将来の転勤について誓約書をとっておくといいですか

オフィスのソファで資料の本をひざのうえに乗せながらノートパソコンを開く女性。カーディガンにデニム姿。

「将来的に転勤や移動があった時、いざ社員から拒否されたら困るなあ。入社時に誓約書をとっておいたほうがいいのかな?」

 

労基法では、社員の入社時に「就業の場所・従事業務」(絶対的明示事項)について書面の交付により明示しなければならないことになっています。働く場所は社員にとって重要だからです。

 

では、新型コロナウィルスの感染防止のためテレワークを始めるにしても、いちいち就業の場所について労働契約を変更しないといけないのか?(早くテレワークに移行したいのに手間がかかる・・・(゚Д゚;))と困惑された経営者や管理職の方もいらっしゃるかもしれません。

 

そこで今回は、配置転換や転勤に応じる旨の誓約書を入社時にとっておけば、会社としての対応はノープロブレムなのか、詳しく確認していきたいと思います。

働く場所は社員にとって重要事項

オフィスのデスクに置かれたノートパソコンと資料、ボールペン。観葉植物のグリーンの葉。

労基法では、労働契約にあたって労働条件を明示するべきことを会社に義務づけています。

 

入社時において「口約束」によって書面で労働条件を提示しなかったことで、のちのち「言った・言わない」のトラブルが発生することは想像に難くないですよね。

 

労働条件のうち絶対的明示事項(必ず明示しなければならないこと)については、書面の交付により明示しなければなりませんが、「就業の場所・従事すべき業務」もそのうちのひとつとされています。

 

「就業場所・従事業務」について、通達では次のような内容が示されています。

  • 雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りる。
  • 将来の就業場所や従事事務を併せ網羅的に明示することは差し支えない。

ここからわかることは、できれば将来的に転勤や出向など、人事異動のありうることを明示しておいたほうがよい、ということです。

 

なお、このたびの新型コロナウィルスの感染防止のため、今いる社員にテレワークをさせるなら、労働契約の変更(就業場所の変更)をできる限り書面で示すことが、法律により求められています。新しく採用する社員に自宅でテレワークを行わせる場合は、入社時に就業の場所が自宅であることを書面で明示する必要があります。

誓約書の効力はどうなる?

デスクでクリップ留めされたメモをチェック。水のグラスを持つ手。サインペン。資料の本のうえにガラスのコップに生けられた一輪のダリアの花。

では、入社にあたって提出する誓約書に「会社から業務の都合で配転や転勤、出向を命じられた場合には、正当な理由のない限り拒否しません」と記載して、社員が署名した場合には、特別な効力が発生するのでしょうか。

 

日本では、勤務地や職種を限定する特約がない限り、従事する業務、勤務場所などの決定・変更の権限を会社にゆだねて労働契約を結ぶのが通例となっています。

 

よって、就業規則やその他契約において、上記のような旨を記載しなければいけないかというと、必ずしもそうではありません。

 

とはいえ、就業規則において「会社は業務上の必要があるときは、社員に配転、転勤を命じることができる。社員は、正当な理由がない限り拒んではならない」旨の規定があると、会社が包括的な人事異動の権限を持つことを、よりいっそう明白に定めたことになります。つまり、労働契約の内容としてはっきり明確になるということです。

 

配置転換や転勤が仕事のうえで必要であり、実際に発生する会社では、就業規則で定めておくことが大切です。社員に会社の仕事の特性について理解してもらい、心づもりをしてもらうためにも必要でしょう。また、これからの人材マネジメントにおいて、将来のキャリアをできる限り明示しておくことも大切だといえます。20~30代の若手社員の多くは転職に対してネガティブなイメージを持っていませんが、今いる会社で思うキャリアを積むことができれば、会社を辞めようとは思わないからです。

 

そして、就業規則に加えて、誓約書で配転・転勤に応じる旨を定めて明示しておくと、会社と社員の間でより強く配転・転勤の義務が認められることになります。

 

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人事異動の目的のひとつに、社員の能力開発があります。ただ、今の仕事と畑違いの仕事に異動させると、新しいスキルの習得までに時間が相当かかります。受け入れ部署にしても負担増です。それなのに、本人のスキルが新しい仕事をこなせるほど伸びないこともあります。

 

つまり、今の仕事との関連がほとんどない部署への異動は、本人が今まで培ってきたスキルと会社の教育コストが無駄になってしまいかねません。

 

単に異動させるだけで能力アップするわけではないことを踏まえて、適切な人材の配置と異動を考えたいですね。

サングラスをかけられたパイナップル。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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