の単位量への対価を不当に低く決めたり、原料・資材不足や仕事の繁閑があると、受け取る給与が激減して社員の生活が脅かされるおそれがある・・・ということで、労基法では出来高払い制などについて一定の規制を設けています。
ですが、出来高払い制や請負制による給与の決め方自体を禁止しているわけではありません。
そこで今回は、出来高払い制や請負制をとる場合の注意点について詳しく確認していきたいと思います。
「病気の治療で通院するため、欠勤や早退の多い社員がいます。早退した日を出勤日にしたらいいという声が社内であるのですが、午前10時に早退した日なんかは1時間しか勤務していないのにどうなのか、という声もあって悩みます。」
労基法では、年休取得の要件を「所定期間内の全労働日における8割以上の出勤率」としています。そのため、出勤率が8割を切ると次年度の年休付与がゼロになってしまい、通院が難しくなるのではないか・・・と心配された人事担当者さんからのご相談です。
とはいえ、早退で1時間しか勤務していない日でも出勤したものとして、出勤率に含めてもいいのか、と判断に迷われるのもわかります。
そこで今回は、年休の発生要件である出勤率に午前10時で早退した日を含めてもいいのか、について確認していきたいと思います。
この夏から他社へ出向することが決まったAさん。初めての経験だけに不安で胸がいっぱいです。
それだけに良からぬ想像をしてしまいます。
「出向中にもし、出向先の会社が潰れたら私はどうなるの?出向期間がまだ残っていても元の会社にすぐ戻れるの?」
**
出向(在籍出向)では、出向元と出向先の両方で二重の労働関係が成立します。つまり、出向社員は、出向元企業の社員であると同時に、出向先の社員でもあるということです。
そのため、Aさんのように不安を抱くのも無理はないかもしれません。
そこで今回は、出向期間中に出向先が破産したとき、出向社員はすぐ出向元に復帰できるのか、詳しく確認していきたいと思います。
社員がマイホームを建てるときなど、福利厚生の一環で社内貸付制度として、会社が社員にお金を貸している場合もあるでしょう。
ところが、社員の給料や退職金について貸金業者から差押えを受けてしまった。・・・こんなときはどうなるのでしょうか?
社員に給料を支払っている会社としては、給料からの天引きによる返済方法をとっていることも多いでしょうから、もしも差押え債権者の方が優先すると、会社が貸したお金は返ってこない・・・なんていう事態にもなりかねません。
そこで今回は、社員の給料が差押えを受けたとき、会社が社員に貸したお金はどうなるのか、また、返済を受けるために会社が注意しておくべき点について詳しく確認していきたいと思います。
「いきなり会社を辞めたいと言われると、会社側としては引継ぎやら後任者の選定、人員の補充など大変なので、“退職願は3か月前までに提出すること”と就業規則で義務付けてもいいですか?」
退職の申出が突然あったと思いきや、そのまま出社しなくなってしまった・・・そうすると、社内の業務だけでなく取引先との関係もあるので、残された周りの社員はそれらのフォローのためにてんやわんやになってしまいます。
そんな事態を防ぐために「退職願の提出は3か月前までに」と決めたいのは、心情的には理解できます。
ですが、あまりに長い予告期間を設けることは、社員を不当に拘束することにもなりかねません。
そこで今回は、退職願の提出時期はどのくらいにするのが適当なのか、詳しく確認していきたいと思います。
「口約束であっても採用は成立する、と聞いたのですが、じゃあ、電話で簡単な面接のやりとりをして、顔を合わさないまま採用することもできるのですか?」
はい、端的にいうとその通りです。
採用が決定したということは、労働契約が成立したということです。労働契約は基本的に当事者の合意のみで成立するので、口約束だけでも成り立ちます。
ですが、それだけですとあとあと「言った、言わない」「思っていたのと違う」などと、トラブルに発展しがちなのは想像に難くありません。会社側には事前の対策が必要です。
そこで今回は、そもそも採用とは具体的にどういうことなのか、また会社があらかじめ注意しておきたい点について詳しく確認していきたいと思います。
「社員が年休日に出社していたことが判明しました。組合活動のたまった事務を片付けるためだったようですが、この日は年休日として扱っても大丈夫ですか?」
会社は、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させなければなりません。
そのため、会社としては積極的に年休を消化させたいけれど、「出社していたのに年休日として成立するの?」と疑問に思われたようです。
結論からお伝えすると、取得した年休をどのように利用するかは社員の自由なので、年休日として成立します。ですが年休日の組合活動に対して、会社として注意すべき点もあります。
そこで今回は、年休を取得して組合活動を行う社員への会社の対応について、詳しく確認していきたいと思います。
「雇用保険の離職証明書の離職理由には“希望退職の募集又は退職勧奨”という項目がありますが、希望退職の募集と退職勧奨は同じ意味ではないのですか?」
とは、人事担当者さんによるギモン。さすが、雇用保険被保険者離職証明書にある細かな記載によく気が付かれましたよね。
希望退職と退職勧奨の両方とも、「労働契約の合意解約の申入れ」という点では共通しているものの、会社と社員のどちら側による解約の申入れなのか、という点で両者は異なります。
そのため後日トラブルにつながる可能性もありますから、両者の違いを踏まえながら、特に退職勧奨について理解を深めておくことが大切でしょう(退職勧奨は場合によっては無効になることもありますので)。
そこで今回は、退職勧奨と希望退職の募集の違いについて詳しく確認していきたいと思います。
「ある社員が退職願を出してきたのですが、その後に重大な服務規律違反が発覚しました。懲戒解雇にあたるような事案でしたが、もうすでに退職願が出されているだけに、懲戒解雇はできませんよね?」
退職願の提出から一通りの業務の引継ぎが終了し、あとは退職日を迎えるだけ・・・と思いきや、よもやの事態が発生。そんなとき、会社としては対応に慌ててしまいますよね。
結論から申し上げると、たとえ退職願が出されていたとしても、まだ社員として雇用関係があるのなら、懲戒解雇しても問題ありません。
ですが、退職願と懲戒処分の関係については、民法での決まり事と情状酌量の2点について考慮しなければなりませんから注意が必要です。
そこで今回は、退職願が出されている社員を懲戒解雇してもよいのかどうか、詳しく確認していきたいと思います。
「減給をもって社員を懲戒処分するとき、降格処分なら労基法が制限している“減給の制裁”については考えなくていいですか?」
減給については労基法91条で厳しく制約されていて、1回の懲戒事由では平均賃金の半日分以内、総額にしても一賃金計算期間で1割以内しか減給することはできません。
(減給の額があまりに多額となって、社員の日々の暮らしを脅かすことになってはいけないので、減給の上限が決められています。)
そのため冒頭のようなご相談をいただくこともあるのですが、結論から申し上げますと、降格処分しても、まったく今までと同じ仕事をさせながら給料のみをマイナスするのはダメです。
そこで今回は、降格処分と労基法が規定する「減給制裁の制限」との関係について詳しく確認していきたいと思います。
「これから注力したい商品づくりのための資材が、供給元の都合でどうしても当社の終業時刻間際になってしまうとのこと。資材搬入のたびに残業になってしまうのも何なので、昼休みを2時間にして対応するのは問題ありませんか?」
つまり、終業時刻を1時間今よりも後ろにずらして業務に対応するため、現行の休憩時間1時間を2時間にしたいということですね。
勤務時間の途中でわりと長い時間の手空き時間がある業務形態では、同じようなお悩みをお持ちかもしれません。
労基法では、与えるべき休憩時間の長さの最低ラインを規定しているので、最長の長さについては規制していません。ただし、考えないといけないのは、途中の休憩時間が長くなると必然的に拘束時間が長くなってしまうという点です。
そこで今回は、休憩時間を2時間に設定するにあたって検討しておくべきことについて確認していきたいと思います。
「遅刻常習犯の社員が、つい先日も30分遅刻してきました。1時間の年休(時間休)を取得して遅刻と差し引きゼロにしてほしい、と言ってきましたが、会社として聞き入れないといけませんか?」
あまりに遅刻が度重なるとボーナスの査定に響くから・・・というのが、どうやら社員のホンネのようです。
とはいえ上司や人事担当者としては、遅刻をあとで年休に振り替えることが適法なのか、という点をまずは押さえておきたいところでしょうし、また周囲に与える影響(モラルハザードが生じるなど)も気がかりではないでしょうか。
そこで今回は、遅刻を年休でチャラにしたい(年休充当したい)社員への会社の対応について、詳しく確認していきたいと思います。
「忙しい今の時期に、期間限定で入ってもらっているパートさんがいるのですが、その期間が終わる前に解雇予告をしないとダメですか?」
パート社員など期間限定の働き手の場合は、期間満了で雇用が終了することになります。雇用期間が満了すれば自動的に退職となるものであって、「解雇」にはあたりません。
そのため、期間満了の場合は、労基法20条(解雇の予告)の問題は発生しないといえます。
とはいえ、期間雇用の契約を反復更新している場合、働き手としては継続雇用の期待が高くなるのも想像に難くありません。そのため、「解雇予告をしておかないと誤解が生まれてトラブルになるのでは?」と心配されて、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、パート社員の期間満了(更新された場合も含む)にあたって、解雇予告が必要かどうか、詳しく確認していきたいと思います。
今年のゴールデンウィークは、最大で10連休にもなるようなカレンダーの並びですね。これだけ長い期間ともなると、合間に商談などのため、出張に出かけなくてはならない場合もあるかもしれません。
そこでよくいただくのが、「出張期間中に休日があった場合はどう取り扱えばいいですか?」というご相談です。
たとえば、出張期間の中日に日曜日があるような場合は休ませないといけないのか(それなら出張に来た意味なくない?)、ただでさえ出張スケジュールをたてるのは大変なのに、頭がぐるぐるします・・・といったことを経営者や管理職の方からお聞きします。
そこで今回は、出張期間中であっても休日には社員を休ませないといけないのか、その取扱いについて詳しく確認していきたいと思います。
「退社時に『俺のも押しといて』と、同僚にタイムカードを押させる社員を見かけては注意しています。他人に自分のタイムカードを押させるなんて許されないですよね?」
同僚と同じタイミングで退社するときに、ズボラして自分のタイムカードも一緒に押してもらう・・・というのは容易に想像できますが、違法行為とまでは言わないにしても、決してよい行動とは言えませんよね(^^;)
というのも、労働時間マネジメントのためタイムカードの打刻は正確に行われないといけないので、不正打刻は許されないからです。単なるズボラというのではなく、他人による不正なタイムカードの打刻は完全にアウトです。
そこで今回は、タイムカードの不正打刻の問題について詳しく確認していきたいと思います。
