これからの正社員とパートの賃金体系のあり方とは

デスク上にパソコンのキーボード、マウス、電卓、手帳、スマートフォン、コーヒーカップ、観葉植物が並んでいる。

政府では、「日本の非正規雇用労働者の賃金水準は欧州諸国と比べて低い状況」「不合理な待遇差の解消は重要な政策課題」として、同一労働同一賃金の実現に向けた立法化が検討されています。

 

政府が同一労働同一賃金の目標にあげるヨーロッパ諸国では、職務評価制度が確立されています。産業別労働組合と経営者の間で賃金が決定され、たとえば「受付」という職務について、同じ地域であればどこの企業でも同じ賃金となります。「技能」「努力」「責任」「作業条件」・・・といった職務評価基準がしっかりと運用されているのです。そのため定期昇給はなく、賃金を上げるには職務間の移動(「受付」から「秘書」などへ職務を変更する)を行うことになります。

 

一方、日本ではこのような企業を問わない、横断的な賃金制度は確立されていません。企業ごとに年齢、勤続年数、仕事の内容、学歴、会社への貢献度といったさまざまな要素で、賃金が決定されています。職務別にではなく、新卒を一括採用するケースが多いからです。

また、日本では職務評価基準が確立していないので同一労働同一賃金の原則の適用はない、との判例もあります。

 

では今、検討されている同一労働同一賃金とはいったいどのようなもので、企業はどう対応していくといいのでしょうか。

完全な同一労働同一賃金を目標としていない

ノートの上にコバルトブルーの電卓が載っている。黒い万年筆が傍らにある。

政府が立法化にあたって示している同一労働同一賃金の方向性を簡単にいうと、以下のA、Bがあるとして、

 

 A)「正社員・無期社員」グループ

 B)「パート・有期社員・派遣社員」グループ

 

「AとBが同じ労働価値の場合、不合理な賃金差のあるものを禁止する」というものです。

 

「同じ労働価値」であるかどうかは、以下の1)から5)を個別事案の事情に応じて対比することになります。

 

 

  1. 業務内容(資格、難易度、必要とする能力など)
  2. 責任の程度(権限の範囲、役割や期待、トラブル対応の程度など)
  3. 職務・配置の変更の程度(カバーする仕事の範囲、転勤の有無など)
  4. 人材活用の仕組み(昇進昇格、人事考課など)
  5. その他の事情(勤務時間、長期出張の有無、残業の限度など)

「不合理な賃金差のあるものを禁止する」とは、Bの労働条件のレベルがAのものと比べて、単に低いというのではなくて、誰がみても許容できないほど著しく不公正に低いものであってはならない、という趣旨です。

 

ですから政府立法は、冒頭に触れた、ヨーロッパ諸国のような本来の同一労働同一賃金への改正を目指すものではありません。

正社員とパートの違いをどう考える?

現場でヘルメットをかぶり、図面を眺めながら進捗を確認する女性社員。

確かに正社員とパートでは、残業や転勤の有無など責任面で違いがあることも多いため、同一賃金とするには適当なのか?との疑問があるかもしれません。また長期雇用を前提とする正社員と、長い期間勤務しないかもしれないパートの人事管理を同じように考えるのも無理があります。

 

ですから正社員とパートの人事管理を異なるグループとして別々に考えるほうが、マネジメントの効率もよく、実態に合っていることでしょう。

そのような人事管理の仕組みとして、次の2点を土台にするとよいと思います。

  1. 雇用区分を決めること
  2. 社員のランクを決めること

1)の雇用区分を決めるとは、無期転換への対応の準備できていますか?でもお伝えしましたが、仕事の内容、雇用形態、働き方など、どのような基準(雇用ルール)で異なるグループとして区分するのかを決めるということです。

正社員、パートがそれぞれどんな役割を担って、どのような行動パターンをとれば、取引先や顧客により良いサービスを提供できるのかを考えるといいですね。

 

2)の社員のランクを決めるとは、従事する仕事の重要度や会社への貢献度のレベルを格付けすることです。仕事の重要度や貢献度がおおむね同じレベルの社員を集めたものを、資格等級として設定するケースが多いと思います。資格等級の設定は、各企業においてその違いがはっきりわかる数だけに留めておくことがポイントです。

 

1)と2)の設定で、会社がそれぞれの社員に求めることを明確にしたうえで、賃金を決めること。そうすれば社員に説明を求められても困ることはありません。

正社員とパートの賃金体系をどう考える?

オフィスで電話応対するパートタイムの女性社員。

パート・有期社員から、正社員との待遇差にかかる理由を聞かれた場合、会社に説明義務を課すことも検討課題としてあげられています。

 

社員数が50人までの中小企業の社長なら、社員全員をよく知っているのもよくあることです。社長が社員一人ひとりへ賃金について、合理的な説明ができる場合は問題ありません。

けれど全員のことを経営者ひとりが把握するのが無理な場合、賃金などの待遇差について、その理由を明確にできる規定と制度の整備が必要になります。

 

たとえば正社員コースとサポート社員コースを設ける場合。正社員が会社の中核となる業務を行い、パートがその補助的なサポート業務を担当するなら、「キャリアコースが異なるから」ということで賃金差があっても問題ありません。

 

けれど賃金差が単なる「年齢や勤続年数によるもの」という理由しかないのであれば、合理的な説明とはいえません。

この場合、評価制度として「仕事上の重要判断をするにあたって、社会的な経験が必要なので年齢や勤続年数を評価する(パート・有期社員は仕事上の重要判断が必要ない)」ということなら、納得性のある説明ができるでしょう。

 

これからの人事制度(評価制度・賃金制度)では、どうやってその人の賃金を決めるのか、なぜ誰それさんとは違うのか、ということを明確にすることが求められると思います。

待遇差への不安や不公平感からパフォーマンスが落ちることのないよう、社員が安心して能力を発揮できる体制づくりをしておきたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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