現場へ直行するときどこまで通勤、どこから労働時間?

ピンク色の自転車を手で押しながらアジサイの植え込みの前を通る女性。水色のストライプシャツにパールのブレスレッド。かばんを自転車のかごにのせて。

「作業現場が遠方の場合、いったん会社に出勤してもらうのもアレなんで、直接自宅から作業現場に行ってもらって直帰するような場合も多い。現場へ直行直帰のとき、労働時間はどうカウントするべき?

 

普通ならいったんいつもの職場に出勤して、上司の業務命令によって目的地へ出発します。

 

ただ、時間的なロスを省き効率的に仕事を進めために、自宅から上司の指示による目的地へ直接出かけるようなとき(またそこから自宅へ直帰するようなとき)あるでしょう

 

とはいえ、どこまでが通勤時間でどこから労働時間なのかを考えると、判断に迷うところではないでしょうか。

 

そこで今回は次のような場合、「どこまでが通勤でどこから労働時間なのか?について詳しくみていきたいと思います。

  1. 途中で集合して目的地へ行くとき
  2. 作業現場へ直行直帰するとき

途中で集合して目的地へ行くとき

同僚とハンバーガーセットをつまむ女性の指先。水のペットボトルとコーラの瓶。

出張の場合、会社の目の届かない場所で仕事をすることになり、その間の行動は社員の裁量に任されます。具体的に何時間働いて、何時間休憩したか、会社は具体的なカウントをできないからです。

 

したがって法律上「所定労働時間労働したものとみなす」とされています。逆にいうと、社員の働く時間が客観的にカウントできるのであれば、当然カウントした労働時間となります。

 

では、チームで集合して目的の現場へ出かけるときはどうでしょうか。コンサルティングで企業のご担当者にお話を伺っていると、特に集合場所が会社の資材置き場や車庫などになっている場合、どこから労働時間と考えてよいのか、判断に迷われることが多いようです。

 

この場合、集合場所でそのまま業務に従事するのなら、そこ(集合場所)が出勤場所となります。けれど、そこからさらに目的の現場など実際に仕事を行う場所へ出かける場合には、「出勤途上の待ち合わせ場所と同じ」、と考えられます。

 

つまり、「自宅→資材置き場(集合場所)→目的の作業現場」の往復時間は通勤となります。目的地までの途中に立ち寄る資材置き場(集合場所)は、通勤時間の延長と考えられ、労働時間にはあたりません。

 

ただし、「チームで集合」ということでチームの中に監督者がいて、集合した時点で監督者の指揮下に入るということなら、労働時間のカウントが可能ですから、そこから具体的な労働時間を算定することになります。

作業現場へ直行直帰するとき

テーブルに置かれた一眼レフカメラとポラロイドカメラ。一枚のモノクロームのポラロイド写真。

では次に、自宅から実作業を行う現場へ直行し、作業終了後に自宅へ直帰するときをみていきましょう。

 

この場合、実作業を行う現場に到着するまでが通勤時間です。

その現場に到着し、メンバーが集まって、管理監督者の指揮命令下に置かれた時点から、労働時間を具体的にカウントすることが可能となるので、そこから労働時間がスタートすることになります。

 

このメンバーが集合して、「管理監督者の具体的な指揮命令下のもと作業に入った状態」と認められるには、次の要件をすべてクリアしなければなりません。

  1. 会社の指示によること
  2. 仕事のためにメンバーが集まり、業務が開始したこと
  3. 管理監督者の一定の指揮命令下にあること
  4. 集合してさらに移動するときは、その間も準備作業等が行われていること

1)から4)のそれぞれを、下記に補足します。

1)について、単にメンバーが便宜上申し合わせて現場に集まった、ということではなくて、ちゃんと会社の指示によるものであることが必要です。

 

2)について、単なるおしゃべりで集まっただけ、また(実作業場所までの)送迎バスの乗り降りのため便宜的に集合しただけ、ではなくて、そこから直ちに仕事がスタートする、といったものでなければなりません。

 

3)について、メンバーが集合して、そのなかに「監督者」がただいる・・・というのではなく、メンバーがとるべき行動について、監督者からの具体的な指示命令があって、何かしらの拘束が発生するものであることです。

 

4)について、さらに実作業場所までメンバーのみんなで移動するときは、その移動中も監督者から仕事内容や注意事項の説明、打ち合わせなど、仕事にまつわる準備作業が行われるものでなければなりません。

 

 

1)から4)をまとめると、作業メンバーが集まって集団行動をとるうえで、作業の指揮をとる現場監督者や責任者が選任されており、一定の指揮命令系統のもとで拘束がある、という状態でなくてはならないということです(この状態でなければ、労働時間がスタートしたことになりません)。

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生産性の高い働き方とは、単に労働時間を短くするだけでは実現しません。

けれど無駄に長ければいいというものでは、決してありません。

 

もし、社内の労働時間がやたらと長い・・・ということであれば、もちろん仕事のやり方を見直し、効率化を図ることはとても大切です。ですが、ひょっとすると「労働時間と通勤時間を混同してしまっている」・・・ということはないでしょうか?

 

この観点から、いちど社内の労働時間を振り返ってみることで、改善に向けた新たな方向性がみえてくるかもしれませんね。

屋外のウッドテーブルに置かれたガーベラやマーガレットでまとめられた鮮やかなブーケ。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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