「うちのパート社員は時間をうまく使って、よく働いてくれています。正社員よりもよくやってくれている、と思うこともしばしばです。もし、経営がうまくいかなくなって人減らしが必要になったとき、パート社員より先に正社員を対象にするのはダメですか?」
不況、業績の低迷など経営上の理由で過剰人員となった場合、経営の縮小や部門の閉鎖・廃止によって人員整理を考えないといけないこともあるかもしれません。
いわゆる「整理解雇」を行うとき、整理の順序としてパート社員と正社員のどちらが先なのか、というのがこの相談内容のポイントです。
人員整理の対象者を考えるときには、雇用形態の順序が問われるからです。
そこで今回は、人員整理を行うときの対象者の順序について、詳しく確認していきたいと思います。
「お客さんから緊急の要請があったときに担当者が休みだった場合、会社に呼び出しても問題ありませんか?」
昭和の時代なら、「そんなん、企業戦士として当たり前のことや!!」とアッサリ片付けられる案件だったかもしれません。令和の時代ではコンプライアンスやモラルの意識が高まり、その対応についてご相談をいただくことがあります。
ここで問題なのは、すでに年休日が開始している(午前0時以降)にもかかわらず、社員を呼び出したい案件(年休の取り消し事由)が発生したという点です。
その日になって、すでに年休日としてスタートしているのに、これを一方的に取り消すことは労基法違反となってしまうからです。とはいえ顧客の緊急対応はどうすればいいのか・・・
そこで今回は、突発的な案件が発生した場合の年休取り消しの問題に会社としてどのように対応すべきなのか、確認していきたいと思います。
「国内出張はいいけれど海外出張は危険だから行きたくない、という社員がいます。業務命令違反ということで、懲戒処分にしても問題ないですか?」
いろんな人がいて、いろんな考え方があり、その対応に悩まされる・・・ということで、いろんなご相談をいただくわけですが、そのなかで出張にまつわるものもあります。
出張とは、働く場所である勤務地の変更をいいますが、一時的な勤務場所の変更であり、社員に対する指揮命令権には変更がありません(←転勤との違い)。
ただ、海外出張は国内出張と比べて働く環境が著しく異なり、社員本人やその家族に対する影響が大きいので、同じように考えるわけにはいきません。
そこで今回は、国内出張と海外出張の違いを踏まえ、海外出張を拒否する社員を懲戒処分できるのかについて確認していきたいと思います。
会社がセクハラの事実を把握するのは、本人からの直接の申告よりも、噂やなんとなくの雰囲気から周囲が察知→周りの人が人事・総務部へ相談、という流れが多いようです。
たとえ噂レベルであってもセクハラの問題を察したときは、人事・担当者の耳に入れて対策を講じることが、事態を打開するポイントとなります。
(パワハラ・セクハラ・マタハラ等は複合的な問題として生じることもあるので、今では一元的に対応できる相談体制を考えないといけないかもしれません。)
職場のセクハラについては、男女雇用機会均等法により、会社にその対策(やらないといけないこと)が義務付けられていますが、今回は逆の視点から、セクハラの申告があったときに会社がやってはいけないことについて、確認していきたいと思います。
この記事のタイトルをご覧になって、どうも腑に落ちない、なんだかひっかかると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
「ワークとライフ、仕事とプライベートのどちらかなんて選べない、そんなのどっちも大切に決まっているよ!」といった意見は、いまの時代ではとても多いでしょう。
とはいえ、会社の残業命令(ワーク)に社員が「NO」を突き付け、自分の都合(ライフ)を優先させる・・・なんていうことはできるのでしょうか?
なぜなら、就業規則に時間外労働のあることが規定されており、かつ、36協定が結ばれていれば、原則として社員はこれに応じないといけない義務があるからです。
そこで今回は、仕事と私用のどちらが優先するのか、詳しく確認していきたいと思います。
「ヤバっっ!新年度のバタバタで36協定の手続きをスッカリ忘れていた!!気がついたら有効期間(←いつも締結している日付)をだいぶ過ぎている!!((((;゚Д゚))))
・・・36協定って日付をさかのぼってもいいのかな?」
企業の総務部や人事部の担当者にとって、背筋が凍りつく瞬間です。なぜなら、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて社員に時間外労働や休日労働をさせる場合は、36協定の締結と労基署への届け出が必要だからです。
冒頭のような事態が発生しないに越したことはないのはもちろんですが、あとでカバーすることが可能なのかどうかは、気になるところではないでしょうか。
そこで今回は、36協定の日付を遡及しても有効になるのか、詳しく確認していきたいと思います。
お客様各位
日頃は当事務所のコンサルティングをご利用いただき、誠にありがとうございます。
2022年4月1日(金)より、下記のようにコンサルティング価格を改定させて頂きます。
つきましては、2022年4月1日以降の新規のご契約・更新のご契約にかかるご請求については改定後のコンサルティング価格となりますので、予めご確認いただきますようお願いいたします。
今後もより良いコンサルティングを継続してお届けし、お客様にご満足いただけるよう努めてまいります。
何卒ご理解のほどお願い申し上げますとともに、変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。
*****
「最近入った社員は乱暴な発言やふるまいがあるトラブルメーカーです。周囲からも反感を買っています。うちの試用期間は3か月ですが、さらに様子をみたいので、延長しても法律的に構いませんか?」
通常、企業では試用期間といういわばテスト期間を設けて、その間に実際の働きぶりや言動をチェックして、最終的に社員として雇用するのかを決定しています。
採用面接だけでは、その人の資質、性格、スキルなどが社員としてふさわしいかどうかを適切に判断できないからです。
とはいえ、試用期間は労働契約という合意にもとづくものであるので、会社側の一方的な意思で試用期間を延長することはできません。
そこで今回は、試用期間の延長はどんな場合に認められるのか、また試用期間における協調性のない社員への対応について、詳しく確認していきたいと思います。
「うちの会社の就業規則には“法定労働時間”と“所定労働時間”というワードが出てくるのですが、どう違うのですか?」
言葉は似ていても、“法定労働時間”と“所定労働時間”の意味合いは全く異なります。
36協定の時間外労働の制限の適用も、法定労働時間を超えた時間が対象なのであって、所定労働時間を超えた時間ではありません。
長時間労働は社会的な問題(過労死など)ですし、ココロとカラダの健康管理やワーク・ライフ・バランスの観点からみても、労働時間マネジメントの基礎的事項を押さえることは、ビジネスパーソンとしての必須課題といえます。
そこで今回は、“法定労働時間”と“所定労働時間”の違いとはどんなことなのか、詳しく確認していきたいと思います。
「うちのパート社員は、朝の10時から夕方の4時までの勤務です。残業が発生することもあります。子育てママさんが、きっちり4時に帰りたいので昼休みをナシにしてその分働きます、と言ってきました。法律的に問題はないでしょうか?」
社内の子育て世代のため、会社としてできるだけ柔軟な対応をとっていきたいとのことで、家事・育児と仕事の両立サポートについて、ご相談をいただくことがあります。
休憩は、所定労働時間が6時間以下であれば与えなくてもいいですが、残業によってその日の労働時間が6時間を超えた場合には与える必要があります。この労基法上の決まりを考慮に入れて、会社の対応を考える必要がありますよね。
そこで今回は、所定労働時間6時間のパート社員への休憩時間の与え方について、詳しく確認していきたいと思います。
「ある社員に転勤を打診すると、病気を理由に拒否してきました。持病のある社員に転勤命令を出すのはダメなのでしょうか」
病気の社員に対して勤務地を変更する配転を命じるということは、会社による転勤命令権の濫用にあたってしまうのか?というのが、このご相談のキモです。
会社は社員に対して健康配慮義務を負っているので、上司としてそのあたりを心配されたご様子でした。
自分の部下が実は病気を抱えていて働いていた、という事実を知ってショックなのに、さらに転勤命令の有効性を考えると、どんな対応をとるべきなのか?と悩んでしまいますよね。
そこで今回は、転勤命令の有効性とともに、会社として病気の社員に対する転勤命令をどう考えるといいのか、詳しく確認していきましょう。
「当社ではもうすぐ年休の起算日がやってきます。育児休業中の社員がいるのですが、新規分の年休は発生するのでしょうか?それなら、育休中でも年休が取れるということですか?」
年度末に向けて、職場のメンバーの年次有給休暇の取得状況を正確に把握しようと、管理簿と向き合っている人事総務部の方もいらっしゃるでしょう。
育児休業中の社員について、年休の扱いをどのようにすればいいのか?と疑問に思われた担当者の方からご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、そもそもの年次有給休暇の付与要件を確認するとともに、育児休業と年休の関係について、くわしく確認していきたいと思います。
「勤務時間について自己申告制をとっている部署がありますが、実際は記録よりも遅くまで働いているようです。会社として正確な労働時間を把握するために、社員のパソコンの起動・終了時刻をチェックしようと思うのですが、本人らに断りなくやって問題ありませんか?」
労働時間の「自己申告制」は、社員に労働時間を自主的に記録させて、どれだけ働いたのかを自己管理させる方法です。ただ、いつの間にか労働時間が長くなる傾向があり、管理職や人事担当者には、本人にまかせっきりにしないで労働時間をきちんと把握することが求められます。
そのため、冒頭のようなご相談をいただくわけですが、「プライバシーの問題が発生するのでは?」と、みなさん不安に思われるようです。
そこで今回は、社員の労働時間の把握をしっかり行うため、会社側が社員のパソコンを無断でチェックしてもいいのか問題について、確認していきたいと思います。
「年末に退職する社員が退職日までの分の給与を、年明けすぐに支払ってほしいと言ってきました。年末年始は何かと物入りなので、給料日まで待てないとのことです。うちの会社は末締めの翌月20日払いなのですが、この要望を聞かないとダメでしょうか?」
年末年始はお休みがあるので、給与計算や経理業務の事務処理スケジュールはどうしても通常よりはタイトになりますよね。そのさなかに退職社員からのお願い事が発生。担当者が「え~~っ?!」とちょっとしたパニックに陥っても不思議ではないでしょう。
ですが、退職時の賃金にまつわる問題はちょっと注意が必要です。なぜなら労基法では、退職者の給与の支払いを迅速に行うことを会社に義務づけているからです。
そこで今回は、退職時の賃金について退職者から「はやく支払って」との要望があった場合に、どのように対応するべきなのかについて確認していきたいと思います。
「毎月の給与を3つの口座に分けて振り込んでほしい、と社員から申出がありました。マイホーム購入に向けて家計管理してうまくお金を貯めたいそうですが、法律的に社員の希望通りにしないといけませんか?」
