フレックスタイム社員の年休管理できていますか?

窓辺に積まれた書籍と手帳。その上に置かれたカメラ。傍らにガラス瓶に活けられたカスミソウ。

年度末に向かって、年次有給休暇の取得にまつわるご相談をよくいただきます。法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させることが会社に義務付けられたことも、理由のひとつかもしれません。

 

突発的な災害や、事前に想定しえない事象の発生時に、社員にかかる通勤の負担を軽減するため、フレックスタイム制の導入を考える企業もみられます。ご相談のなかには、フレックスタイム社員の年休管理に関するものもありました。

 

「フレックスタイム社員のなかに、実際に働いた時間が清算期間中の総労働時間に足りない者がいます。年休を取得したことにして、総労働時間に足りない分を穴埋めすることはできますか?」

 

つまり、フレックスタイム制において、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として決められた時間に比べて不足が生じた場合に、年次有給休暇でそのマイナス時間を清算できるのか?というご質問です。

一見すると理屈に合ったやり方のように思えますが、これは法律的には可能なのでしょうか?さっそく詳しくみていきたいと思います。

フレックスタイム社員の年次有給休暇

ポットから黄色のマグカップにコーヒーを注いでいる途中。

フレックスタイム制とは、社員が一定期間のなかで一定時間数(契約した時間)働くことを条件として、1日の仕事を自由に開始し、終了できるワークスタイルです。

 

フレックスタイム制のもとで働く社員についても、もちろん年次有給休暇の取得は認められています。フレックスタイム社員が年休を取得した場合には、その日に標準となる1日の労働時間を働いたものとして取り扱うことになります。たとえば、標準労働時間が8時間の場合では年休1日分の取得により「8時間働いた」として処理されます。

 

フレックスタイム制の場合でも、社員が突然の体調不良や所要の発生により休み、あらかじめ会社に連絡できなかったため事後的に年休取得の申請手続きをとる場合も、もちろん考えられます。

 

そんなとき、会社がこれを認めて当日を年休扱いとし、標準労働時間の労働をしたものとすることは、問題ありません。これは、本来の年休取得の手続きルールに則って行っている限り、正当な扱いだからです。

年休で不足時間を清算できるか?

路上でテイクアウトコーヒーを持つ男性。

フレックスタイム社員にも年休取得が認められているとはいえ、(本当は年休をとっていないのに)年休をとったものとして、その分を働いたものとしてみなすことはできるのでしょうか?

 

結論からお伝えすると、フレックスタイム社員が清算期間中の総労働時間に達しない不足時間を、帳消しにして清算する目的のみで「年休を取得する」ということは、認められません

「年休をとって心身をリフレッシュさせ、再び仕事にまい進する」という法律の趣旨に反するからです。

 

これは、時間単位年休を労使協定により職場に導入した場合も同様です。きちんと1時間の年休をとらなければ、「(1時間の年休をとったことにして)働いたものとみなす」という取扱いはできません。

 

まとめると、年休(時間単位年休、半日単位年休を含む)によるフレックスタイムの清算はできないということです。

そこで「労基法を上回って付与している年次有給休暇については、会社の自由にしてもいいのでは?」との意見もあるかもしれません。

 

確かに労基法を上回る年休について、その企業の方針により時間単位や半日単位に分割することは、従来から認められています。

とはいえ、実際には年休をとっていないのに「年休をとった」ことにして、清算期間における総労働時間として決められた時間に比べて不足が生じた場合に、清算の目的で年休を用いることは、やはり法律の趣旨に反するので認められていません

 

フレックスタイム制において、一定期間における契約時間の過不足を考えると、「年休で相殺できるのでは?(プラスマイナスゼロになる?)」といった、算数の問題を解くような感覚になりがちです。

 

ですが年休のそもそもの目的は、前向きな気持ちでまた仕事に取り組めるよう、仕事をストップしてくつろぎ、心身をやすめることにあります。

年休の本来の目的を見失わないようマネジメントに努めたいですね。

夏のビーチ。カモメとデッキチェア。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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