顧客からクレームの連絡が入った。先方は「担当者を寄越して土下座して詫びろ」と大変ご立腹の様子。部長は担当者の直属の上司である私に「すぐに担当者と出向いて土下座して謝罪してこい」と言っているが、業務命令で「土下座」謝罪なんてさせていいのかな?
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会社に入社すると、社員として上司(会社)の業務命令に従って働くことになります。業務命令に従わなければ、「業務命令違反」ということで懲戒処分の対象となることもありえます。
とはいえ、どんな指示・命令であっても(たとえ土下座であっても)業務命令ということで、社員は必ず従わなければならないのだろうか?と、判断に迷う渦中の担当者の上司です。
そこで今回は、そもそも業務命令とはどういうことをいうのか、そして土下座を命令してもいいのか、詳しく確認していきたいと思います。
そもそも業務命令とは
会社に入社するということは、言い換えると、企業内における社員という地位を獲得し、業務命令に従い企業組織に組み入れられ、業務に従事することです。
会社は経営の合理化のため、部署や役職を定め、指示を与える権限を持ち、社員を配置し、必要な業務上の命令を出します。そして社員は、それに従って仕事にあたることになります。このタテの関係における会社の指揮命令権の発動のことを「業務命令」と呼んでいます。
会社の指揮命令権の根拠は労働契約にあります。「私は会社の命令に従って労務提供します」という労働契約の締結によって、この命令に服する義務が生じることになります。
仕事は社員ひとりだけで行うものではなく、同僚をはじめ隣接する部署の社員とともに協同して遂行しなければならないので、協同・協調し、一体となってその職場のルールに従って働くことになります。
そこで、協同遂行に関する必要な指示や命令も業務命令の中に含まれます。また職場外における行為であっても、企業秩序の維持・確保や企業の円滑な運営に支障が生じるおそれのあるものについては、必要な指示・命令ができ、業務命令の範囲となります。
この業務命令である社員に対する指揮監督権限の有効性を担保するために、会社には懲戒処分権限が認められています。
業務命令の限界
業務命令だからといって、会社は社員に何でも命令できるわけではありません。社員の人格、権利を不当に侵害することのない、合理的な範囲と認められる範囲のものでなければなりません。会社は企業の秩序を維持するため、必要な規制、指示、命令を行うことができますが、一定の限界があるということです。
では冒頭の例にある、土下座を命じることに合理性・相当性は認められるのでしょうか。会社としては、クレームを丸く収めるべく迅速な顧客対応にあたらなければなりません。そこで顧客への謝罪を命じることは、業務命令権の適正な行使だといえます。
ですが、謝罪の方法として土下座をするかどうかは個人の自由です。土下座は個人の尊厳を著しく害する行為であるからには、それを強要することは合理性・相当性を逸脱し、業務命令権の正当な行使とは言い難いでしょう。
よって、クレーム対応にあたる社員の意思に反して、会社は土下座を強要することはできません。土下座を強要する業務命令は無効となりますので、この業務命令に従わなかったからといって懲戒処分を行うことはできません。
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業務命令とは単に仕事上の指示・命令というだけではなく、上司(会社)には部下(社員)に対する指導教育権限も認められています。
とはいえ暴言を吐いたり、罵倒したり、「辞めてしまえ」と退職を強要するなど、社会通念上許される範囲を超えるとパワハラ問題となります(←もちろん違法です)から、注意すべきであることは言うまでもありません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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