給与の振込先の取扱いは、地味なようで、実は会社の担当者が対応に悩まされる問題のひとつだと思います。担当者としては、事務処理の効率化を第一に考えたいものです。ミス防止のためややこしい事務手続きは極力避けたい・・・のがホンネでしょう。
上記のようなご相談をいただくこともあるのですが、たとえ事務処理が煩雑になろうとも、社員さんの要望を会社として聞き入れないとダメなのでしょうか。
そこで今回は、貯金したい社員さんの希望通りに、会社は3つの口座に分けて給与を振り込むべきなのか、について確認していきたいと思います。
「定年を迎えた社員をパート社員として再雇用することになりました。正社員時代に消化できなかった年休の残りについて、リセットしてもいいのでしょうか?それとも繰り越さないとダメですか?」
定年退職者をパート社員や嘱託社員として再雇用した場合、未消化の年休についてどのように対応すればいいのか、ご相談をいただくことがあります。
形式的には、正社員時代の労働契約とその後の労働契約は別のものなので、年次有給休暇の付与日数に迷われるケースは多いのではないでしょうか。ズバリ、判断のポイントは「継続勤務なのかどうか?」です。
そこで今回は、定年後の再雇用者に正社員時代での未消化の年休を与えないといけないのか、それともリセットしていいのかについて、確認していきたいと思います。
「当社では、賞与の支給日に在籍している社員にのみ賞与を支給しています。この要件は定年退職者にも適用されるものでしょうか?」
賞与の支給にあたって、このようなご相談をいただくことがあります。
自己都合で辞める社員については、支給日に在籍していないということで賞与が支給されないのは仕方のないことだと思うけれど、定年退職者は自分の意思で退職するわけではないのに、同じように扱っていいのものだろうか・・・と疑問に思われたようです。
そこで今回は、そもそも賞与の支給日在籍要件とはどのようなことなのか、そして定年退職者にも適用されるかについて、詳しく確認していきたいと思います。
「うちの会社の就業規則には“業務上の都合により会社は配転、出向、転籍を命じることがある”と書かれているのですが、他社への転籍も業務命令ということで、会社が一方的に行ってもいいのですか?」
就業規則を見直すコンサルティングのなかで、このようなご質問をいただくことがあります。
転籍とは、今までの会社(転籍元企業)の社員としての地位を失って、他の企業に雇用されるものです。
社員の人生に大きなインパクトを与えることなのに、「転籍を命じることがある」というような就業規則の規定(包括的同意といいます)だけで、あっさりと社員を転籍させていいものなのか・・・と疑問に思われたとのことでした。
そこで今回は、他社への転籍をめぐる問題について、詳しく確認していきたいと思います。
「来年のカレンダーを確認すると、当社の創立記念日と日曜日がかぶっています。こんな場合、どっちの休みになるのでしょうか。祝日のように振替えないとダメでしょうか?」
次年度の年間カレンダー(会社の営業日)を考えるにあたって、このようなご相談をいただくことがあります。
毎週日曜日を労基法上の休日と定めている場合、その日と創立記念日のような特別休日が重複した場合、その日は法定休日になるのか、それとも特別休日なのか、疑問に思われるのは当然のことだと思います。
そこで今回は、特別休暇(創立記念日など)と労基法上の休日が重なった場合、どちらが優先されるのか、詳しく確認していきたいと思います。
商品到着の遅延で売り場に陳列できない。待っているだけで何もすることがない。なのに、やっと商品が搬入されてきたら、「昼休憩の時間だから」とパートさんもアルバイトくんもランチに行ってしまった。
午前中は何もすることがなかったのだから、休憩しているのと一緒じゃないの。私ひとりで陳列作業するハメになって・・・"(-""-)"
(小売業 リーダー職26歳 談)
**
店舗へ商品が到着しないのでそれを待っている時間は、休憩時間と同じようなものなのだから、その分ランチ休憩を削って商品の陳列を優先してほしい・・・というのが、リーダー社員の心の叫びです。
その気持ちはよく分かるのですが、注意しないといけないのは、休憩時間かどうかの判断基準についてです。
というも、休憩時間とは単に作業に従事しない時間をいうのではないからです。そこで今回は、商品の到着を待つ時間を休憩時間としていいのか、ダメなのか、休憩時間かどうかの判断基準について詳しく確認していきたいと思います。
「現在の就業規則では、“休職期間の満了時になお休職事由があるときは退職とする”とあるのですが、そんなことしてもいいのですか?(かわいそうじゃないですか?)」
就業規則を見直すためのコンサルティングで、このようなご質問をいただくことがあります。休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然休職が解除されて復職となりますが、問題は休職期間が満了しても復職できない場合です。
結論からお伝えしますと、そもそも休職とは解雇を猶予する措置をとる制度ですから、休職期間が満了しても復職できない場合について、冒頭の例のようにあらかじめ就業規則に明記しておくのが望ましいといえます。
とはいえ、休職制度の趣旨についてあいまいな理解でいると、休職中の社員に適切ではない、あやふやな態度をとってしまいがちです(のちのちのいざこざの原因になります)。
そこで今回は、休職期間満了による自然退職は有効なのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
「仕事が終わっているのに同僚らとおしゃべりでもしているのか、タイムカードの打刻時が終業時刻よりだいぶ後の社員がいて、対応に困っています」
コンサルティングをしていると、タイムカードの打刻にまつわるお悩みを伺うことがありますが、実は、これは注意してあたらないといけない案件です。
というのも、「部署の懇親会のため(タイムカードの打刻が遅くなった)」「社内の部活動のため」「本人の私用によるため」といったことを会社側が立証しない限り、タイムカードの打刻時近くまで働いていたものとして取り扱わなければならないからです。
このことから会社は、社員の労働時間マネジメントをしっかり行わないといけないことがわかりますね。そこで今回は、タイムカードの取扱いで問われる会社の対応について、詳しく確認していきたいと思います。
「企業秘密を社員が漏洩した場合に損害を賠償させることがある、ということを就業規則に明記するのはダメですか」
リスクマネジメントの観点から、会社の秘密情報と個人情報を適正に管理する体制づくりはどんな会社でも大切です(たとえ小さな規模の会社であってもです)。
そのため、社員に自覚を促すべく損害賠償について就業規則に明確化しておきたいけれども、労基法16条の「賠償予定の禁止」に違反しないか?というのが、冒頭のご相談内容のキモとなります。
企業防衛のために秘密事項を幅広く保護することは、これからの時代においてますます重要になってきますから、今回は秘密事項を漏洩した場合に損害賠償を求めることは有効なのか、労基法16条との関係について確認していきたいと思います。
「当社の現在の就業規則では、懲戒解雇について“予告期間を設けることなく即時解雇する”と書いてあるのですが、30日分の解雇予告手当は必要ないのですか?」
就業規則を見直すためのコンサルティングにおいて、このようなご質問をいただくことがあります。
懲戒解雇は、社員の秩序違反行為に対するペナルティーとして最も重いものであり、悪質な場合に課せられる最上級の処分です。なぜなら、解雇することで社員としての身分を消滅させる懲戒行為だからです。
そのため、懲戒解雇は「即時解雇」として解雇予告期間をおかないのが通常ですが(もちろん、事案の性質、その事案を起こした動機、その影響の程度、本人の弁明を聞くなど慎重な配慮が必要です)、たしかに「30日分の解雇予告手当」との関係は気にかかるところですよね。
そこで今回は、懲戒解雇イコール即時解雇とすることに問題はないのか、無効とならないのか、詳しく確認していきたいと思います。
「入社試験のときに健康診断を実施しないといけないのですか?」
コンサルティングのなかで、このようなご質問をいただくことがあります。就業規則において、採用選考時に履歴書や職務経歴書とともに健康診断書(3か月以内に受診したもの)の提出を求めることが規定されているので、疑問を感じられたようでした。
労働安全衛生法では「雇入時の健康診断」について規定していて、会社に対して安全配慮義務を課している(罰則付き)ので、どうもややこしくなってしまいがちです。
というのも、雇入時の健康診断について「労働者を雇い入れるときは(行わなければならない)」としていますが、採用選考時に実施することを義務付けたものではないからです。
そこで今回は、採用時における健康診断で気をつけるべき点について確認していきたいと思います。
内定式を10月1日以降に行う企業は多いと思いますが、今年はコロナの影響がある中、会場に集まる形式にするか、オンライン開催にするのか、中止にするのか悩まれたのではないでしょうか。
内定式を経た入社予定者に対して、実際の入社日までに入社前研修を実施しようとする企業もあるかもしれません。
そこでよくご相談をいただくのが、入社前の研修に参加する者に対して給料を支払わないといけないのか?という問題です。
もし給料の支払い対象となるのなら、その額をどう設定すればいいのか、時間外割増賃金も必要となるのか、などなどお悩みは深くなるようです。
そこで今回は、入社前の研修と給料支払いの関係について確認していきたいと思います。
母校である大阪府立大阪女子大学の同窓会斐文会よりご依頼いただき、斐文会報367号(2021年10月10日発行)に寄稿しました。
大阪女子大学は大阪府立大学と大阪府立看護大学とともに、2005年4月に統合・再編され、いまの公立大学法人大阪府立大学になりました。さらに来年の4月には大阪市立大学との統合によって、大阪公立大学(公立大学としては日本最大の規模だそう)になるそうで、時代の流れを感じます。
そんななか、卒業生相互の親睦を図り、母校の発展のため活動を続けておられる同窓会事務局の方々には頭が下がります。
卒業生の現在の活動を紹介するコーナーにおいて、「社会保険労務士、セミナーなどの活動を中心に自由に執筆してください」とのことでしたので、学生時代に思いを馳せながら書きました。
当社では、新卒でも中途でも正社員採用の場合は、3か月間の試用期間を設けています。パート社員を正社員に登用することを考えているのですが、この場合も試用期間を設けるものでしょうか。
試用期間について就業規則に規定があるので、適用するべきなのか判断に迷います。
**
パートの戦力化のため、正社員登用制度を導入する企業もみられます。ある程度の責任を伴う仕事を任される正社員をめざす選択肢があるというのは、働き手のモチベーションアップにつながるからです。
そのため、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、パート社員から正社員に登用した場合に試用期間はどうなるのか、設けるべきなのかについて確認していきたいと思います。
当社では午前の半日と午後の半日の労働時間が異なるので、それに合わせて半休を設定するつもりです。ただ、午前の労働時間のほうが短いので「午前半休は午後半休に比べると損」といった不満が出そうです。とはいえ、「家族の通院の付き添いなどで午前半休をとれるとありがたい」といった声もあるので、いっそのこと半休は午前休だけ取れることにすると、何か問題はありますか?
