先月に中途入社した社員が最近休みがちだ。本人に事情を聞いてみると、メンタル疾患が再発したらしい。採用面接では「特に問題となる病歴はなし、いたって健康」と聞いていたのに・・・これは経歴詐称?それなら懲戒解雇も検討するべきなのか・・・?
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社員が健康に働ける状態であるかどうかは、採用決定にあたって会社が確認すべき重要事項です。健康状態に不安を抱えていると、事故発生の危険性や業務に支障が生じるおそれもあるからです。
入社したての社員の体調が心配で声を掛けたところ、面接では明かされなかった病歴と現在の病状について相談され、対応に戸惑う直属の上司です。
そこで今回は、採用面接で病歴を詐称して入社した社員を経歴詐称として懲戒解雇できるのか、詳しく確認していきたいと思います。
経歴詐称と病歴の調査について
重大な経歴詐称があった場合、これは会社に対する背信行為となるため、懲戒解雇はやむを得ないと考えられています。会社と社員の信頼関係は崩壊し、企業秩序が乱されるおそれがあるからです。
この「重大な経歴」とはどういうものなのかというと、判例では「経歴詐称がなかったならば雇用契約が締結されなかったであろうという因果関係が、社会的に妥当と認められる程度に重大なとき」との旨が示されています。
では本人の病歴については、採用においてどのような位置づけになるのでしょうか。
採用決定にあたって、入社してから日常業務に支障をきたすことのないよう、健康に働ける状態であるかどうかは確認すべき重要事項といえます。そのため業務に関連する項目について、必要な範囲であれば、事前に健康状態を調査することは認められています。
ポイントは、「業務上必要なものに限定すること」「本人の同意を得ること」「利用目的を採用選考に限定すること」です。メンタル面での病歴を聞くことはタブーだと思われがちですが、その状態によっては仕事に支障をきたすおそれがあります。そこで採用面接において、メンタル面を含めた過去の病歴を聞くことは、原則認められています。ただし就職差別につながらないよう、あくまで仕事に必要な範囲内に留めるなどの配慮が必要です。
実務的にどうする?
冒頭の例では、メンタル疾患の治療歴があるのにも関わらず、採用面接時には「特に問題となる病歴はなし」と説明しているため、病歴の詐称があったといえます。
ではこの場合、懲戒解雇の有効性に関わる「重大な経歴の詐称」にあたるのでしょうか。
病歴の詐称が問題となった裁判例では、病歴詐称も直ちに「重大な経歴の詐称」となるわけではなく、労働能力への影響や職務遂行への支障の有無・その程度が判断のポイントとなるとみられます。
確かにメンタル疾患が再発したことで、仕事面に影響が出ることは想像に難くありません(実際に体調不良で休みがち)。とはいえ、現在の体調不良が過去のメンタル疾患とどのような関係にあるのかは必ずしも明らかではありません。「休みがち」という状況では、仕事への支障がどの程度であるかはまだ判断がつきません。
これらの状況(採用面接時のやりとり、従事する職種、勤務状況等)を総合的に考えると、現時点での懲戒解雇は慎重に考えるべきでしょう。
病歴の詐称による職務遂行能力への影響の判断が難しい場合、「体調不良で休みがち(継続的な職務遂行ができない)」→「就業規則に基づき休職の発令」→「(就業規則に基づき)休職期間中に休職事由が消滅せず復職しないときは自然退職」という流れが無理のない対応といえるでしょう。
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本文の補足です。
【前段】病歴(健康状態)の調査について
・厚生労働省は「就職差別につながるおそれがある」として、「HIV」「B型・C型肝炎」等の感染情報については、業務上特に必要がない限り、一律に取得するべきではないと指導しています。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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