休日の接待ゴルフは休日労働?単なるプレー?

芝生のうえにゴルフピントゴルフボールをセットするグローブをはめた手。

「ゴルフコンペ開催の費用は、会社の交際費として会社側が負担している。だからコンペが休日に行われた場合、休日労働になるのでは?

 

春らしい暖かな陽気に誘われて、お出掛け気分も高まります。そんな春はゴルフのベストシーズンなので、休日に取引先との接待ゴルフ大会が開催されることもあるかもしれません。

 

日本の企業社会において、いわゆる接待ゴルフは取引先との関係性をスムーズにする社交として慣行になっていて、「接待ゴルフは仕事の一環」との意識があるため冒頭のようなご相談をいただきます。

  

そこで今回は、休日に開催される接待ゴルフ大会に参加するとき、労働時間にカウントされるのかどうかについてみていきましょう。

ゴルフコンペへの参加は休日労働にあたるか

緑がまぶしいゴルフ場でクラブを握る女性。黄色のパンツ姿。

ゴルフコンペの場は、新規得意先の開拓、受注アップなどの販売促進や営業取引の継続など、ビジネスにおける重要な役割を果たしている面もあるでしょう。

 

ただ、会社が費用を負担しているからといって、休日に開催されるゴルフコンペへの参加が当然のように休日労働扱いになるかというと、実はそうではありません。

 

結論からお伝えすると、原則としてゴルフコンペへの参加は、休日に行われたとしても休日労働にはなりません

 

なぜなら、一般的にゴルフ自体はあくまでも趣味、スポーツ、レクリエーションといったカテゴリーに属するものであり、コンペ開催の直接の目的はゴルフプレーを楽しむことにあるからです。

 

「ゴルフコンペで取引先と親睦を深めることで、ビジネスが円滑に進んで業績のアップにつながるのに、なぜ?」と思われるかもしれませんが、それはあくまでも副次的なメリットだからです。判例でも次のような内容が示されています。

  • ゴルフコンペへの参加が業務の遂行と認められる場合もあることは否定できない。
  • ただし単に会社の通常の命令によるもので、その費用が会社から出張旅費として支払われる事情だけでは(業務として扱うには)十分とは言えない。
  • ゴルフコンペへの参加は事業を運営するうえで緊急かつ必要なものであり、それを会社が特命として積極的に指示したものでなければならない。

つまり、ゴルフコンペへの参加は業務と認められないので、そもそも労働時間にカウントされるのか、といった問題も起こりえない、ということになります。

 

たとえゴルフコンペへの参加が会社の命令であって、費用も会社持ちで出張旅費などが支出されていたとしても、「業務上」としての扱いにはならないのです。業務上とされるには、ゴルフコンペへの参加が会社の業務運営上、緊急かつ必要であって、かつ会社の積極的な特命によるものと認められなければなりません。たとえばどんな場合があるのでしょうか。次段で具体例をみていきましょう。

ゴルフコンペへの参加が業務になる場合とは

クラブを持ちながら芝生にゴルフピンとボールをセットする男性。

ゴルフコンペへの参加が業務上となるかどうかについて、社員本人がゴルフプレーをするときとしないときに分けて考えるとわかりやすいと思います。

 

まず、その社員本人はプレーをしないとき。会社のコンペ開催担当者として準備、案内、接待、ゲストの送迎にあたる場合、ゴルフコンペへの参加は業務上となります。

 

次に、社員本人もプレーをするとき。業務上と認められるのはこのような場合です。

  • 外国の重要な取引相手を案内して行うとき
  • ゴルフ中に重要な取引の交渉が具体的に行われるとき

 

つまり、具体的な課題や必要性があるという特別な場合であって、そのゴルフへの参加が余人をもって代えがたいようなときでなければ、原則として業務上とはなりません。この例で言うと、英語などの外国語を意思疎通のできるレベルで話すことができる社員、その取引案件の説明にかかる専門的な知識を有する社員などが、「余人をもって代えがたい」として考えられるでしょう。

休日の接待ゴルフと会社の責任

ゴルフ場の芝生のうえに取り残されたゴルフボール。

以上のように、休日の接待ゴルフプレーは休日労働となりませんが、業務上とみなされないというのは労働関係においてのことです。

 

たとえばマイカーで社用ゴルフに参加する途中に、第三者を交通事故で加害したような場合、会社は民法上の使用者責任を問われることになります。使用者責任が問われる要件に「事業の執行」がありますが、これはその行為の外形をみて判断されています。

 

「会社から命じられて」参加した社用ゴルフは、原則として事業の執行にあたると解釈されます。会社は、その交通事故に対する損害賠償責任を負わなければならないことになります。

 

よって、自動車事故の責任(対外的な問題)と労働時間の問題(対内的な問題)は、全く異なるということに注意が必要です。

 

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休日のゴルフコンペはビジネス慣行として成立している、と前段でお伝えしましたが、休日の取引先とのゴルフコンペを、平日の夕方からのボーリング大会へシフトチェンジした企業があるそうです。子育てをしながら働く女性管理職のアイデアだったそうですが、ボーリング大会は取引先にも好評だったとのこと。

 

実のところ取引先の男性担当者にしても、休日はゴルフではなく、家族サービスをしたかったのかもしれません。ライフワークバランスを重視する若い世代の社員には、よくみられる傾向と言えるでしょう。

オフィスのテーブルに置かれたノートパソコン。お皿に盛りつけられたカットスイカ。

このように、価値観の変化があるなか、休日の接待ゴルフコンペをはじめ、当然だと思い込んでいる昔からの慣行を一度見直してみると、ビジネスの画期的なアイデアが生まれる良い機会になるのではないでしょうか。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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