顧客からの問い合わせにより、役員の不正が発覚した。日頃からも言動に問題のある役員であったので、懲戒処分として役員報酬を減額しようということになった。ただ、役員報酬の減額に労基法の減給の制裁は適用されるのだろうか?
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役員の問題行動が発覚し、社員の会社組織への不信感を払しょくするため適切な処分を行わなければ、という経営陣の判断で当該役員の報酬を減額することになりました。
社員の帰属意識の低下を防ぐためにも必要なことだと思いながらも、労基法に抵触しないのかと考えを巡らす人事担当者さんです。
そこで今回は、懲戒処分としての役員報酬の減額は労基法に抵触するのか、詳しく確認していきたいと思います。
役員を懲戒処分できるのか
会社が、企業秩序の維持のために認められている懲戒権を行使するには、懲戒処分の対象者と会社の間に使用従属関係(会社の指揮命令権に服して労務を提供する)があることが前提です。
ですが、会社と役員(取締役)との関係は委任関係であり、取締役が「毎日〇時から〇時まで働きなさい」といった会社の指揮命令権に従って働くという使用従属関係にはありません。よって、取締役に就業規則違反があったとしても、会社はその取締役を懲戒処分することはできません。
なお取締役であっても、例えば取締役総務部長や取締役工場長等のように、会社法上の役員ではあるものの、総務部長や工場長としての社員たる性格をも併せ持つと認められる者(使用人兼務役員)がいます。
総務部長や工場長という社員としての地位には、会社の指揮命令を受けて働く範囲内で労働契約関係があるので、就業規則に基づく懲戒処分を行うことができます。減給の懲戒処分は、社員の地位に対する賃金に関してのみ可能ということになります。
実務的にどうする?
減給については労基法で厳しく制約されていて、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされています。
一方、役員報酬については不祥事が発生したとき「取締役の報酬の〇割を〇か月返上」といった報道を目にします。ここでポイントなのは、「返上」というワードです。これは懲戒処分としての減給ではなく、取締役としての報酬の放棄を意味します。
労基法では賃金全額払いの原則が定められているので、賃金の放棄については労働者の自由な意思に基づいてなされたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要とされます。
これに対して役員報酬にはそういった法規制はありません。また役員(取締役)は、会社との間の委任関係に基づいて、会社に対して善良な管理者としての注意義務と忠実義務を負っているので、請求権の放棄は認められ易いでしょう。
取締役総務部長や取締役工場長といった使用人兼務役員について、減給の懲戒処分は社員の地位に対する賃金に関してのみ可能ですが、もちろん労基法の適用があります。よって、使用人兼務役員への懲戒処分としての減給は、賃金部分の1割が限度となります。
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役員の問題行動に対する処分が見送られたりすると、「社員には厳しいのに役員には甘いんだ」「こんな組織ってどうなの?」などとの不満や不信感を社員に抱かせてしまうかもしれません。
企業秩序の遵守を教育し、その違反を未然に防ぐことは、人材マネジメントにおいて重要ですが、逆の「お手本」を提示していることに他ならないからです。
迅速に適切な処分を行うことが会社には求められます。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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