「職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数は、2023年に1,045人、うち死亡者数は28人」・・・職場全体で熱中症予防の知識を共有して、対策をとらないと最近の暑さは乗り越えられない・・・
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厚生労働省の資料をみて、意識を改める人事担当者さんです。でも後輩社員は「会社がそこまでやらないといけないんですか、体調管理はそれぞれの問題では?」と不思議そうな顔。
職場における熱中症予防についての通達が厚労省から出されており、これを参考に具体的状況に応じた対策をしていない場合、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性があります。
そこで今回は、職場でおこる熱中症と会社の安全配慮義務について、詳しく確認していきたいと思います。
WBGT値(暑さ指数)の活用
熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体温調節などの体内の重要な調整機能がうまく働かなくなり、発症する障害の総称をいいます。
屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、 救急搬送されたり、場合によっては死亡に至ることもあります。
職場(作業場所)が熱中症リスクのある環境かどうかを客観的に評価するには、気温だけでなく湿度、風速、放射熱、身体作業強度、作業服の熱特性を考える必要があります。そこで、これらの因子をすべて考慮したWBGT値(暑さ指数)の活用が役に立ちます。
WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))の値は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数であり、作業場所にWBGT指数計を設置する等により、WBGT値を求めることが望ましいとされています(WBGT指数計はJIS規格に適合したものを準備することが求められています)。
WBGT値の活用として、厚生労働省は①WBGT値を把握し、②衣服の組み合わせにより補正値を加えた値を算出し、③身体作業強度等に応じたWBGT基準値をみて、熱中症リスクを確認することとしています。
会社の熱中症対策と安全配慮義務
通達(「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」)では、把握したWBGT値が、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、その作業場所は熱中症の発生リスクが存在すると判断されるため、作業環境管理、作業管理、健康管理の観点から予防策を可能な限り実施することが求められています。
(詳しくは https://neccyusho.mhlw.go.jp/heat_index/)
この通達は、熱中症予防のための行政の指導指針であり、通達が示す熱中症対策が直ちに会社の安全配慮義務の内容となるわけではありません。
とはいえ、熱中症対策についての昔の通達の内容が会社の安全配慮義務の具体的内容を検討するにあたっての目安になりうる、と示した裁判例があります。
そのため「把握したWBGT値が、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合」には、通達を参考に具体的な熱中症対策を行うべきだと考えられます(逆にいうと、通達を参考にして具体的な状況に応じた熱中症対策を行っていない場合、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性があるということ)。
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熱中症は死亡に至るなど重篤な結果を招くものです。
職場のメンバーで熱中症について正しい知識を身につけ、自分の体調の変化に気をつけるのはもちろんのこと、周りのメンバーにも気を配り、熱中症による健康被害を防いで、この夏を乗り切りたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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