**
年次有給休暇を取得しやすい環境を整えようと、考えをめぐらす経営者や人事担当者から先のようなご相談をいただくことがあります。
半日単位年休は「日単位年休」のなかでの任意の制度なので、どこまで自由に運用を決めてもよいのか?と、判断に迷われるケースは多いようです。
そこで今回は、半日単位年休の取得を午前中に限定してもよいのかどうかについて、確認していきたいと思います。
新入社員には、配属先がどの部署であっても、まず工場勤務からスタートしてもらいます。当社の製品をよく知ってもらうための、いわゆる工場実習です。本社採用であっても1年程度の工場勤務があるわけですが、このことについて労働契約時に明示しておかないとダメですか?
**
新人研修の一環として、現場での実習を行う企業もあるでしょう。工場などでの現場研修が終わると、本社採用者は本社に戻ります。
そのため、労働契約時に明示することが義務付けられている「就業の場所」「従事する業務内容」は本社に関するものだけでいいのか、それとも研修とはいえ現場での勤務についても明示するべきなのか?と判断に迷われるようです。
そこで今回は、本社採用者にも現場での勤務があることを労働契約時に明示しておくべきなのか、について確認していきたいと思います。
取引先への納品スケジュールが迫っているので、休日出勤の必要性を担当部署に伝えたところ、ある社員から「その代わりにいついつに代休をとります」との返答がありました。
当社では代休の前例がなく、その旨を伝えると、「ふつう、休みの日に出勤すれば代休ってとれますよね?」とのこと。中途入社の社員なので、以前勤めていた会社では代休制度があったようです。周りにいた社員も「代休がないうちの会社って変なの?」とザワついて、対応に困ってしまいました。
(※ここでの「休日出勤」とは、法律上の休日労働のことをいいます)
**
休日労働と代休をめぐる社内の問題、コンサルティングをしているとよく伺います。
労基法では代休についての規定はなく、代休を付与するかは企業の自由なのですが、「会社の義務」と誤解されているケースは多いようです。
そこで今回は、社員は一方的に代休とることができるのか、会社はそれに応じないといけないのか、確認していきたいと思います。
「顧客の都合でどうしても当社のフレキシブルタイムに重要案件の打ち合わせが入ってしまったが、法的にいいのだろうか?」
フレックスタイム制には通常、コアタイムとフレキシブルタイムの時間帯があります。コアタイムは必ず勤務しなければならない時間帯ですから、この時間帯に会議や打ち合わせを予定することには問題なしです。
ただ、フレキシブルタイムは社員が自由に出勤・退勤の時刻を選択できる時間帯なので、会社側が「会議や打ち合わせに参加しなさい」と、時刻を指定しての勤務命令はできないのでは?との疑問が浮かんできます。判断に迷われる管理職の方も多いでしょう。
とはいえ、仕事上どうしても取引先が来社することはありえますし、その時間帯がフレキシブルタイムだから担当者は不在、というのでは会社の対応として不合理ですよね。
そこで今回は、フレキシブルタイムに会議や打ち合わせを予定することに問題はないのか、会社がとるべき対応についてみていきたいと思います。
「新幹線や在来線を使う地方への出張が社員から敬遠されがちです。日帰り出張では帰宅時間が遅くなるのに残業代も出ない、といった不満を聞きます。訪問先の都合から時刻指定で乗車してもらうこともあるので、移動も労働時間としてカウントするべきでしょうか」
交通機関に乗っている時間を労働時間としてカウントするのか?というご相談はよくいただきます。出張で遅い時間に帰ってくるのに、残業代を出さなくていいのだろうか・・・と後ろめたく思われる管理職や人事担当の方もなかにはいらっしゃるようです。
出張の疲れによる社員さんの愚痴を聞くと、どうしてもそう感じてしまうのが人情というものですよね。ですが、まず大切なのは労基法上ではどのように取り扱うのか?について正確に把握することです。
そこで今回は、出張中において単に交通機関に乗っているだけの時間は労働時間としてカウントされるのか、確認していきたいと思います。
当日の朝に連絡があり病気で欠勤した後で、当然のように「年休に振り替えてください」と言ってくる、しかも毎度のことなのが引っかかります。仕事の段取りをつけて計画的に年休をとる人が馬鹿らしくなりそうです。会社として、病欠を必ず年休に振り替えるべきなのでしょうか。
**
このような年休取得にまつわるお悩みを、企業の人事担当の方からよくご相談いただきます。ご相談のキモは「病気による欠勤日を後日年休に振り替えることができるのか」ということです。
法定の年休を社員が権利として取得できるのは、あくまでも事前請求が要件となっているからです(事前とは前日の終業時刻より前ということです)。
そこで今回は、社員は当然の権利として欠勤日を後日年休に振り替えることができるのか、そして会社は後日の年休振替を行わないといけないのか、確認していきたいと思います。
「採用面接では、勤務を希望する支店や担当部門などを聞いています。なるべく希望通りの配属にしたいからです。
入社2年目の社員に支店への異動を打診したところ、『本社勤務だから入社したのに』と不満げな反応でした。採用面接で聞いた希望の勤務場所から異動させるのはダメなのですか?」
採用面接のときに希望する勤務場所や仕事内容を聞くことで、勤務場所や職種を限定した採用になるのか?というのが、このご相談内容のキモです。
職種や勤務地を限定して採用した場合、職種変更や限定勤務地外への転勤には本人の同意が必要となるからです。
採用面接時の聴取だけでなく、求人広告に募集する職種や勤務場所を記載するのはよくあることです。そのため判断に迷われることは多いようで、ご相談をいただきます。そこで今回は、勤務場所や職種について、採用面接時に希望を聞いたり、求人広告で職種・勤務場所を明示すると「勤務場所・職種の限定」となるのか、確認していきたいと思います。
「療養中の社員が復職前にリハビリ出勤を希望しています。リハビリ出勤で出社した場合、通常の給料を支払うものなのでしょうか。リハビリ出勤中にもしケガでもしたら、労災は適用されるのでしょうか?」
正常な勤務ができるまでには健康状態が回復していない社員を対象に、短時間の出勤や軽作業などからはじめ、リハビリ的な働き方で復職の支援を行う(試し出勤制度)企業もあるでしょう。
このリハビリ出勤の制度について、厚労省は「処遇や災害が発生した場合の対応、人事労務管理上の位置づけ等あらかじめ労使間で十分検討すること」として、法的な位置づけは明らかにしていません。
そのため、社員の病状の回復につながるなら・・・という思いがある反面、会社として職場の受入れ態勢をどうすればよいのか不安だと、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、給料面をはじめリハビリ出勤の取扱いをどのようにするといいのか、確認していきたいと思います。
「自分の生活スタイルを崩したくない、との理由から変形労働時間制で働きたくないという社員がいます。プライベートを持ち出されると強く言えず、これを認めないといけないのでしょうか?」
感染症対策と経済活動の両立を図るため、法定労働時間の柔軟な枠組みをめざす変形労働時間制を職場に導入するケースもあるでしょう。
業務の繁閑にあわせて労働時間の効率的な配分を行い、全体として労働時間を短縮することができるからです。
そんな会社側の思いとは裏腹に、変形労働時間制のもとで働きたくない社員が出現すると、対応に戸惑ってしまいますよね。その理由を真摯に聞けば聞くほど、「会社として何か配慮が必要なのか?」と悩まれる人事担当者の方もいらっしゃるようです。
そこで今回は、変形労働時間制で働きたくない社員を会社は認めないといけないのか、その対応について詳しく確認していきたいと思います。
「契約社員を新しく採用することになりました。“契約更新による有期雇用期間の限度は最長5年間まで”とするのは、法律的に問題ありませんか?」
かつては、有期労働契約を更新するときに法律上の制限は何らなく、会社と働き手の当事者間にゆだねられていました。ですが、今は法律によって5年を超える有期労働契約の更新について、働き手に無期転換申込権が発生します。
