
あっ、またボールペンが無くなっている。消しゴムもクリップも・・・こないだ補充したばかりなのに。課長からはコスト意識を持ってきちんと備品管理に努めるように言われているけれど、どうすればいいの?
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総務部新人のCさん、所定の場所に文房具を補充してもすぐ無くなるので、管理方法に悩んでいます。部内で相談すると、「備品の持ち帰りが発生しているのでは?」との声が。
「抜き打ちで所持品検査をやる」「いつ誰に何を渡したか細かく記録をとる」といった案も出ましたが、「みんなを疑っているようで気持ちよくないね・・・」と採用には至りませんでした。とはいえ、何らかの対応策を講じる必要があります。ポイントは就業規則への規定化です。
そこで今回は、会社がとるべき備品管理の方法について詳しく確認していきたいと思います。
所持品検査は慎重に

文房具をはじめとする会社が購入した備品を、大量に持ち帰るようなことは当然認めるべきではありません。会社としては、トラブルの芽を早期に摘むべく「抜き打ちで所持品検査を実施しようか」との考えが浮かぶかもしれません。
会社が行う所持品検査について適法とされる要件が、判例で次のように示されています。
- 検査を必要とする合理的な理由があるか
- 検査方法と程度の妥当性
- 制度として職場の社員に対して画一的に実施すること
- 就業規則その他明示の根拠に基づくこと
その後の裁判においてはこの4つの要件に従って、検査の具体的態様、経緯等を検討して紛争処理が行われています。その多くでは、所持品検査の拒否を理由とする懲戒処分を最終的に無効としていることから、所持品検査によって社員の人格権侵害が極力なされることのないよう、慎重な傾向がみられます。
まとめると、所持品検査はそれを実施する合理的な必要性があり、人権侵害とならない相当な方法でなければ認められないと考えられます。
就業規則でルールを明確に

会社備品の私物化を防止するには、たとえ100円の消しゴムであったとしても、自宅等への持ち帰りを全面的に禁止することをハッキリと社員へ伝える必要があります。
そこでポイントとなるのは、就業規則への明文化です。服務規律や懲戒処分の項目において、具体的に記載しておくことが望ましいでしょう。
たとえば、「会社の備品を私用する目的で自宅等に持ち帰ってはいけない、違反した場合にはその費用を会社に支払わなければならない、これらに違反した場合は懲戒処分とする場合もある」といった旨を規定化することになります。
会社備品の使用にあたって、「誰にいつ何を渡したか」と詳細な記録をとる管理方法も考えられますが、担当者の事務負担も相当なものになると考えられますし、「備品を持ち帰るかも、と社員を疑っているんだな」との会社に対する不信感を社員に抱かせかねません。
そこで、社員に毎月の給与で「文房具手当」を支給するというのもひとつの方法です。会社が様々な備品を購入する代わりに、手当の範囲内で社員自ら調達してもらうことになります。
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会社備品の私物化は、モラルの低下など職場風土の乱れにつながるおそれがあります。
業務に応じて必要な会社備品を利用する、という当たり前のことが徹底されるようにルールを整備し、就業規則によって職場で共有したいですね。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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