フレックスタイム制なら会社は時間管理しなくていい?

水が張られたガラスのコップに生けられた白い花。ページが開かれた洋書。太陽の光が差し込んでいる。

「フレックスタイム制は社員の自主性にまかせるもの。・・・会社は社員の時間管理をしなくてもよい、ということ?」

 

新型コロナウィルスの予防対策のための時差出勤や悪天候による公共交通機関の遅延によって、始業時刻までに出勤できないことなども想定内にしなければならない時代です。

 

そのため、フレックスタイム制の導入を検討されている企業もあるでしょう。時間に対する社員の自己管理意識を向上させるという点で、フレックスタイム制にはプラス効果があります

 

冒頭のようなギモンもあるかもしれませんが、結論をお伝えすると、フレックスタイム制でも、会社には労働時間を把握する義務があります

 

 そこで今回は、フレックスタイム制と時間管理の関係について、詳しくみていきたいと思います。

労働時間の把握は会社の義務

ノートパソコンのキーボードの上に置かれた、メモがびっしりのノートと眼鏡。サインペンと鉛筆。コーヒーの入ったカップ&ソーサ。

フレックスタイム制は、始業時刻と終業時刻を社員自身が選択できることを要件にしています。よって、始業時刻または終業時刻の一方についてだけ、社員に選択させるのではダメです。

 

とはいえ、フレックスタイム制だからといって、ひとり一人の社員についての労働時間を把握しなければならない会社の義務が免れるわけではありません

つまり、「始業・終業時刻を社員本人の自由にまかせているから、会社は社員が何時間働いたのかわからない」「労働時間のカウントができないので、時間外労働もどれだけやったのかわからない」「だから残業はノーカウントだ」というような取扱いはできないということです。

 

通達でも、次のような内容が示されています。

  • 会社には労働時間の把握義務がある
  • よって、フレックスタイム制を採用する事業場においても、社員それぞれの毎日の労働時間をきちんと把握しなければならない

まとめると、フレックスタイム制において始業・終業時刻は社員の自由な選択にゆだねるとしても、会社は社員の労働時間を把握して、ちゃんとカウントしなければなりません。

フレックスタイム制における時間管理はどうなる?

ページが開かれた洋書とココアの入ったマグカップ。眼鏡。

前段でお伝えしたように、フレックスタイム制を導入しても、会社として労働時間の管理を行わなければなりませんが、その方法は自由でかまいません。タイムレコーダーや出勤簿を利用することもOKです。

 

労働時間マネジメントの方法のひとつとして、「自己申告制」をとることも、もちろん差し支えありません。すなわち、社員に労働時間を自主的に記録させることで、何時間働いたかを自己管理させる方法です。

 

フレックスタイム制においては、会社の定める所定のフォーマットに沿って、自分の勤務を記録します。社員本人が毎日の始業・終業時刻をはじめ労働時間の長さ、深夜労働や休日労働の有無などについて管理するということです。

 

ただし、フレックスタイム制では始業・終業時刻を自主的に決めるわけですから、自己申告制の場合には、知らず知らずのうちに労働時間が長くなる傾向があります。実際に働いた時間と所定労働時間を清算してオーバータイムとなると、その時間が所定外労働時間となります。つまり、あとで大幅な時間外労働手当が発生することもありえます。

 

業務効率アップや時間の自己管理意識を上げるためにフレックスタイム制を採り入れたのに、制度の意図通りに運用されない・・・これを修正するにはどうすればいいのでしょうか?

 

まず、管理職や人事担当者には、社員にまかせっきりにしないで、各自の労働時間の把握をしっかり行うことが求められます。

 

また、実際に働いた時間と所定労働時間にプラス、マイナスがあるときには、労働時間の適性化を図っていくために個別の指導も必要でしょう。社員の制度に対する理解不足を補っていくということです。

 

また、仕事の裁量度(社員に業務遂行と時間配分をまかせる)を高めること、人事評価における評価基準も時間生産性を重視したものに変えることも不可欠です。フレックスタイム制導入のそもそも目的は、業務効率やタイムマネジメント意識の向上にあるからです。

クリームたっぷりのショートケーキのお皿。紅茶の入ったカップ&ソーサとティーポット。

フレックスタイム制をうまく活用するためには、「制度を活用できる条件」を整える必要があることを忘れずにいたいですね。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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