そのため、有期労働契約の更新について、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。
企業が人材を有期で雇用するのは、終身雇用の正社員を解雇するのが法律的に厳しく規制されるなかで、景気変動への対応のため雇用調整する必要があるからです。無期雇用転換によって、雇用調整にまつわるトラブルを避けたいと考える企業も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は5年を超える契約更新はしないとすることは有効なのか、そして注意するべき点について詳しく確認していきたいと思います
「ランチは、午前の仕事をあらかた片付けてから、自分のペースでとりたい」
「平日に出勤するよりも、休日のオフィスの方が落ち着いて仕事ができるので、休日に出勤して仕事したい」
フレックスタイム制が導入された職場では、このように“休憩も休日も自由に自分で決めたい”との声が上がることは想像に難くありません。
ですが、フレックスタイム制は、始業・終業時刻のみを社員が自分で決める労働時間制なのであって、休憩や休日についてはフレックス制とはなっていません。
とはいえ、たとえば11時30分に出勤してきたフレックスタイム社員に対して、ほんの30分後に「昼休憩は12時から1時間と決まっているので必ずランチにしてください」というのも現実的ではなく、柔軟性に欠けますよね。
そこで今回は、フレックスタイム制で休憩時間や休日をどのように運用すると、フレックス制のメリットを活かすことができるのかについて、みていきたいと思います。
「社員が出向していた期間は、退職金を計算するにあたって、在職年数に通算されますか?」
退職金の計算は、一般的に「基本給×在職年数×一定係数(人事評価などよる)」といった方式によることが多く、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。この計算式をみても明らかなように、在職年数は退職金の金額に少なくない影響を及ぼすからです。
退職金は、法律上必ず支給しなければいけないものではありませんが、就業規則によって退職金制度を規定している企業は多いでしょう。「社員が定年するのはまだまだ先だ・・・」と思いたいところですが、現実的には中途退職が一定の割合で発生しますから、いざ社員の退職時になって慌てないようにしておきたいですね。
そこで今回は、出向期間は退職金の算定における在職年数に通算されるのか、また退職金はまとまった金額となりますから、出向先企業にも退職金の負担を求めることができるのか、詳しく確認していきたいと思います。
「1年契約の契約社員を募集しようと思うのですが、最初の3か月間を試用期間にしてもいいのでしょうか。勤務態度がよくない人は3か月で契約解除にしたいのですが、優秀な人が3か月で辞められるのは阻止したい。こんな“いいとこ取り”はダメでしょうか?」
試用期間の設定について、企業の方からお悩みを伺うことがあります。
試用期間中の労働契約は、一般的には「解約権留保付の本採用契約(社員として不適格とジャッジしたときは解約できる権利が留保されている労働契約)」として解釈されています。
日本の長期雇用システムでは、定年までの長期雇用が約束されているにも関わらず、採用時の面接試験だけでは企業側のチェックが難しい面があるからです。
とはいえ、人の解雇には法律面でいろいろな制約が課されており、簡単にはできません。人の問題は、モノのように“いらなくなったらポイ捨て”というわけにはいかないのです。そこで今回は、1年契約の契約社員(1年間の有期雇用契約)について、最初の3か月間を試用期間にすることができるのか、詳しく確認していきましょう。
「会社に社員の労働時間を把握する義務があるとはいえ、みなし労働時間制でも把握しないといけないなら、みなし制にする意味ってなくないですか?」
コンサルティングのなかで、なかなか鋭いごもっともな質問をいただきました。
会社に課せられた、労働時間にまつわる法律の規定に違反することのないよう、会社は常に労働時間を把握して、社員にいま何時間働かせているのか、法律上で許容されるタイムリミットまであと何時間なのかを知っておく必要があります。
とはいえ、オフィスを出てセールスする営業職などでは、労働時間の算定が一般的に難しいため「みなし労働時間制」をとるわけであって、前述の内容と矛盾しますから“なんのこっちゃ?”となりますよね。
そこで今回は、みなし労働時間制をとっている場合でも、会社には労働時間を把握する義務があるのかどうか、詳しく確認していきましょう。
「会社には社員に対する安全配慮義務があるのは理解していますが、社員のうっかりした危険な行動までも会社だけの責任になってしまうのですか?」
安全配慮義務とは、企業が人材を採用するときに特別なとりきめをしなくても、労働契約に付随する義務として、「安全衛生上の管理をきちんとして社員を労働災害から守って働かせます」と約束することです。
とはいえ、冒頭の疑問のように、労働災害は社員の行動や作業動作などを抜きにしては発生しません。
つまり、労働災害を防止するには、社員にも自ら行動を律し、安全を遵守することが求められます。
そこで今回は、社員に求められる自己安全義務と健康保持義務とはいったいどういうことなのか?について、詳しく確認していきたいと思います。
「卒業後、当社へ入社することを前提に、奨学金を在学中の学生に支給するのは法律的にどうでしょうか?当社としては優秀な学生を確保できますし、学生としても経済的な不安を感じることなく学業に専念してもらえると思うのですが」
新型コロナウイルス感染症の影響で、学業を続けることが困難となっている学生を支援しようと、このようなことをお考えの経営者や人事担当者もいらっしゃるようです。
企業の採用力強化につながれば、との思いがあったとしても、ここで気をつけなければならないのは、労基法で「前借金相殺の禁止」が定められているということです。
お金の貸し借りがあると身分拘束につながるおそれがあるので、お金の貸し借りの関係と労働契約の関係は完全に分けなければならない、というのがその趣旨です。「よかれ」と思ったことが法律違反につながってしまうことのないよう、今回は入社前提の契約金はなぜダメなのかについて、確認していきたいと思います。
「部署間で休暇の取りやすさが違うなら不公平です。そのため、社員が休むときのルールを全社的に統一したいと思っています。このルールは会社が一方的に決めてもいいのでしょうか?」
プライベートと仕事の両立をめざして、このようなご質問をコンサルティングのなかでいただくことがあります。
これに対する回答としては、「会社休暇についてはOKですが、法定年次有給休暇については法律で規制があるので何もかも自由に決めてはダメです」となります。法定休暇と会社休暇では、法律上の取扱いなどで大きな差異があるからです。
なお、法定休暇とは法律で付与義務が定められているもので、会社休暇とは法定休暇以外に就業規則で自由に設定したものをいいます。
今回は、法定休暇と会社休暇の違いに触れながら、会社休暇についてどのくらい“自由に(勝手に)”ルールを決めてよいのかについてみていきたいと思います。
「賞与の算定期間の一部と産前産後休暇の期間がかぶっている社員がいるのですが、賞与を計算するにあたって、どう考えるといいですか?」
賞与のシーズンが近づいてくると、それにまつわるご相談をいただきます。
会社には、女性社員の結婚、妊娠、出産、育児と仕事の両立について、企業に課せられた責任を理解したうえで、労働環境を整えることが求められているので、最近は冒頭のようなご相談も増えました。
時代とともに変化する働き方に対応するとは、常に新しい課題と向き合うことの連続だといえます。
産前産後休暇は「有給にしないとダメ」とは会社に対して義務付けられていないので、「じゃあ、賞与はどうなるの?」との疑問が出てきます。そこで今回は、産前産後休暇の取扱いとともに、その期間中の賞与の計算をどうするといいのか、詳しく確認していきたいと思います。
社員の勤務する場所が、本社や店舗、あるいは工場など、それぞれ別拠点にある場合も多いでしょう。そこで気をつけておきたいのが、36協定の締結単位です。
社員の勤務地が本社と店舗で分かれているけれど、「(36協定を)本社で締結しているからバッチリ、手続きに不備ナシ♪」と安心している・・・というケースはないでしょうか?
