「衛生管理者のAさんが長期入院することに(゚Д゚;)療養を含めると半年は出社できないって。衛生管理者がそんなに不在ってマズいよね?すぐに資格なんて取れないし、どうしよう?」
衛生管理者は、安衛法において、業種にかかわらず常時50人以上の社員を雇用する職場(企業単位ではなく支店や工場、営業所などの単位)ごとに選任することが義務付けられています。
社内に衛生管理者はAさんしかいないので、突然の入院で衛生管理者の定期業務も滞ってしまいます。また、こんな状況でもし何かトラブルがあれば、会社に法的な責任が問われる一因になるかもしれません。
そこで今回は、代わりのいない衛生管理者が長期間会社を休む場合に会社がとるべき対応について、詳しく確認していきたいと思います。
衛生管理者のオシゴトとは
衛生管理者は、下記の1~4のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
- 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
- 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること。
- 労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに必要な措置を講じなければなりませんし、毎月1回以上開催される衛生委員会に出席する必要があります。
このような内容が、衛生管理者の業務として法令で定められているため、衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければなりません(代理者については、労働基準監督署への選任報告義務はありません)。
代理者になることができるのは、通達によって下記のうちいずれかに該当する者とされています。
- 衛生管理者となる資格を有している者(衛生管理者、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなどの資格を有する者)
- 保健衛生に関する業務に従事している者または従事した経験を有する者
とるべき会社の対応は
冒頭の例では、衛生管理者はAさんだけとのこと。衛生管理者の試験は毎月行われていますが、ほかの人がすぐに免許を取得できるわけではありません(←ちゃんと勉強が必要です)。
とはいえ前段でお伝えしたとおり、代理者は必ずしも有資格者でなくてもよく、保健衛生に関する実務経験があればOKなので、まず保健衛生に関する実務経験を持つ社員(衛生委員会の委員であった人など)を社内で確認します。
保健衛生に関する実務経験を持つ社員がいない場合、改めてほかの社員に衛生管理者の免許を取得してもらい、衛生管理者として選任することになります。
それまでは衛生管理者も代理者も不在の期間ができてしまうので、臨時的に総務・人事部門の担当者によって、定期巡視をはじめとする衛生管理者の業務を行っておくことが必要です。
衛生管理者を選任できないやむを得ない事由がある場合で、所轄都道府県労働局長の許可を受けたときは選任が免除されます。この許可は、衛生管理者の突然の死亡、退職など特殊な事情で欠員となったけれど、その充足に時間がかかることがやむを得ないと認められるときで、特定の者を衛生管理の業務に従事させることを条件として、かつ、おおむね一年以内の期間に限って行うことなどの要件が設けられています。
よって実務上は、衛生管理者の確保を急ぐことが求められます。
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事業規模や業種に応じて、「安全管理者」「衛生管理者」「安全衛生推進者」「産業医」などを選任しなければなりませんが、これらの法令で定められた安全衛生管理の担当者が長期休職、突然の退職などで欠員になると大変です。
不測の事態に対応できるよう、人員に余裕を持った体制づくりをあらかじめ考えておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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