企業秘密の漏洩で社員に損害賠償させるのはダメ?

オフィスのデスク。ピンクゴールドのノートパソコンと眼鏡。ヘッドフォン。資料の書籍。クッキーのお皿とコーヒーのマグカップ。

新商品の開発が順調に進むなか、企業秘密の漏洩リスクに備えて、「社員がそんなことしたら損害を賠償させることがある」と就業規則に規定しておきたい。危機感をみんなに持ってほしいが法律的にどうなんだろうか・・・(新商品開発プロジェクトマネジャー 談)

 

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リスクマネジメントのため、会社の秘密情報と個人情報を適正に管理する体制づくりは会社の規模を問わず大切なことです。

 

冒頭のお悩みのキモは、社員に自覚を促すべく損害賠償について就業規則で明確化したいが、労基法16条の「賠償予定の禁止」に違反しないか?いうことです。

 

 

そこで今回は、秘密事項を漏洩した場合に損害賠償を求めることは有効なのか、労基法16条との関係について確認していきたいと思います。

労基法16条と損害賠償の関係

ノートパソコンの前に広げられた資料ペーパーとレポート用紙。コーヒーのマグカップ。黒縁眼鏡。

業務命令や就業規則に対する違反行為に、会社が罰金制度を設けて罰金を徴収することは、労基法16条の「賠償予定の禁止」に該当します。

 

ですが、実際に社員の故意、過失による損害が発生したときに損害賠償を求めることはさしつかえないとされています。

 

たとえば、運送会社のドライバーが飲酒運転によって事故を起こし、車両が大破したとして、会社が当人に対して損害賠償を求めることができるのは誰の目にも明らかですよね。

 

つまり、労基法16条の「賠償予定の禁止」では、損害賠償請求を禁止しているのではなくて、損害賠償の「金額」を事前に決めておくことを禁止しています

 

実際に損害が発生してみないと、その損害額はいくらになるかわからないのに、会社が社員に対してべらぼうに高い損害額をあらかじめ提示して合意を強要すると、結果として社員の足止め策になってしまう(退職の自由が拘束される)からです。

社員の責任をどこまで問えるか

ドライフラワーが飾られたデスク。ノートパソコン、本、コーヒーのマグカップ。

前段でお伝えしたように、社員に対する損害賠償請求は禁止されないとしても、実際に社員がどの程度の責任を負うのかは別問題です。

 

結論からお伝えすると、実際の裁判上では、社員の違反事由と賠償金額についてある程度の制限があり、横領などの故意の場合を除いて、全額の賠償が認められるとは限りません

 

業務遂行の過程で社員に故意または重過失(故意と同視できるようなものできわめて悪質な場合)がある場合にのみ責任は認められ、軽過失の場合には認められないのが原則です。

 

また、業務遂行の過程における損害リスクの発生は、会社が予測できるものなので、仕事によって経済的利益を得ている会社が負担すべきだと考えられています。

損害リスクの発生は、そもそも会社側のマネジメント体制の不備、過度な業務命令、不十分な損害拡大防止策といった原因によるものであり、社員よりも会社に責任が大きいとみられるためです。

 

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守秘義務の対象となる秘密の範囲をどの程度にするかは、会社が就業規則で任意に定めることができます。

 

就業規則に明記して、会社のみ負う義務なのではなく、社員にも秘密情報保持の義務を求め、理解してもらうことがリスク回避につながります。

 

また、現場で役に立つ実践的な教育を継続して行うこと、セキュリティシステムのレベルを上げる、など総合的な対策が会社には求められるでしょう。

スマイルマークが描かれたクリームパン、チョコマフィン、ハムのサンドイッチがのったカッティングボード。コーヒーのマグカップ。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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