企業の採用面接を受けてみたものの、顔を見合わせる面接官たちの反応を見る限り、企業側としては希望していた人材とは少し違うよう。
そのため面接官のひとりから「まぁ、いいわ。あなた、まず“仮採用”ね」とのお達しがあった。
なんとか入社にこぎつけたものの、先輩からは「おい、“見習い”。これやっておいて」と雑用が山積みにされる毎日・・・。
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こんな場面、コメディタッチのドラマやマンガなどで見かけませんか?
ここでふと思うのは、「“仮採用”や“見習い”というのは、試用期間にあたるのか?」という疑問です。
“仮採用”や“見習い”という言葉は、確かに普段のオフィス内や就業規則でも用いられていますが、果たして試用期間と同じ意味なのでしょうか。それでは、さっそく確認していきましょう。
「仮採用」や「見習い」という言葉の意味は?
社員を採用するにあたって、多くの企業ではミスマッチを避けるため、採用はするもののすぐには正式の本採用とはしません。
たとえば3か月や6か月などの期間を定めて、テスト的な期間を設けています。当社の社員として適格であるかどうかをジャッジする、この期間のことを試用期間と呼んでいます。
では、日常的によく用いられる“仮採用”とか“見習い”という言葉と、「試用期間」は同じ意味なのでしょうか。
ここでポイントとなるのは、「(ある状態でいる)期間を指しているのか?」それとも「雇用形態を指しているのか?」という観点です。
“仮採用”とか“見習い”などと呼んでいても、実際のところ本人を会社に採用するにあたって、「一定の期間中に本人の勤務態度、能力、資質、性格、知識、健康状態など総合的に判断して、正式に本採用するかどうかを決定する」という趣旨のもとで運用されているとします。
そういうことならば、すべて「試用期間」に該当します。
ですが、このようなものではなく、「臨時的な業務に従事させる人」や「補助的な業務に継続して従事させる人」、「アルバイト的なポジション」という位置づけで、“仮採用者”“見習社員”などと呼んでいるのであれば、これは「雇用形態の違い」による呼称の差異(呼び方の違い)ということです。よって、「試用期間」には該当しません。
長すぎる試用期間にご注意
“仮採用”とか“見習い”などと呼んでいるからといって、本来なら「試用期間」という位置づけにあるにも関わらず、ずっと不安定な地位のままにしておくのはダメです。
先にお伝えしたように、試用期間は社員としての適格性のジャッジ期間です。原則として、不適格性を理由とする解雇権を留保している期間だと考えられています。そのため、その試用期間中の地位や身分保障などは正社員と比べて弱く、不安定なので、必ず期間を決めておかなければなりません。
ただ、「試用期間の長さ」は、どのくらいでなければならないという法令上の制限はありません。
とはいえ、繰り返しになりますが、試用期間は社員としての地位が不安定な期間であるので、あまりにも長期間とするのは、本人に不当な不利益を強いることになります。よって、長期間の試用期間は公序良俗に反するので無効となります。
「じゃあ、どのくらいの長さにするのが妥当なの?」
当然、そう思われますよね。改正前の労基法第14条が「労働契約の期間を定める場合には1年を超えてはダメ」としていたことから、もっとも長期のものでも、最高で1年と解釈するべきだろう、と考えられてきました。
実際のところ1年は長すぎるのではないか、という問題もありますが、判例上、1年が長すぎるので無効だとする取扱いはなされていません。
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前述のとおり、試用期間の長さは法律で決められているわけではないとはいえ、実務上では3か月から6か月程度が一般的だといえます。
なお、試用期間中とはいえ、社会保険は入社日から適用されるものです。
(入社日ではなく)本採用が決定された時点から適用とするなど、ついうっかりの手続きモレがないよう注意したいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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