会社に体力があるうちに、事業転換に着手することになった。人員整理のため退職勧奨を検討しているが、やはり円満退職を目指したい。就業規則の規定による通常の退職金にプラスして、上乗せ支給してはどうだろうか?
**
退職勧奨に際して、退職金規程により算出された退職金に加えて、規程にはない退職金の上積み(割増退職金)を支給してはどうか、との案が持ち上がりました。
後日になって「本当は退職したくない」と対象社員が退職に異議を唱え、トラブルになることもあるかもしれないからです。とはいえ、このような事態が初めてで取り扱いに慎重になる人事担当者さんです。
そこで今回は、退職勧奨に際して、規程にない退職金の上乗せを行うことに問題はないのか、詳しく確認していきたいと思います。
退職勧奨とは何か
雇用保険被保険者離職証明書(ハローワークへ提出する3枚綴りの書類)の離職理由で“希望退職の募集又は退職勧奨”という項目がありますが、希望退職の募集と退職勧奨がどう違うのか?とギモンに思われることはないでしょうか。
希望退職と退職勧奨の両方とも、「労働契約の合意解約の申入れ」という点では共通しているものの、会社と社員のどちら側による解約の申入れなのか、という点で両者は異なります。
- 希望退職→会社による退職の誘いに対して社員側から解約を申し入れること
- 退職勧奨→会社側から解約を申し入れること
たとえ退職勧奨のプロセスに違法性があったとしても、本人が真意によって退職願を提出したときには、有効な任意退職として扱われることになります。ただし、自由意思によらず、心理的なプレッシャーを与えるなどして提出を強要された退職願は無効として判断されるケースもあります。
また、後で社員が退職に異議を唱えることもあるかもしれませんが、社員が退職願を提出して、異議を唱えずに円満退職といった意味合いの退職金を受け取っている場合には、会社の合意解約の申入れに対する社員の明示または黙示の承諾があったものと解釈されます(退職勧奨は有効となる)。
規程にない退職金の上乗せはアリか
会社側の退職勧奨に応じて、社員が退職に合意した場合、その社員が就業規則(退職金規程)に定める退職金の支給要件を満たしていれば、もちろん会社はその退職金を支給しなければなりません。
また社員が異議を唱えずに円満な退職合意を得る目的で、就業規則(退職金規程)に基づく退職金に加えて、規程にはない退職金の上積み(割増退職金)を支給することも可能です。
こういった退職金の上乗せについて法律上の規制はなく、会社は自由に金額を決定することができます。
退職勧奨の対象社員に退職金の上乗せを提案する際には、下記について事前に社内で検討しておくべきでしょう。
【テーマ:支給可能な上乗せ金額はいくらまでか(下記の事項から具体的に割り出す)】
- 対象社員の生活費はどのくらいか(家族構成を加味して検討する)
- 対象社員はどのくらいの期間で再就職できそうか
- 自社の企業規模
- 会社側、社員側の様々な事情
**
退職勧奨に応じて社員本人が退職願を提出した場合は、「解雇」ではなくあくまでも合意退職にあたります。
ただし、雇用保険の離職証明書における離職理由の記載は、「希望退職の募集又は退職勧奨」の項目にチェックすることになります(具体的な理由は「会社都合による勧奨退職」)ので、間違いのないよう注意したいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事




