先日まで課長と海外出張に行ってきた。アポのキャンセルや変更、打合せ場所の確保が難航するなど、連日トラブルで遅くまで仕事だった。当然残業代がつくだろうと思っていたら、課長曰く「海外出張はフツウ残業の対象じゃないはずだよ」とのこと。ウッソ、時差があるからなの?(;´Д`) (総合商社勤務 若手社員 談)
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慣れない海外出張から戻ってきたところ、海外での残業は手当の対象にならないはず、と聞いてショックを隠し切れない若手社員。
とはいえ、海外出張では労働時間の配分などは本人まかせになる(現地でのミッションを臨機応変にこなさないといけないので)ため、実際に働いた時間の把握が困難なのもまた事実です。
そこで今回は、海外出張中の時間外労働を会社はどのように扱うべきなのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
海外出張における労働時間マネジメント
一般的に海外出張の場合は労働時間の把握が難しいため、事業場外労働のみなし労働時間制をとります。事業場外労働の労働時間については、次のようになります。
- 原則として所定労働時間労働したものとみなす。よって時間外労働は発生しない
- 当該業務を遂行するためには、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。この場合にはみなし時間に応じて時間外労働となる
1.について、たとえば所定労働時間が8時間であれば、渡航先で8時間を超えて勤務したとしても、もしくは6時間しか勤務しなかったとしても、8時間勤務したものとして扱います。
2.について、たとえば渡航先での仕事が所定労働時間の8時間では足りなくて、通常平均9時間必要だとすれば、その9時間を出張業務に必要な労働時間とします。もちろんこの場合、1日につき1時間分の残業代(時間外手当)が発生することになります。
この「通常必要とされる時間」を何時間にするのか労使協定した場合には、その協定で定める時間とみなします。
渡航先で上司と一緒に行動していた場合
事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが難しい業務です。
したがって、次の場合のように事業場外で業務に従事する場合であっても、会社の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間を算定することができるので、みなし労働時間制の適用はないとされています。
- 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
- 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
- オフィス(事業場)で訪問先、帰社時刻等当日の業務について具体的な指示を受けたのち、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後オフィスに戻る場合
冒頭の例のように、海外出張に上司である課長と出かけ、渡航先で一緒に行動しているような場合、「トラブル対応等で時間外労働があった」ことが把握できれば、その時間について残業代(時間外手当)の対象となります。
なお、みなさんお気づきだと思いますが、冒頭の例の若手社員のボヤキにあるような「時差」については、まったく関係ありませんので念のため。
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ちなみに冒頭の例について、上司である課長といっしょに海外出張に出かけていたとしても、渡航先で単独行動であった場合(上司とは別々の業務にあたっていた)は、みなし労働時間制が適用されます。
海外出張中の日程(上司と一緒に行動or単独行動)によって、その日の労働時間マネジメントの方法が異なる場合もありうる、ということです。お間違えの無いように\(^o^)/
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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