うちの社員に出向先での横領疑いが浮上した。少なくない金額なので、出向先企業はこの出向社員の身元保証人に対して損害賠償を請求するかもしれない。・・・とはいえ出向先でのトラブルであっても、身元保証人は責任を問われるのだろうか?
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身元保証契約は、社員本人との契約ではなく、身元保証人と会社との契約です。内容は、その社員が会社に損害を与えた場合に身元保証人がその損害を賠償するというものです。
そのため社員を採用する際に、多くの企業では身元保証契約書を求めますが、身元保証人にはどこまで(出向先でのトラブルも?)責任が問われるのでしょうか。
そこで今回は、出向における身元保証人の責任について詳しく確認していきたいと思います。
身元保証契約とは
身元保証契約は、会社と(社員から身元保証を依頼された)身元保証人との間で、社員本人の行為によって会社が受ける損害の賠償を約束する契約をいいます。
つまり、会社と身元保証人との間で行われるものであって、社員本人は契約関係の当事者になりません。
身元保証契約では、社員の故意または重大な過失によって損害を与えた場合には賠償する、という金銭的な賠償が求められるのが一般的です。
この金銭的な賠償について、たとえ「一切の損害の賠償」と契約で定めていても、法律による身元保証の性質上、原則として会社はそこまで責任を問うことはできません(横領、窃盗といった犯罪行為にあたるような故意による損害の場合は別)。
なお、身元保証の契約期間は5年を超えることはできず、期間を定めていないときは3年に限り有効とされています。この契約期間は自動更新することはできないので、期間の満了時に更新手続きをしなければなりません。
出向先でのトラブルと身元保証人の責任
前段でお伝えしたように、身元保証契約は身元保証人と出向元企業の間の契約なので、契約の当事者ではない出向先企業に対して身元保証人の責任を求めるのは、論理的な筋が通りません。
身元保証人にしても、身元保証した社員が雇い主である出向元企業で働くことを前提として身元保証契約を結んだのであって、出向元企業以外の別の企業の下で働くことは予想外のことでしょう。
よって、身元保証人の責任は、原則として、社員が出向元企業の業務で行ったものに限定されます。契約当事者ではない出向先企業は、身元保証人に責任を求めることはできません。
なお、身元保証契約において、「社員が出向先企業で不正行為を行った場合、身元保証人は出向先企業の受けた損害を賠償する」との旨の特約があれば、出向先企業は身元保証人に対して損害賠償を請求することができます。
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社員の職務や勤務地が変更になる(←出向もそのひとつですよね)ことで、当初よりも責任が重くなって、身元保証人の監督が難しくなる場合もあるかもしれません。
そんなとき、雇い主である会社は身元保証人に対して、その旨を通知する義務があります。
通知を受けた身元保証人は、将来に向かって身元保証契約を解除することができます。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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