生理休暇は法律上無給でも問題ないとのことだけど、有給扱いにしようかとの案が社内で出ている。でも、事後に「年休取得日を生理休暇に振替えてほしい」との申出が社員からあったとしたら、会社はそれに応じないといけないのかな?
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生理休暇の有給化にあたって、もし年休から生理休暇への事後振替を認めることになれば、「3日間の年休中に生理日が来たので振替えてほしい」といった申出にも応じないといけない・・・少し違和感を覚えて、心配になってしまう人事担当者さんです。
そこで今回は、あらかじめ年休日になっていた日でも事後申請で生理休暇に振替えないといけないのか、詳しく確認していきたいと思います。
そもそも生理休暇とは
生理休暇を取得するには、客観的に生理日の就業が著しく困難、という要件が必要であり、社員としてはその目的に沿って取得する信義則上の義務があります。
したがって、生理休暇は生理日であるというだけでは休暇を請求することはできません。あくまで生理痛がひどい、生理期間中で健康状態がダウンしている、など「就業が著しく困難な状態にある」場合のみ請求することができる制度です。
生理休暇の取得に際しては、「会社側は医師の診断書のような厳格な証明を求めないこと」とする通達があるので、社員の意思表示のみで取得できることになります。
とはいえ、社員が自分の勝手な判断で生理休暇をとって休んだとしても、客観的にみて生理日の就業が困難な状況でなければ本来は欠勤となるべきものです。
たとえば、生理休暇を取得してショッピングやアウトドアアクティビティに出かけていた、との事実が判明すれば、法律上の請求権がないのに生理休暇を取得した、ということで休暇は取り消されて欠勤扱いとなります。
事後申請で生理休暇に振替えないといけないの?
すでに年休日の当日が始まっている午前0時以降は、労働義務がない日(社員は仕事から解放され自由に過ごしてよい日)として成立しています。
年休日は労働義務そのものが免除されていることになるので、就業中もしくは就業予定を前提とする「生理日の就業が著しく困難」という状況は起こりえないことになります。
また、社員が年休をどのように利用するかについて、法律上の制限はなく、社員の自由とされているため、生理日に年休を取得して休むことにも何ら問題ありません。
よって、事後(たとえ始業前であっても年休日の当日の朝も含まれます)に「年休を生理休暇に振替えてほしい」との申出があっても、会社はそれに応じる必要はありません。
もちろん、就業規則に定めてその振替を認めることも法的に問題ありません。ですが、冒頭の人事担当者さんが心配しているように、連続した年休中に生理日が来た旨の申出があった場合にも、年休から生理休暇への振替を認めなくてはなりません。
「事後の年休から生理休暇への振替は認めない」と取り扱うほうが、社員のみなさんの納得感を得やすいのではないでしょうか。
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本当に体調が悪いのに生理休暇制度の利用をためらう人(「ズルいと思われないかな?」「女は気楽だな、と思われたらどうしよう?」など)が増えると、制度の意味がなくなってしまいます。
制度の内容や意義について理解を深め、職場に合った適切な取り扱いを考えたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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