「本社も店舗も締結しているから問題ナシ・・・あっ、今年の春に新店舗がオープンしたが、バタバタしていて忘れていた・・・」といったケースも要注意です。
というのも、36協定は本社だけでなく、支店、店舗、工場、営業所などそれぞれの事業場において締結しなければならないからです。
こういったうっかりミスは、よくやってしまいがちですから、今回は、36協定の締結単位をどう考えるべきなのか、そもそもについて詳しく確認していきたいと思います。
「シフトで夜勤にあたっている社員が、急な事情で休むことになりました。夜勤は午後9時30分に出勤して翌日の午前6時までなのですが、年休の何日分をつかうことになりますか?」
昼と夜がひっくりかえった交替制のシフト勤務は、2暦日をまたぐことになります。ということは2日分の年休をつかうことになる?でも、昼間の勤務と同じ実働7時間30分の勤務なのに、不公平じゃない?いったい、年休の取得単位をどう考えるといいの?・・・ということで、先のようなご相談をいただくことがあります。
労働時間と年次有給休暇では、同じ「1日」という概念であっても、それぞれ考え方や取扱いが異なります。前者の「1日」は労働時間の長さを計る基準であり、後者は社員に与える休息時間の単位だからです。
そのため、どうしてもややこしく混乱しがちでもあるので、今回は年休日の取得単位をどう考えるべきなのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
「就業規則に“社員に出向を命じることができる”という規定はありますが、具体的な内容は書かれていません。出向規程をつくるなら、どんな内容を決めておくといいですか」
就業規則(本則)に社員の出向命令に応じる義務のみを定め、別規程として出向規程を設け、出向における労働条件を定める方法があります。
出向(在籍出向)では、出向元と出向先の両方で二重の労働関係が成立します。この場合の労基法などの適用については、出向元・出向先・出向社員での三者間の取り決めによる権限と責任に応じて、出向元・出向先のそれぞれが使用者としての責任を負うことになります。
そのため、「就業規則とは別建てにして、具体的に細かく規定しておこう」ということで、前述のようなご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、出向規程の内容として、どんなことを会社(出向元)として考えておくべきなのか、そのポイントについて確認していきたいと思います。
「会社が社員を解雇しようとするときには、30日の解雇予告期間が必要なのに、社員が無断で会社を辞めるのはいいのですか?」
社員が退職する際には、上司(会社)に申し出る→仕事の引継ぎをしっかり行い、会社からの承諾を得る→退職日を迎える・・・という流れが原則です。
とはいえ、そういった流れを経ることなく、突然「いついつに会社を辞めます」と社員が一方的に宣言したり、断りなく退職して他社で勤務する・・・といったケースも時として見られます。
そのため、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。
そこで今回は、社員が一方的に無断で会社を辞めるといったことは、法律的に有効なのかどうか、詳しく確認していきたいと思います。
「先日、社員がこれまで住んでいた寮から自分の荷物をまとめて、突然出て行ってしまいました。これはもう退職したものとして、社会保険などの手続きをしてもいいのでしょうか?」
数年おきに何度かのサイクルで、「突然姿を消した社員さん」についてご相談をいただくことがあります。
社員寮から荷物をまとめて居なくなった、というようにその会社で働く意思のないことを態度で表明した、と思われる場合には、「黙示の退職の意思表示として取り扱って問題ない」との旨が通達によって示されています。
ただ、「突然姿を消した社員さん」について問題なのは、連絡がとれず行方不明になった場合です。単に行方不明になっただけでは、前述のように取り扱うわけにはいかないからです。
そこで今回は、行方不明になった社員をどのように取り扱ってよいのか、詳しく確認していきましょう。
「試用期間の間に実際の働きぶりをみて、本採用にするのはちょっと・・・(問題がある)という場合、本採用しないというのは解雇にあたりますか?」
試用期間中に社員としての不適格性がわかったため、そのまま社員としての雇用を維持し難く、本採用しない場合には、会社から「あなたは本採用しません」と、本人に意思表示しなければなりません。
そのため、上記のようなご相談をいただくのですが、みなさん「(試用期間の)期間満了」なのか「労働契約の打ち切り(解雇)」にあたるのか、判断に迷われるようです。
そこで今回は、本採用拒否は解雇にあたるのか、またどんな場合なら本採用拒否が正当となるのか、詳しく確認していきたいと思います。
当社では限定した部署でフレックスタイム制を始めたが、問題が発生している。それは深夜業の取扱いだ。遅い時間から仕事を始めるせいで、深夜に及んでいるらしい。「深夜業が当たり前」といった雰囲気が広がるのは避けたいし、やはり防犯上まずいのではないだろうか。
いくらフレックスタイム制だからといって、社員の自己責任として片づけていいものなのだろうか?
**
フレックスタイム制は、始業・終業時刻を社員本人による自主的な決定にゆだねる制度です。ですが、これは労働時間についてのみ適用があり、休憩時間・休日・深夜業については適用されません。
とはいえ、(会社が命令していないのに)本人の都合で深夜になり、深夜労働に対する割増賃金を支払うのはちょっと疑問が・・・というのが人間の心情でもありますよね。加えて、頻繁に深夜のオフィスで仕事をするというのは、社員の防犯・健康面での安全が心配でもあります。
そこで今回は、フレックスタイム制における深夜業の取扱いについて、詳しく確認していきたいと思います。
「3月は決算期で忙しいので、その分8月に休みを集中させて大型の夏休みにしたいと思っています。ただ、仮に今よりも休日を増やすと、給料の単価がアップすると聞いたことがあります。
コスト面をしっかり把握しておきたいのですが、本当ですか?」
会社休日(労基法を上回って会社で定めている休日)や、国民の休日である祝祭日の振替についてのご相談から、このような話題になることがあります。
確かに、休日が増えるということは、それだけ労働時間が減るということなので、賃金単価へダイレクトにかかわってきます。
これは、休日と休暇の法的な違いによって発生するものです。
そこで今回は、休日と休暇の違いを踏まえ、なぜ休日が増えると賃金単価アップにつながるのか?について確認していきたいと思います。
実際に仕事をやってみるとやりたいことじゃなかった、と入社して半年の社員から退職の申し出があった。人手が足りないので、欠員補充のためまた募集をかけないといけない。できるだけミスマッチを避ける方法はないのか・・・
**
正社員の採用者数を絞り込んでいる企業では、特に採用段階でのミスマッチを少なくする必要性が高くなります。
とはいえ、面接や試験ではその仕事への向き・不向きを(企業も働き手も)十分に把握できないもの。
実際に仕事をやってみることで、企業と働き手の双方ともみえてくるものはあるのではないでしょうか。そのため、実際の仕事ぶりによって判断し、選考を行うこともひとつの方法です。
そこで今回は、適性や働きぶりを実際にみて、採用のミスマッチを少なくする方法について、「中途採用者向け」「新規学卒者(学生)向け」に分けて、詳しく確認していきたいと思います。
「社員が習い事をしている時間は労働時間にカウントされますか?」
社員のスキルアップのための「学びの時間」に対する費用補助など、福利厚生制度を作る際にこのようなご質問をコンサルティングのなかでいただくことがあります。
詳しくお聞きすると、社内で茶道や華道、書道の「部活」があり、社外から講師を招いて活動を行っているそうで、その「部活動」の時間が労働時間にカウントされるのか、カウントされるのなら残業代を支払う必要があるのか?と思われたとのことでした。
また、仕事に役立てようと終業時刻後に英会話スクールに通う社員さんから、残業代の対象にならないのか?との質問を受けることもあったそうです。
社員の前向きな姿勢に水を差すことのないよう、法律面のことをクリアにしておきたいとお考えでした。このような悩みをお持ちの経営者、人事担当者の方は少なからずいらっしゃるのでは、と思います。
そこで今回は、社内・社外における「習い事」が労働時間にあたるのかどうかについて、詳しく確認していきましょう。
「チームメンバーが“年休をとりたい”と言ってきたときどんな対応をするといいのか、リーダーから相談を受けます。リーダーの対応いかんで年休の取りやすさに差が出ると不公平ですし、法律的に押さえておかないといけない点はありますか?」
経営者の方や、人事担当者の方からこのようなご相談をいただくことがあります。部下から年次有給休暇の申請があったとき、リーダー(所属長)をはじめ、その承認の権限をもつ管理職は、これをどう取り扱ったらいいのか?という問題です。
「皆こんなに忙しいのに、急に休みたいなんて、ありえない!」などの思いから、メンバーから年休申請があるとリーダーの顔がひきつっている・・・というお話を伺うこともあります。
リーダーがちょっとした法律面の知識をもっているだけで、メンバーの年休申請にも適切に対応できますし、モヤモヤの解消にもつながります。
それでは、さっそく確認していきましょう。
当社ではよほどのことがない限り、深夜残業をNGにしている。
36協定のこともあるし、やはり健康上よくないからだ。最近、ある部署で緊急案件が発生したときも、その旨を伝えたが、そこの部長から「管理職が深夜残業して対応すれば、36協定も残業代も何も関係ないからいいだろう!」と押し切られてしまった。本当に「何も関係ない」ということにしてよかったのだろうか・・・
**
企業の人事担当の方から、このようなお話をうかがうことがあります。部下を帰宅させて管理職が深夜まで残って対応しよう、ということだったのでしょう。上司の仕事への責任感を感じますが、人事担当者としての葛藤もよくわかります。
ここで問題となるのは、管理職の深夜残業に対して割増賃金を支払わなくてよいのか?ということです。
確かに管理職について、労基法における時間外・休日労働、そしてそれに対する割増賃金にまつわる規定は適用されません。
とはいえ、深夜業の割増賃金については少し注意が必要です。それでは、さっそく詳しく確認していくことにしましょう。
「社員の年休取得率が思っていたより進まないので、年休を取りやすくするために、時間単位年休を導入してみようかと考えています。気をつけておく点はありますか?」
年度末に向けて「社員に年休消化を勧めたい」ということで、先のようなご質問をコンサルティングのなかでいただくことがあります。
時間単位年休の導入にあたって、まず押さえておくべきはその導入要件についてです。
これを踏まえないで、たとえ会社が「これからは時間単位年休を取ってもいいですよ」と認めたとしても、そもそも導入の根拠がないので、法的な年次有給休暇の取得として扱われないからです。
そこで今回は、時間単位年休を職場へ導入するにあたって、押さえておくべき要件とはいったい何なのか、詳しく確認していきたいと思います。
企業の採用面接を受けてみたものの、顔を見合わせる面接官たちの反応を見る限り、企業側としては希望していた人材とは少し違うよう。
そのため面接官のひとりから「まぁ、いいわ。あなた、まず“仮採用”ね」とのお達しがあった。
なんとか入社にこぎつけたものの、先輩からは「おい、“見習い”。これやっておいて」と雑用が山積みにされる毎日・・・。
**
こんな場面、コメディタッチのドラマやマンガなどで見かけませんか?
