Aさんが、家庭内のトラブルをきっかけに軽度のメンタル疾患になった。通院しながらこれまでどおり勤務していたが、なかなか症状は良くならず、仕事や日常生活に少しずつ支障が現れ始めた。遅刻や早退、欠勤が増え、判断力の低下でミスが頻発するため、同僚や上司のフォローが欠かせない。・・・今期の人事評価ダウンは免れないが、病気が原因だけに・・・
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所属部のメンバーが軽度のメンタル疾患にかかり、かかる対応に悩む課長さんです。
本人の働きぶりからみて、今期の人事評価は下げざるを得ないとはいえ、疾病に起因するものなので、人事評価を下げることは人事権の濫用にあたるのか、判断に迷います。
そこで今回は、疾病によって仕事のパフォーマンスが低下したため、人事評価を下げることは人事権の濫用となるのか、詳しく確認していきたいと思います。
人事評価とは
人事評価とは、仕事や能力に応じた賃金の決め方、能力にあった昇進、教育の平等な機会、適正な人材配置を目的としたものです。
会社が、社員の配置・異動・昇進・昇格等の人事権を的確かつ公正に行使するには、社員の能力・適性を評価してそれぞれにふさわしい部署に配置し、あるいはより高度な仕事ができる能力・適性があると判定すれば、それに応じた職位や資格を与えるために昇進・昇格を行わなければなりません。
また社員がどのように能力を発揮し、成果をあげているかを判定し、それに応じた昇給や賞与を考えることが必要です。
そして社員が能力を十分発揮せず、成果を上げていない場合には、その社員の能力・適性に問題があるのか、勤務態度ややる気に問題があるのかなどを判定して、教育の機会を与える必要が出てきます。
このような目的のため社員の能力・適性あるいは能力の発揮度、勤務態度や意欲を評価・判定するものが人事評価であり、これは会社の人事権の一部といえます。
とはいえ、不公正で恣意的な人事評価が許されるわけではありません。会社には、「公正査定義務」が労働契約上の信義則(労契法)、権利濫用の禁止(労契法)、公序良俗(民法)等の趣旨から発生することになります。
実務的にどうする
前段でお伝えしたように、もともと人事評価には企業に裁量権が与えられているので、客観的な評価基準に基づいて正当に評価した結果、低い評価とせざるを得ないのであれば、それは権利の濫用とはいえないでしょう。
では、疾病によるパフォーマンス低下を理由に人事評価を下げることは権利の濫用となるのでしょうか。
誰でも疾病にかかる可能性はあるので、疾病により一時的に働きぶりが低下したからといって、それだけで人事評価を下げ、それに応じて昇給を見送ったり、賞与を下げるのは合理的とはいえません。
ただ、メンタルヘルス不調の場合は一般的に長期に及ぶ場合が少なくないので、成果・勤務態度・業務遂行能力等に長期的に影響を及ぼす場合は、これを考慮して評価することは許されると考えられます。
とはいえ、パフォーマンス低下の理由が疾病によるものと知りながら、会社側が何も対応しないというのは問題があります。会社は安全配慮義務(安全管理だけでなく健康管理についても同様)を負っているため、社員にメンタルヘルス不調の傾向がみられる場合、会社には速やかに業務軽減等の措置を取ることが求められるからです(メンタル不調が業務に起因するものでなくても)。
人事評価を下げることを考えるよりも、一定期間をおいて改善の様子がみられないのであれば、業務上の配慮(負荷軽減、部署異動など)を検討するべきでしょう。
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身近にいる上司・同僚である方々には、メンタルヘルス不調のサイン(遅刻・早退・欠勤の増加、判断力や効率の低下、ミスの頻発、表情や顔色の変化、口数の減少など)に気づいたら、まず声をかけ、話を聴いてあげることが求められます(本人では気づけないことが多いため)。
職場の仲間の変化に気づくためにも、普段から様子や行動に気を掛けておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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