病気で休職していたAさんが職場復帰することになった。でも仕事の量や内容がプレッシャーになって、せっかく戻った体調が悪くなっては元も子もない。会社としてどんな配慮をすればいいんだろう?
**
私傷病で休職していた部下が復職することになり、仕事面でどんな配慮をするとよいのか頭を悩ませる上司です。とはいえ気を遣いすぎて、本人に引け目を感じさせたり、やる気を失わせてしまうのもよくないし・・・との思いがあります。
こんなとき法律面では、会社には安全配慮義務があるので、業務上の負荷により復職した社員の健康状態が損なわれないよう、業務面でさまざまな配慮を行うことが求められます。
そこで今回は、私傷病で休職していた社員が職場復帰するとき、会社に求められる配慮について詳しく確認していきたいと思います。
企業の安全配慮義務とは
会社が人を採用すると、特別な取り決めをしなくても労働契約に付随する義務として、安全衛生法や労基法を守って働かせるのはもちろんのこと、さらに「会社は安全衛生上の管理に努めて社員を働かせます」と約束したことになります。
この関係について労働契約法では「労働者の安全への配慮」として「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(第5条)と定めています。
この安全配慮義務を会社が怠ったため、労働災害や職業性疾病が発生すると、労災保険だけでなく民法上の損害賠償義務が生じることにもなります。この会社の安全配慮義務を実際に職場や現場で実行するのが、上司(管理監督者)の職制上の役割です。
この安全配慮義務は、安全管理だけでなく健康管理についても同様です。会社は健康診断の結果に基づき医師の意見を勘案して、社員の健康を保持するため有所見者については「就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等(中略)の適切な措置を講じなければならない」(安衛法第66条の5)と定められています。
実務上どうする?
前段の内容から、安全配慮義務を負っている会社は下記について適切に対処することが求められているといえます。
- 社員の職種
- 仕事の内容
- 働く場所(←メンタル疾患の場合、社員と信頼関係にある主治医のもとに通院することが大切なので、それが困難になるような遠隔地への異動は控える)
- 時間外労働、休日労働の有無とその程度
- 同僚や上司によるサポートの有無とその程度
社員の配置(人事異動)についても同様です。職場復帰の原則は原職復帰ですが、社員の病状や原職における仕事の内容、量などからみて社員の心身への負荷が大きい場合、またうまく適応できない場合には、本人、職場、主治医、産業医等の意見を十分にヒアリングし、人事異動を検討する必要があります。
言い換えると、社員の健康状態から必要があるときは、(たとえ社員が人事異動に同意しなくても)人事異動の命令を発動して、社員の健康に配慮しなければならないということです。
**
本人の健康状態を考慮して、会社としてはよかれと思って職場復帰した社員を異動させるとします。
ですが、社員にしてみれば「自分に悪い原因(失敗など)があるから異動になる」と誤解してしまうかもれません(←モチベーションダウンの原因にも)。
そのため、主治医や産業医の同席のうえ(←病状と業務負荷のバランスを専門家の視点から客観的にフォローしていただく)で、本人の立場や気持ちを十分考えて説明する心遣いが大切です。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事