
上の方針で、海外支店で現地採用した社員を国内本社に3年間異動させることが決まったそうだ。あとは人事部で対応よろしく、ということだけど、どんなことをすればいいんだろう?
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海外支店の外国人社員が国内本社へ異動してくることが初めてなので、何から手を付ければいいのか戸惑う人事担当者さんです。
外国人の方は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)で定められている在留資格の範囲内において、日本での活動が認められています。まずは、異動の対象となる外国人社員について、その社員の職歴や学歴から利用できる在留資格があるかを確認しなければなりません。
そこで今回は、海外支店の外国人社員の国内本社への異動で会社がとるべき対応について詳しく確認していきたいと思います。
就労可能な在留資格を確認すること

外国人が日本で就労するには、入管法において定められた在留資格のうち、就労できる在留資格を取得することが必要です。
一般の職場での雇用のケースが多いと考えられる在留資格は、次の4種類です。
- 技術・・・コンピューター技師、自動車設計技師等
- 人文知識・国際業務・・・通訳、語学の指導、為替ディーラー、デザイナー等
- 企業内転勤・・・企業が海外の本店又は支店から期間を定めて受け入れる社員(活動は、「技術」、「人文知識・国際業務」に掲げるものに限る。)
- 技能・・・中華料理・フランス料理のコック等
それぞれの在留資格について、法務省令で定める基準に適合することが求められています(詳しくは「出入国在留管理庁HP」https://www.moj.go.jp/isa/index.html)。
会社としては、まず、異動させたい外国人社員に本人の職歴や学歴から利用できる在留資格があるかどうかを確認することになります。
就労可能な在留資格があれば、必要な資料とともに「在留資格認定証明書交付申請書」を地方出入国在留管理官署に提出します。
(詳しくは「出入国在留管理庁HP」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-1.html)
外国人雇用状況の届出をお忘れなく

法律により、すべての会社に外国人社員(外交、公用、特別永住者を除く)の採用と退職の際に、その都度、その外国人の氏名、在留資格等を確認し、ハローワークに届け出ることが義務付けられています(外国人雇用状況届出制度といいます)。
「技術」「人文知識・国際業務」「企業内転勤」「技能」の在留資格については、基本的には雇用関係を前提としていると考えられるため、会社からの届出が必要です。
届出の記載内容の正確性を担保するのは会社となるので、在留カードなどによってきちんと確認して記載どおりに届け出ることが必要です(届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります)。
在留資格等の確認は、通常の注意力をもって外国人であると判断できる場合に行います。氏名や言語などから、その方が外国人であることが一般的に明らかでないケースであれば、確認・届出をしなかったからといって、法違反を問われることにはなりません。
その外国人社員が雇用保険の被保険者になる場合は、雇用保険被保険者資格取得届または雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったことになります。
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「海外で働く人」にまつわる雇用保険について補足です。
海外で現地採用される人は、被保険者となりません(←そのため国内本社へ異動の際は要注意、被保険者になる可能性が高い。雇用保険では、外国公務員と外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された人を除き、国籍を問わず被保険者となります)。
一方、国内からの出張や派遣、出向によって、海外で働く人で、国内の会社との雇用関係が継続している場合は、その期間も被保険者となります。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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