![籐のバスケットに積まれた本とマーガレットの鉢植え。コーヒーの入った水色のマグカップ。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=536x1024:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/i961c517686dbad93/version/1698911561/%E7%B1%90%E3%81%AE%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AB%E7%A9%8D%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%9C%AC%E3%81%A8%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E9%89%A2%E6%A4%8D%E3%81%88-%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC%E3%81%AE%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%B0%B4%E8%89%B2%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97.png)
うちの部で就業規則の違反行為が疑われている。所属部員に対して会社側のヒアリングがあって、次は私の番だ。でも同僚の悪いことは言いたくない。刑事ドラマの取調べシーンみたいに黙秘権をつかってダンマリを決め込もうか・・・
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社員が就業規則の違反行為を犯したおそれや疑いのあるときは、所属長やその他の管理者にはその事実確認や関係者から事情をヒアリングするなどの調査権限があります。会社としては、企業秩序を維持しなければならないからです。
問題は、所属長等はどこまでこの調査権限を行使でき、一方の社員はどこまでこれに応じる義務があるのかということです。
そこで今回は、就業規則の違反行為にまつわる調査権限について詳しく確認していきたいと思います。
どこまで調査権限を行使できる?
![ページが開かれた何冊もの本。コーヒーの入ったマグカップを持った手。セータールックに腕時計。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=536x1024:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/i6881337546d84a30/version/1698911513/%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%81%8C%E9%96%8B%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F%E4%BD%95%E5%86%8A%E3%82%82%E3%81%AE%E6%9C%AC-%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC%E3%81%AE%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%89%8B-%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AB%E8%85%95%E6%99%82%E8%A8%88.png)
就業規則の違反行為があったとき、またその疑いのあるとき、所属長その他の管理者はどこまで調査権限を行使でき、社員はどこまで応じる義務があるのでしょうか。
「同僚のことを告げ口するみたいで・・・」と同僚社員に対する調査に後ろ向きの者がいるのも想像に難くありません。
就業規則の違反行為にまつわる調査権限について、最高裁判決は次のような旨を示しています。
- 企業が企業秩序違反事件について調査ができるということから直ちに、社員がこれに対応して、いつ、いかなる場合にも当然に、この調査に協力すべき義務を負っているものとは解釈できない。
- 社員は労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対して労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない。
- その社員が他の社員に対する指導、監督、企業秩序の維持などを職責とする者であって、調査に協力することが職務内容となっている場合は、調査に協力することは、労働契約上の基本的義務である労働提供義務の履行そのものである。
- だがそれ以外の場合は、調査対象である違反行為の性質、内容、その社員の違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法があるかどうか等諸般の事情から総合的に判断して、調査に協力することが労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められない限り、調査協力義務を負うことはないと解釈するのが相当である。
社員はどこまで調査に応じる必要があるの?
![ペー所が開かれた洋書のうえに置かれた白のカップ&ソーサ。ブラックコーヒー。テーブルに散らばったコーヒー豆。観葉植物のグリーンの葉。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=536x1024:format=jpg/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/i09840053859ac5d6/version/1698911465/%E3%83%9A%E3%83%BC%E6%89%80%E3%81%8C%E9%96%8B%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%B4%8B%E6%9B%B8%E3%81%AE%E3%81%86%E3%81%88%E3%81%AB%E7%BD%AE%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%99%BD%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97-%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B5-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC-%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%AB%E6%95%A3%E3%82%89%E3%81%B0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC%E8%B1%86-%E8%A6%B3%E8%91%89%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%91%89.jpg)
前段の最高裁判決の内容にあるように、会社への忠実義務をはじめ信義則上の関係が高度な管理職や職制の地位にある者は、会社の調査への協力義務が広く求められます。
企業のリスク管理上の事項(セクハラ、パワハラ等)については、同僚等のプライベートでの行動も職務に関連する重大な事項となるので、「私は同僚のことを告げ口するようで嫌だ」といって調査への協力を拒否することはできないでしょう。
横領・背信行為にまつわる問題への調査協力を拒否することは、同僚等の不正行為の隠匿に(消極的であっても)加担することになりかねないので、雇用上の義務違反となります。
ただしこの話は、違反行為をした本人ではなく、同僚その他第三者的な社員に対する調査の問題であって、本人に対する調査の場合ですと、話は別です。
会社には、本人に対して自白を強制する権限はもちろんありませんが、職務上の不正について疑いがある場合には、社員は職務上の行為について会社に対して報告する義務があります。雇用契約上の信義則としても、職務上不正の疑いやセクハラの問題があるとして調査を求められた場合には、積極的にこれに協力して、自らの潔白を証明する努力が必要です。
自分の職務上の行為について、不正のないことを明らかにする努力により、会社との信頼関係を維持できるといえます。
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本文の冒頭にある「黙秘権」は、憲法上は刑事事件に関して規定されています。
社員として会社の業務に従事する場合、自分の職務上の行為について会社に対して報告義務があり、たとえ自分に不利益となること(たとえば自分がやったミスなど)でもその報告をしなければなりません。
また上司は業務命令で部下に対して、職務行為について報告を求めることができます。
![生クリームとオレンジのロールケーキのお皿。オレンジがあしらわれたアイスクリームのガラスの器。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=373x10000:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/i089b5f32c4be78a8/version/1699065319/%E7%94%9F%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%81%AE%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9A%BF-%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%81%8C%E3%81%82%E3%81%97%E3%82%89%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AE%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%99%A8.png)
![社会保険労務士高島あゆみ](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=126x1024:format=jpg/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/i0d14e0c27c1717d2/version/1698911399/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%99%BA%E5%8A%B4%E5%8B%99%E5%A3%AB%E9%AB%98%E5%B3%B6%E3%81%82%E3%82%86%E3%81%BF.jpg)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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