ここでふと思うのは、「“仮採用”や“見習い”というのは、試用期間にあたるのか?」という疑問です。
“仮採用”や“見習い”という言葉は、確かに普段のオフィス内や就業規則でも用いられていますが、果たして試用期間と同じ意味なのでしょうか。それでは、さっそく確認していきましょう。
新型コロナウィルスの予防対策から、オフィスにおける社員同士の接触を減らすために、(通常はお休みの日である)土曜日や日曜日も出勤日にあて、1日あたりの出勤率を削減しようとするケースもあるのではないでしょうか。
とはいえ、休日は毎週1日の週休制が原則であり(例外として4週4日休日制)、労基法上も「会社は社員に対して毎週少なくとも1回の休日を与えないとダメ」とされています。
そのため、“通常の「お休みの日」と「出勤日」を入れ替えながら、週1日の休日を確保・・・”と考えに考えて、職場のメンバーの出勤表を作成することになります。
そこでよく問題となるのが、休日の振替と代休の違いについてです。
特に取引先の緊急対応などで、せっかく考えた出勤表とは異なる「イレギュラー出勤」が発生すると、これらはややこしくなりがちです。
さっそく詳しく確認していきましょう。
「社員が裁判員として裁判に参加しないといけない場合、年次有給休暇を取得する扱いにしてはダメでしょうか?」
会社には、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させることが義務付けられています。そのため、「積極的に年休を消化させたい」ということで、先のようなご質問をコンサルティングのなかでいただくことがあります。
裁判員の仕事は、国民に課せられた公の職務にあたります。
よって労基法の定めるところにより、その職務を全うするために必要な時間について、会社は社員の労働を公民権行使の保障として免除しなければなりません。
とはいえ、会社として有給の休暇とする必要があるかは別の問題です。
そこで今回は、社員が裁判員として裁判に参加するとき、年休との兼ね合いを会社としてどう扱うべきなのか、確認していきたいと思います。
新型コロナウィルスの感染拡大から、今は出勤率の削減やオフィスにおける社員同士の接触を減らすなどの対策が企業の課題になっています。
とはいえ、パソコンの配備、個人情報の取扱いなどの点で、テレワークを実施するにはハードルの高い職種もあるでしょう。テレワークが通常モードになっている職種でも、取引先との関係からオフィスに出社しなければならないときも、やはりあるのではないでしょうか。
そんなとき会社として心配なのは、混雑した電車等での通勤によって社員に負担がかかることです。
できるかぎりの感染症の予防対策を行いながら、社員の負担を軽減し、仕事を続けていくには、今までは“当たり前”とされてきた勤務体制を状況に応じて見直し、選択肢を増やすことがポイントになってきます。
そこで今回は、ウィズコロナ時代に分散勤務を実現させる3つの方法についてご紹介したいと思います。
うちの会社では、入社時に身元保証契約書の提出を求めることになっています。最近入った新入社員から「身元保証契約にサインするとどんな責任がかかるのですか?」と質問されました。身元保証契約書の提出は、当たり前の“しきたり”になっていたので、これまで深く考えたことがなかったなあ・・・(メーカー勤務6年 人事担当 談)
**
身元保証契約は、社員本人との契約ではなく、身元保証人と会社との契約です。
(冒頭の質問も、社員を介した、身元保証の依頼を受けた人からのものと考えられますね)
その目的は、簡単にいうと、社員が会社に損害を与えた場合にそれを賠償することにあります。そのため、社員に身元保証契約書の提出を求める企業は多いと思います。
とはいえ、「どこまで責任が問われるのか?」と聞かれると、冒頭のように答えに窮する場面もあるのではないでしょうか。
そこで今回は、採用時に社員に求める身元保証契約とはどんなもので、それによってどんな責任が発生するのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、フレックスタイム制を導入したり、検討中の企業も多いのではないでしょうか。
ただ、フレックスタイム制は“始業・終業時刻をいつにするかを社員が決めてもよい”労働時間制度のため、「フレックスタイム制ではスケジュールが確定した出張を命じてはダメなのか?」と悩まれる上司の方もいらっしゃるようです。
フレックスタイム制が適用される社員に対して、コアタイム(必ず働かなくてはいけない時間帯)は別として、フレキシブルな時間帯について「〇〇時に出勤しなさい」や「〇〇時まで働きなさい」と、始業・終業時刻を指定する業務命令は原則できないからです。
そこで今回は、フレックスタイム制の対象社員にはスケジュール指定の出張命令を出していいのか?それともダメなのか?について、確認していきたいと思います。
今年も残すところあと少しとなってまいりました。
本年も格別のご厚情を賜り、厚くお礼申し上げます。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大という、かつてない状況となり、とても大きな変化があった1年でした。
緊急事態宣言の発令、外出や営業の自粛要請などから、働き方にも大きな変化が訪れたのではないでしょうか。
いろいろあった2020年を前向きに振り返ってみると、在宅勤務やテレワークの普及、通勤方法の見直し(出勤の選択肢を増やす等)、フレックスタイム制の運用拡大など、今だからこそ得られたものも決して少なくなかったように思います。
今までの社会を支えていた価値観が、がらりと根底から見直されるなか、職場でのこれからの働き方を考えるヒントを探して、当事務所ブログをご覧いただいてありがとうございました。
そこで、2020年に読まれたブログ記事ベスト10を下記にご紹介いたします。
いきなりですが、あなたは次の問題に答えることができますか?(〇か×で答えてみてください。レッツチャレンジ!)
Q1「社員が業務命令に逆らって物損事故を起こした場合、会社は生じた損害の賠償を社員に請求してもいい」
Q2「あらかじめ “事故1回1万円”と決めておいて社員に請求してもいい」
Q3「会社が負担した海外留学費用を、帰国後5年以内に自己都合で退職した場合は留学費用を全額返還するよう決めて、社員に請求してもいい」
いかがでしたでしょうか?このQ1からQ3の内容は、実はコンサルティングのなかでよくいただくご質問内容だったりします。
これらの共通事項をまとめると、「労働契約の不履行等に対して損害賠償額を定めたり、罰金や違約金を徴収してもよいのか?」ということです。
では、さっそく詳しく確認していきましょう。(Q1からQ3の解答は記事の最後に!)
最近、女性社員Aさんが具合悪そうです。もしかして、おめでた?
だとすると会社として何らかの配慮をしないとだけど、本人からの申出はない・・・。体調が心配とはいえ、女性のプライベートにどこまで立ち入っていいのか?ともすれば、「セクハラ」として受け止められるかもしれないし・・・(人事部員のBさん(男性)談)
**
人事部員としての仕事に勤勉で真面目で誠実に向き合うほど、会社としての安全配慮義務と社員のプライバシーにどこまで踏み込むべきなのか、悩ましい問題となります。
法律的には、妊娠中又は出産後1年を過ぎていない女性社員が、医師等から健康診査に基づいた指導を受け、この指導事項を守るための措置について申出をした場合、会社は申出に応じて勤務時間の変更、勤務の軽減等の必要な措置を講じなければなりません。
では、妊娠したことを会社に申し出てこない社員に対して、会社はどう配慮するとよいのでしょうか。詳しく確認していきましょう。
「正社員と契約社員って何がどう違うのですか?“そもそも論”かもしれませんが・・・」
コンサルティングをしていると、実はよくいただくご質問なのですが、「正社員と契約社員は違うもの」と感覚的にはわかっていても、「では具体的に何がどう違うのか?」とふと疑問に思われることは多いのかもしれません。
日本の雇用形態は、従来から大別して終身雇用制と期間雇用性に分けられていました。景気変動に対応していくため、雇用調整的な意味合いを含め、有期労働契約による「not正社員」の雇用はやむかたなしとして、法的にも認められてきたからです。
いまでは、キャリアに対する考え方、(育児や介護などによる)労働時間の制約の有無など、人材の多様化が進んでいます。そのなかで安定的に人材を確保していくには、「正社員」と「契約社員」の違いをきちんと理解し、人材マネジメントにおける柔軟な発想が必要です。
そこで、今回はまずは基本のキの字、いわゆる「正社員」と「契約社員(not正社員)」はどう違うのか、詳しく確認していきたいと思います。
休職とは、社員側の事情により業務に従事することが「できない」または「不適当な事由」が生じた場合に、社員との労働契約関係を維持しながら、会社が一定期間の就労義務を免除する処分のことをいいます。
長期にわたって正常な勤務ができないのであれば、本来なら直ちに普通解雇事由にあたるところを、退職を猶予して休職期間に傷病が回復することを待って、社員を保護することが目的です。
(社員には解雇を猶予される代わりに、療養に専念する義務があるといえます。)
ただ問題となるのは、休職期間が満了したときの社員の回復状況です。無理な職場復帰によって、症状が悪化することにでもなれば、元も子もありません。
そこで今回は、会社として社員がどの程度の状態まで回復すれば復職できると判断するべきなのか、詳しく確認していきたいと思います。
「特に職種を限定せずに採用した場合、入社後はどんな部署や職種にでも異動させても問題ないでしょうか。入社してから“そんなこと聞いてなかった”“思っていたのと違う”と言われるのも採用担当としてツライので・・・」
今年は、新型コロナウィルスの影響で採用計画を大幅に変更せざるを得ず、冬の訪れを感じるこのごろになっても、採用活動を積極的に行っている企業もあるでしょう。
入社後の社員の配置転換にまつわるご相談は、通常でもよくいただきますが、特にいまは対面での採用活動が難しいので、企業説明に苦慮する場面もあるのではないでしょうか。なんとなくの雰囲気や、あいまいな言い回しでは誤解を招きかねないので、きちんと説明の根拠を事前に把握しておきたい、とのお声を伺うこともあります。
そこで今回は、特に職種を限定せずに採用した場合であれば、どのような部署、職種への異動命令も認められるのかどうか、詳しく確認していきたいと思います。
うちの会社の営業部では、会社の営業車を使って取引先を訪問している。1日の予定業務が終わってからは会社に戻り、営業日報を作成して上司に報告するのがお決まりとなっている。
営業社員はみなし労働時間制の対象となっているものの、この状況では労働時間をカウントできるのでは・・・?実は、みなし規定の適用を受けないのではないだろうか??
**
オフィス外での仕事では、何時から何時までが休憩時間なのか、手待ち時間なのか、といったことが具体的には把握できません。そのため事業場外において行う仕事であって、実労働時間がつかめない場合には、会社からあらかじめ別段の指示がない限り、「通常の労働時間働いたものとみなして処理する」というみなし制が認められています。
とはいえ、冒頭のような例はよくあるシチュエーションであり、判断に迷うところではないでしょうか。
そこで今回は、営業社員のタイムマネジメントについて、会社の営業車を使っての営業活動や営業結果の報告の義務付けがみなし労働時間制の対象になるのかどうか、詳しく確認していきたいと思います。
「生理休暇で休んだ日は、法律では出勤扱いにならないそうですが、うちの会社では出勤扱いになると聞きました。それはホントウですか?」
労基法では、所定期間内の全労働日における8割以上の出勤率を年休取得の要件としています。
そこで部下や後輩から、このような年休の付与条件にかかわる質問をされたとき、あなたは経営者・上司・先輩として、彼ら・彼女らがきちんと納得するよう答えることができるでしょうか?
