性別の回答を強要しない配慮が必要とか、プライバシー性の高い「配偶者の扶養義務」といった情報を把握するのは好ましくないとか、採用選考のキホンをアップデートするのは大変だ。一緒に働く仲間を選ぶのだから会社の好きにしてはダメなの?
**
採用選考の面接官をやることになり、「面接官の心得」について人事部からお達しがあった営業課長さん。自分が学生の時とは様変わりした、採用選考時において配慮すべき事項に戸惑っています。
とはいえ、民間の私企業が社員を採用するにあたって、何か特別に採用を強制されるような法律上の拘束があるかというと、そうではありません。
そこで今回は、採用選考を会社の好きにしてはダメなのか、詳しく確認していきたいと思います。
採用の機会は均等にすること
民間の私企業が社員を採用するにあたって、どんな働き手を採用しようともまったくの自由です。・・・というと、「男性だけを採用したりするのはダメでしょ?」といったギモンを持たれるかもしれません。
男女雇用機会均等法において「会社は社員の募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならない」との旨が定められていますが、これはあくまで採用の機会の均等を目的としています。
女性の採用が強制されているわけではなく、適材適所をめざした採用の自由は制限されません。
募集・採用について均等な機会を設けることが求められるので、たとえば「AさんとBさんではAさんのほうがペーパーテストの点数が高いのだけど、BさんのほうがハキハキしていてガッツがあるのでBさんを採用しよう」というようなことも企業の自由裁量となります。
また、「企業が特定の思想、信条を有する者をそのために雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」との旨を示した判例もあります。
行き過ぎた「採用の自由」はダメ
前段でお伝えしたように、企業の採用活動には広い裁量が与えられていますが、無制限に採用の自由が認められているわけではありません。
最近では、採用差別禁止の行政指導が積極的に行われており、応募者の適性・能力とは関係のない事項で採否を決定しない採用手続きの確立が求められています。さらに、少子高齢化による働き手の減少を背景に、多様な採用が推進されています。
厚生労働省が作成した新たな履歴書の様式例では、従来の履歴書様式例と異なる点として、①性別欄は任意記載欄となり、②応募者のプライバシーの情報が多く含まれる各欄(「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」)の4項目は設けないこととしています。
性別の確認が必要な場合には、理由を説明して応募者本人の十分な納得の上で行い、性別の回答を強要しないよう配慮が求められています。
このように採用は誰を採用しようがしまいが原則として自由とはいえ、「女性なので不採用」「高齢者だから不採用」という単に性別や年齢による不採用は問題となります。さらに若年者についての雇用機会の確保、障がい者の雇用促進などが求められ、法制化されています。
場合によれば不当差別として採用拒否が違法性を持つこともあり、損害賠償の問題に発展することも考えられますので、注意が必要です。
**
採用面接においては、①採用基準を満たす、求める人材なのかどうかを確認する、②不必要な質問をしない、この2点がとても大切です。
仕事をやるために必要な適性や能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておき、適性と能力に関係のない事項を質問しないようにすることがポイントとなります。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事