職種限定の採用でなければどんな部署への異動もOK?

便箋と銀の万年筆。コーヒーの入ったカップ&ソーサ。ピンクのデイジーの花。

特に職種を限定せずに採用した場合、入社後はどんな部署や職種にでも異動させても問題ないでしょうか。入社してから“そんなこと聞いてなかった”“思っていたのと違う”と言われるのも採用担当としてツライので・・・」

 

今年は、新型コロナウィルスの影響で採用計画を大幅に変更せざるを得ず、冬の訪れを感じるこのごろになっても、採用活動を積極的に行っている企業もあるでしょう。

 

入社後の社員の配置転換にまつわるご相談は、通常でもよくいただきますが、特にいまは対面での採用活動が難しいので、企業説明に苦慮する場面もあるのではないでしょうか。なんとなくの雰囲気や、あいまいな言い回しでは誤解を招きかねないので、きちんと説明の根拠を事前に把握しておきたい、とのお声を伺うこともあります。

 

そこで今回は、特に職種を限定せずに採用した場合であれば、どのような部署、職種への異動命令も認められるのかどうか、詳しく確認していきたいと思います。

会社が配転命令を行うときの要件

ハート形のギフトボックスとびんせん。観葉植物のグリーンのつる。

社員の能力開発は、人事異動の目的のひとつとして挙げることができます。会社には、業績をアップさせるためにも、社員のスキルを伸ばす必要があるからです。

 

では、配置転換(転勤を含む部署替え、職種替えなど)について、会社は社員に一方的に人事異動命令を出すことができるのでしょうか。

 

一般的には、社員の労働契約の範囲内であれば、会社は社員に対して配転を一方的に命じることができる、と考えられています。ここでいう「労働契約の範囲内」とは、労働契約そのものだけでなく、就業規則や労使協約、さらには労使慣行(会社と社員の間の事実上のルール)も含まれます。

 

同じ企業内での配転は出向などに比べて、社員に与える不利益の程度が大きくないため、特に勤務場所や職種を限定する合意がない場合は、労働契約の範囲内だということで、配転命令が認められるケースは多いといえます。

 

一般的には、専門職や特殊な技術・技能・資格を有する者(医師、看護師、弁護士、会計士、ボイラー技士など)には、職種の限定があるとみられます。また、特殊な職種でなくても、採用時の職種とまったく異なる職種に配転させようとする場合には、労働契約の範囲内にあるかどうかが厳しく問われるので注意が必要です。

職種限定の採用でなければどんな配転もできるのか

陽ざしが差し込むデスクでノートパソコンに打ち込む指先。

では、採用時に職種を限定する合意がなかったとしたら、会社は社員に対してどんなときでも自由に配置転換の異動命令が出せるのかというと、そうではありません。

 

その人事異動命令(配転命令)が、会社の権利濫用になってはいけないからです。

 

配置転換によって、社員は勤務場所や仕事内容が変更されます。それは少なからず、社員の生活に影響を与えることになるので、「配転命令は権利濫用として無効」と判断されるケースもありますから、注意しなければなりません。

 

権利濫用となるかどうかのポイントは、次の2つのバランスです。


(1)会社側の人事異動命令(配転命令)の必要性と合理性

(2)人事異動命令(配転命令)により社員が被る不利益

これら2つのバランスを比較して、下記のように偏りが大きくなると、会社側の権利濫用と判断されることになります。

(2)社員が被る不利益  > (1)会社側の配転命令の必要性と合理性

たとえば、次のような例では、会社側の必要性と社員の不利益のバランスを欠いている、と判断される可能性は高くなるでしょう。

  • 闘病中の家族を看病している社員に地方支社への転勤命令
  • 休職明けの転勤命令により、信頼している医師による治療の機会を失う
  • 専門職(有資格者)の能力を発揮できない職種への配転

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会社が人事異動を行う目的に、社員の能力を十分に発揮させるための適正配置や人材育成、昇進への道しるべ、職場の活性化などがあるとはいえ、社員の負担や不利益があまりにも大きい場合は、再検討の余地がありそうです。たとえば、下記のように、配置転換(転勤)のあり方そのものを見直すのもひとつの方法です。

  • 他の方法で「会社の必要性(配転の目的)」を果たすことができないか?
  • 配転(転勤)の地理的な範囲を見直せないか?
  • 配転(転勤)の時期をずらしたり、期間を見直せないか?

「本当にこの配置転換は必要なのか?」との視点から、社員のチカラを活かす方法を柔軟に考えたいですね。

イチゴのパイとコーヒーの入ったカップ&ソーサ。ほっとひといき。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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