社員を採用したものの、当社に合った人材なのか、今後期待通りの働きをしてくれるのか自信がない。それなら、試用期間は長いに越したことがない。3か月?いやいや短い、6か月にしてみるか・・・
【―それから6か月後―】
来週には試用期間が終わるが、本採用してよいのかピンとこない。あともう少し時間があればわかりそうな気がする。よし、期間を延長することにしよう・・・
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「いまいち(本採用の)決め手に欠ける」程度では、本採用拒否の十分な理由といえません。この状況で試用期間を延長しても、問題を先送りにしているだけかもしれません。
そこで今回は、問題を先送りしない試用期間の在り方について詳しく確認していきたいと思います。
試用期間の誤解
試用期間は勤務態度、性格、スキルなどをみて本採用にするかどうかを、判断するために設けられた期間です。「試用期間は簡単に辞めさせられる」との認識があれば、それは誤解です。
試用期間が終わった時点での本採用拒否は、解雇にあたります。
解雇には客観的合理性と社会的相当性が必要ですから、「いまいち合わない」といった程度の理由では、解雇権の濫用として無効になります。
勤務態度など採用面接だけでは見極めが難しいので、通常(たとえば入社3年たった時など)の解雇よりも、試用期間の解雇は比較的緩やかに認められるというだけです。
試用期間は法律で決められておらず、会社と本人の間で合意すれば、その期間を自由に決めることができます。延長についても同様ですが、具体的には以下のように2パターンあります。
- 就業規則に延長規定がある場合
- 就業規則ではなく個別に本人と合意した場合
就業規則に延長規定がない場合は、本人から個別の同意があった場合のみ延長できます。
上記のような「試用期間6か月」は長い方ですから(一般的には3か月が多いようです)、1か月から3か月の延長が限度でしょう。
けれどそもそも試用期間を延長せず、判断することはできないのでしょうか。
判断できない理由
試用期間中に本採用可否の判断ができない理由は2つあります。
- 判断基準がないから
- すでに備えていてほしい要件と自社で育てられる要件の区別がついていないから
1)について、新人の育成期間を短縮しできるだけ早く戦力になってもらうために、こなしてほしい具体的なタスクや、とってほしい行動パターンを考えてあらかじめ列挙しておくことです。
そこで自分の役割、職務をはっきり理解して、この仕事をやっていけるという自信があるかどうかなどを冷静に見極めましょう。
2)について、つい忘れがちなのが何でもできるスーパーマンはいないということ。
また「いい人そう」「仲良くできそう」と、ぱっと受ける印象やなんとなくの感覚では、入社後の成長は期待できません。
面接で確認した必須のスペックに見誤りはなかったか、伸びしろの部分を自社でどのように育てていくかを考えましょう。
試用期間の本来の意義
これらを事前に検討しておかないで、試用期間を延長しても、本人の「いまいち」な部分ばかりが目についてしまいます。不満が積もるだけで問題の解決にはなりません。
本人にとっても、別の会社で新しいキャリアを歩み出す方が適しているかもしれません。
また試用期間では冷静な見極めも必要ですが、新人を職場や仕事になじませることも大切です。
新人をむやみにお客さま扱いせず、基礎的な仕事を任せて適性をみながら、職場は新人を歓迎していること、成長の機会やサポートがあることをしっかり伝えていきましょう。
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試用期間は新入社員が仕事や職場にうまく適用できるのか、向き不向きの判定を行うとともに、教育を行う期間でもあります。
せっかく自社にご縁があって採用した人材です。辞めさせることを考えて時間を費やすよりも、活かして育てることに時間をかけたいですね。
そのためにも、頭数合わせで採用活動を行うのではなく、どんなスキルをもって、どんな考え方をもって、どんな行動をとる社員に来てほしいのかを、事前にしっかり考えておくことが大切だと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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