正社員とパートの賞与・諸手当をどう考える?

赤鉛筆と青鉛筆で折れ線グラフの推移を示す

前回の記事(これからの正社員とパートの賃金体系のあり方とは)で、正社員とパートの賃金体系を考えるにあたって、賃金差が単なる「年齢や勤続年数によるもの」という理由しかないのであれば、合理的な説明をもって会社の説明義務を果たすことは難しくなる、ということをお伝えしました。そこで、

「合理的な説明になっていない事例は、他にどんなものがありますか?」

との感想をいただきました。

 

合理的な説明ができていないケースがよくみられるのは、賞与や手当について。確かにこれから同一労働同一賃金の議論が高まってくるなかで、正社員とパートの賞与や諸手当も含めた賃金のあり方について、どのように対応するかを考えておく必要があるでしょう。

現実的かどうは別として、無期雇用フルタイム社員と有期・パート社員の会社への貢献度が同一の場合、賞与も同一に支給するべき、との議論もあります。

ですから、両者の役割や貢献度がどのように違うかについて、明確な説明をできるようにしておきたいですね。

今回は、具体的な事例を交えながら、これからの正社員とパートの賞与や諸手当のあり方についてみていきましょう。

これからの正社員とパートの賞与のあり方

細かい文字で数値が示された帯グラフの資料。電卓を傍らに虫眼鏡で資料の文字を拡大しながら、分析作業を行っている。

合理的な理由もなく、正社員には普通に賞与が支給されるのに、有期・パート社員には一切支給されない、というケースは問題となりやすいでしょう。

 

一方、たとえば次のような場合は、制度として明確な理由があるので、説明を求められても合理的な説明をすることが可能です。

【賞与総額の決定方法】

・正社員には業績連動型の賞与制度をとっている。

(業績指標は「売上高」、「営業利益」や「経常利益」など)

・業績が悪いとき(年度決算が赤字など)は減額。

 

【賞与の構成】

・固定分(正社員としての仕事内容・責任の貢献)+インセンティブ分(業績評価重視の人事考課)

 

【パートの場合】

・貢献に関係なく、一律に業務奨励手当を支給する

このようなケースでは、正社員とパートの賞与支給に差があっても問題はありません。なぜなら、制度として賞与算定に差があるからです。

あいまいな基準やなんとなくの慣習で「パートには賞与は支給しない」ということが問題なのであって、確立された制度のもとで責任の重さに違いがあるなど、説明ができるような「格差」はありだということです。

 

逆に制度がなくても、50人以下規模の会社で、社員一人ひとりの働きぶりを把握している社長が、自らの判断で賞与を決定して支払う場合はむしろ問題ないといえます。正社員とパートの貢献度の差を社長自身がしっかりわかっていて、説明できるからです。

 

つまり賃金差の合理的な説明とは、「どのように賃金を決めるのか、なぜ違いがあるのか」というはっきりとした理由のことです。

諸手当における正社員とパートの差をどうするか

自分のデスクで給食のお弁当を食べる女性社員。

毎月の給料では、基本給以外にもさまざまな手当(家族手当、住宅手当など)を支給されていると思います。もともと手当は特別な支給事由がある人に支給されるもので、会社はいろいろ配慮をしながら処遇を考えているので安心して仕事に集中してほしい、とのメッセージ性を含んでいます。

 

ところが、正社員とパートの均衡を考えずに、単なる「パートだから」という理由だけで手当を支給しないということであれば、これからの時代では無用なトラブルを招きかねません。

多くの会社でみられる主な手当について、以下で具体的にチェックしてみましょう。

役職手当

責任の範囲や程度に応じて支給すること。

たとえば「正社員主任」「パート主任」で、同じ主任でも責任の範囲や程度に差があれば賃金差はOK。

 特殊勤務(作業)手当  特別な危険や作業負荷に応じて支給されるものですが、同一の危険や作業負荷なら同一支給とすること。
交替・変則勤務手当

交替・変則勤務の負荷に対して支給されるものですが、同じ状況の場合は同一支給とすること。

ただし、パートは土日や早朝、深夜などに勤務することが困難で、正社員のみが対応する場合は、同一でなくてOK。

通勤手当

正社員は採用圏を限定しないので全額支給する。

パートは会社の近隣圏に限定して採用するので公共交通機関を利用する場合のみ支給する。

といったケースで差があるのはOK。

また、正社員には定期代相当額を支給するが、パートは週3日勤務なので、日額交通費を支給するというケースもOK。

食事手当

食事補助で同一支給とすること。

ただし、パートは午後からの勤務のため支給しないのはOK。

近年、同じような業務についていた正社員と有期契約社員の諸手当の格差が問題となった判例もあります。

ですから、企業のこれからの対応として、特に多くのパート社員が働いている場合は、手当の支給理由を就業規則(賃金規程)に定めておくことが必要となってくるでしょう。

手当の廃止を検討するか?

机の上に、家のミニチュア模型3体、観葉植物、電卓が並んでいる。

前段までを読まれて、「いろいろ考えていると面倒なので、いっそのこと各種の手当をやめて基本給一本にしようか?」と思われたかもしれません。

最近の人事制度のトレンドとして、成果に関係のない手当は廃止・縮小して、基本給に一本化する傾向もあります。

 

けれど先にお伝えしたように、諸手当には「会社は事情に配慮して処遇を考えているので、安心して仕事にまい進してほしい」とった会社からのメッセージ性があります。

手当を廃止して、基本給一本の仕事基準を重視した人事制度となると、「こういった仕事ができるので昇格」「これができないなら降格」と昇降格の運用が厳しくなりすぎ、殺伐とした職場を生み出す要因となってしまいます。

ですから、社員それぞれの事情への配慮とのバランスを考えることがとても大切だと思います。

 

また別の側面として、家族手当や住宅手当を廃止すると残業単価がアップするという問題もあります(法律上、家族手当や住宅手当は残業手当の算定基礎に含めなくてよいので)。

 

「同一労働同一賃金」の言葉ばかりが前面に出ているような風潮も感じられますが、社員が主体的に動いてみんなで業績を伸ばしていくために、いま会社に求められる取り組みとは何か?ということをしっかり考えたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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