そのため、会社としては法律上の年休付与の出勤率を計算するにあたって、出勤とみなされる日、全労働日から除外される日をきちんと把握しておく必要があります。
冒頭の質問内容でいうと、いわゆる生理休暇で休んだ期間について、労基法上では出勤したものとはみなされません。ただし、当事者(会社と社員)の合意によって出勤したものとみなすことは差し支えありません。
そこで今回は、法律上の年休計算にあたって出勤とみなされる日とはどんな日なのか、詳しく確認していきたいと思います。
本日11月1日発行の、「近代中小企業」11月号(2020年11月1日発行)に寄稿しました。
「近代中小企業」11月号では、「今、社員を守るための方策」とのテーマで特集企画が組まれています。
今般のコロナ禍により、テレワークなど働き方に大きな変革がもたらされました。また、集客減から事業所を休業したケースもみられます。
家賃、人件費などの固定費の支出が続いて、経営に大きな影を落としている企業も少なくありません。
しかし、このような時だからこそ新たな視点の福利厚生などで、社員の支援や雇用事業者としての義務を実行する必要があり、その方策や対策を考えてみましょう、という内容になっています。
わたくし高島は、「ウィズコロナの通勤事情!出勤の選択肢を増やす施策」というタイトルで4ページにわたって記事を書かせていただいています。
社員がタイムレコーダーを打ち忘れることが頻繁にあると、「どうして会社は、社員の労働時間をいちいち把握しておかないといけないのか・・・」とため息交じりについこのようなことを考えてしまう・・・これは、人事担当者にとってよくある話ではないでしょうか。
社員がタイムレコーダーを打刻している、していないにかかわらず、実際に社員がその日に仕事をこなして働いているのなら、会社は労働時間を把握してタイムマネジメントを行わないといけないからです。
言い換えると、「タイムレコーダーの打ち忘れは本人のミス」という理由で、欠勤扱い(労働時間はゼロカウント)にすることはできない、ということになります。
そのため、上司や人事担当の方にとっては少々「モヤッ」としてしまうかもしれません。また、社員にとっても「毎朝タイムカードを押すのは面倒だ」との思いがあるかもしれません。
そこで今回は、なぜ会社は社員の労働時間を把握しなければダメなのか、またその根拠はどんなところにあるのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
「企業に不祥事があると、“役員報酬を〇か月にわたって減俸します”とか謝罪会見などで言いますよね。こういった処分は、一般の社員にも適用されるものですか?」
不祥事に対する経営陣の責任の取り方として「報酬額〇%カット〇か月間」といった報道発表があると、コンサルティングのなかでも話題にあがることがあります。
労基法では、就業規則で減給の制裁を規定する場合において、その減給の最高限度を定めています。減給の額があまりに多額となって、社員の日常生活を脅かすことがないようにするためです。
では、社員に対する減給処分「月給〇%カット〇か月間」は有効になるのでしょうか、それとも認められないのでしょうか。さっそく詳しく確認していきましょう。
「たとえば取引先からの急な納期変更や突然の機械トラブルに見舞われたとき、計画年休日が目前に迫っていると事態に対応できませんよね。そんなとき、計画年休日を変更できるのですか?」
年休の「計画的付与」とは、社員のプライベートな事情で自由に取得できるよう一定の日数を留保しながら、これを超える日数については、会社と社員の間での労使協定によって計画的付与を認めることとしたものです。
欧米諸国と比べて年休取得率がきわめて低い水準になっている状況から、取得率をアップさせるためにできた制度だとはいえ、業務上の突発的な出来事と計画年休日が重なってしまうような事態を考えると、とても悩ましいですよね。
コンサルティングで年休取得率アップの方策を検討していると、冒頭のようなご質問をいただくことがあります。
そこで今回は、会社が計画年休日を変更することは認められるのか、詳しく確認していきたいと思います。
「パート社員用の就業規則は、パート社員の代表に意見を聴取するだけでいいですよね?正社員にも聴かないとダメなのですか?」
就業規則を作成・変更する権限と義務は会社側にありますが、社員の過半数で組織する労働組合もしくは社員の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないことが、労基法によって定められています。
そのプロセスで就業規則を社員に周知するとともに、就業規則の内容を合理的なものにしようとするのが目的です。
いまの時代では、さまざまな雇用形態の社員が同じ会社で働くのはごく当たり前のことです。労働契約の内容の多様化に対応するため、就業規則を雇用形態別に作成することもあるでしょう。そのため、冒頭のような質問をいただくことがあります。
そこで今回は、パート社員の就業規則はパート社員の意見を聴くだけでいいのか、詳しく確認していきましょう。
「残業代を計算するときに、〇〇手当や××手当も含めないといけないですか?」
割増賃金、いわゆる残業代の計算で問題となるのは、(割増賃金計算の)基礎に算入される賃金と除外される賃金です。残業代の単価が変わってくるからです。そのため、賃金にまつわるコンサルティングをしていると、先のようなご質問をよく伺います。
労基法では、割増賃金の基礎から除外される賃金の種類が限定されています(限定列挙)。つまり、それ以外の賃金は必ず計算に含めなければなりません。なお、除外される賃金は7種類ありますが、その中でも特に「住宅手当」の取扱いに注意が必要でしょう(誤解されているケースが多くあります)。
そこで今回は、割増賃金の基礎賃金について、どういった賃金が算入されて、どういった賃金が除外されるのか、具体的に詳しくみていきたいと思います。
ある企業では、経理部の社員を関連会社の経理部に出向させていました。ところが、その出向社員が出向先企業で帳簿などの経理関係書類を不正操作していたことがわかりました。
横領の事実が発覚したので、懲戒処分となるのは明らかですが、これはあくまで出向先企業で起きた事案です。出向元企業としては、懲戒処分の決定に関わることはできないのでしょうか。
「懲戒処分を行うのは出向元の当社なのか、それとも出向先の関連会社なのか?」両社間での協議はうまくまとまらず、ごたごたしている状況のままで・・・
**
出向社員は、出向元企業の社員であると同時に、出向先の社員でもあります。そのため、出向社員に対する懲戒について判断にとまどうケースもみられます。そこで今回は、出向先での違反行為に対する懲戒処分に会社(出向元・出向先とも)はどのように対応すべきなのかについて、詳しくみていきたいと思います。
「会社に着いてからの制服や作業服への着替え、朝の掃除や整理整頓、仕事が終わってからの片づけは労働時間にカウントされますか?」
実際に作業をしている時間(会社の指揮命令下にある時間)が労働時間にカウントされるのは、誰もが頷けると思います。
でも、それらに付随する前後の時間については・・・・??
判断に迷うことは多いのではないでしょうか。コンサルティングのなかでも、冒頭のようなご質問をよくいただきます。
「〇〇〇の場合は労働時間にあたらないけれど、×××なら労働時間になる」というような覚え方をしていると非常に煩雑ですし、「じゃあ△△△のときはどうなるの?」と、イレギュラーなケースに対応できませんよね。
そこで今回は、実作業に付帯する作業時間が労働時間になるのはどんなときなのか、その「判断基準」について確認していきたいと思います。
「結婚したての社員が、地方支社への転勤命令を拒否しています。配偶者は仕事の都合で一緒に行けないそうで、単身赴任をしたくないとのことです。会社は夫婦の事情も考えないといけないですか?」
今では夫婦共働きは珍しいことではなく、仕事の都合、こどもの教育、家の管理などのため、家族と別居して単身赴任せざるを得ない場合も十分ありうることです。そのため、冒頭のようなご相談をお聞きすることもあります。
会社側としては、「夫婦が別居せざるを得ない転勤命令が、人事権の濫用とみなされないか(転勤命令が無効にならないか)?」ということが、最も気にかかるところではないでしょうか。
そこで今回は、単身赴任をしたくないとの理由による転勤命令の拒否は果たして認められるのか(夫婦別居となる転勤命令は人事権の濫用となるのか)、会社のとるべき対応について確認していきましょう。
仕事のできるAさん、上司からの信頼は厚く、同僚や後輩からも慕われている。育休を取得後も職場に復帰する意思があり、復職後の活躍をみんなで心待ちにしていた。
それなのに、育休明けすぐに退職してしまった・・・
後輩のお手本のような存在だったAさんだけに、「復職するといって育休を取っても、(育児と仕事の両立が)いざ無理となったら辞めてもいっか、Aさんもそうだったし」といった、いい加減なムードになってしまうのは避けたい。
Aさんには復帰後の期待も込めて、育休期間中にも一定の賞与を支給したが、今後は育休明けすぐに退職した場合には、これを返還させるのはどうだろうか。就業規則にも規定することで、示しをつけよう・・・
**
職場への復帰後の活躍を期待していただけに、育休明けの退職にショックを受ける会社側の心情も理解できないことはありません。ただ、育休期間中に支給した賞与を会社に返還させることに問題はないのでしょうか。さっそく、詳しく確認していきましょう。
「会社が社員の年休を買い上げることは法律的にダメですよね。でも、有効になるときもあるらしいですね。どんな違いがあるのですか?」
年休の買い上げとは、社員が取得できなかった年休の残日数を会社が一定の金銭で買い取り、行使できなかった年休請求権(年休の残日数)に応じて、会社が補償的な取扱いをすることをいいます。
ただ、年休はそもそも社員の心身の疲労を回復させ、働くためのモチベーションを支えることを目的としています。年休と金銭をバーターにしては、心身の休養と疲労回復は果たせません。
そのため、労基法では買い上げによって年休を実際に与えない行為を禁止しているのですが、年休の買い上げが法律違反になるのは、有効期間内の法定日数分のものについてのみです。
年休の買い上げについてざっとお話しするとこのようになるのですが、やはり実務上ではややこしく感じられることも多いようで、冒頭のようなご質問をよくいただきます。
そこで今回は、年休の買い上げがどんなときに有効になって、また法律違反としてダメなのか、詳しくみていきたいと思います。