「最終面接も済んで、やっと採用内定が出せそうだ。・・・この内定者って、入社していないからまだうちの社員じゃないよね。それなら法律的にはどんな取り扱いになるんだろう?」
人事部員として初めて採用活動に関わり、達成感に浸りつつもふとギモンに思う若手社員です。
採用内定者は、卒業を迎えるまでは学生なので労働義務を負っていませんし、もちろん給与も支払われていない身分なので、労基法で保護される「労働者」には該当せず労基法の適用は受けません。
これから人事担当者として内定者フォローを行い、内定者の不安を解消して、無事入社につなげることがミッションなので、採用内定者の法的地位が気にかかるのでした。
そこで今回は、採用内定者が法律上どのように取り扱われるのか、法的位置づけについて詳しく確認していきたいと思います。
採用内定とはどんなこと?
一般的に、新規学卒者を在学中に採用し、翌年の3月に卒業してから入社させるという採用方法が多くとられています。
この在学中に採用され、正式に入社する前の人をふつう採用内定者(総称)とよんでいます。
いわゆる採用内定者は、法律的には「採用予定者」と「採用決定者」に区分されます。このどちらであるかによって、法律上の地位に大きな違いがみられます。
採用内定者 | |
採用予定者 | 採用決定者 |
まだ労働契約は成立していないので、その会社の社員としての地位を取得していない人。労働契約締結の「予約者」や「採用内定契約」という特別の契約者といわれている(その取消は解雇にならない)。 |
労働契約が成立して、その会社の社員としての地位を取得した人。ただし、卒業を条件としていたり、入社日の到来という始期がついていれば、効力の発生はそれらの成就した時からとなる(その取消は民法上の解雇になる)。 |
採用内定者の法的地位はどうなる?
採用内定者の法的地位(法律上どのように取り扱われるか)は、結局のところ採用活動のプロセスにおいて会社と新規学卒者との間の意思表示や合意の内容いかんによって決められています。
単に「採用が内定しました」ということだけを通知している場合(手紙、電話、メール、口頭など手段は問われない)には、いつ、どこへ出社し、どんな手続きをすればいいかなどいうことは全く定められていないので、当事者間では「後日なんらかの通知がある」ことが予定されているといえます。
この段階では、労働契約の締結まで至っておらず、労働契約締結の予約または採用内定契約という特別の契約が成立しているにとどまります。
この内定通知後に必要書類の提出をし、特に「卒業したら必ず貴社に入社します」との旨の入社誓約書を提出し、会社も異議なくそれを受領し、入社日の通知や入社前研修等の開始があり、それら一連の流れがあいまって会社の「採用確定の意思の表示」と認められるときは、会社との間で黙示ないし明示的に労働契約の成立があったと解釈されます。よってそれ以降は、労働契約締結者として保護されることになります。
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「採用内定者に就業規則の適用はあるの?」
採用予定者はともかく、民事上の労働契約が成立すると(←採用決定者のケース)、ただちに就業規則の適用を受けるのか気になりますよね。
一般的に在学中の学生については、現実の入社を効力の発生条件として就業規則が適用されると考えられています。職場のルールとしての就業規則の効力は、労基法が適用される「労働者」(←会社に雇用されて給与が支払われる身分)になったときから、ということです。
学校を卒業してから入社日を迎えるまでは、採用内定者に就業規則の適用はありません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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