オンライン研修の自宅学習は労働時間になるか

自宅でオンライン研修中。ノートパソコンのキーボードを操作する手。

社員の能力を効果的に高める方法は、経験から学ばせるとともに、上司からのフィードバックや研修の機会を設けることです。

そこで終身雇用制を前提としていた時代には、経験と教育をセットにした人材育成のプログラムとして、OJTが多くの企業で実施されていました。

 

けれど今は指導する人材の不足といった理由から、実際にはOJTがやりたくてもできない職場もあるようです。

また企業が雇用する人材のなかで、有期雇用者の割合が増えてきています。有期雇用の場合、一般的な無期雇用者と比べると短期間で戦力化する必要があります。とはいえサービス業の店舗のように、メンバーのほとんどがシフト制の有期雇用者という状況で、集合研修を行うことが難しい場合もあるかもしれません。

 

そこで最近は、オンライン学習(eラーニング)を導入する企業も増えてきているようです。

オンライン学習は、全員が同じ時間、同じ場所にいる必要がない個人教育で、研修施設での講義や討議がない自宅学習がメインの学習スタイルです。

 

ではオンライン講座の自宅学習は、労働時間となるのでしょうか。

詳しくみていきましょう。

労働時間の基本的な考え方とは

オフィスの会議室の様子。窓辺に並べられた観葉植物が会議室特有の無機質さを和らげている。

まず、そもそも労働時間とはどのような時間なのか、確認していきましょう。

 

労働時間とは、「社員が会社の指揮下に置かれる時間」と解釈されています。

これは次の5つの拘束(指示命令)を会社から受けて、会社の業務を行っている時間のことです。

 

 

 

 

  5つの拘束要件(会社の指示命令)

  一定の場所的な拘束下にあること

 (どこで業務や作業等を行うか)

 一定の時間的な拘束下にあること

 (何時から何時まで行うか、どのようなスケジュールで行うのか)

 一定の態度や行動上の拘束下にあること

 (どのような態度、秩序、規律等を守って行うのか)

 一定の業務の内容や遂行方法上の拘束下にあること

 (どんな業務をどのような方法・手順でどのようにして行うか)

 一定の労務指揮権に基づく支配や監督的な拘束下にあること

 (上司の監督下で行う必要があるか、自己の自由によるか、それを行わないことでペナルティーを受けたり、

  給料・賞与の評価等で不利益を受けるものか)

(安西愈著「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務」より作成)

この5つの拘束要件をすべて満たすことで、労働時間と判断されます。

オンライン学習の話の入る前に、理解しやすいように、持ち帰り残業で考えてみましょう。

これは労働時間にあたらず、残業代の発生は認められません。5つの拘束要件をすべて満たす時間にはあたらないからです。

(ブログ過去記事「残業禁止命令の効果を高めるには」参照)

 

具体的にみてみると、

  1. 場所的な拘束はなく、自宅でなくてもどこで行ってもOK
  2. 時間的な拘束はなく、深夜にやっても早朝にやってもOK
  3. 一定の態度や行動上の拘束もなく、テレビを見ながらやってもOK
  4. 業務内容や遂行方法上の拘束もなく、どんな手順でやってもOK
  5. 会社の指揮や監督はプライベートの時間まで及ばず、持ち帰り残業をしなければ懲戒処分などの不利益を受けるといったものではない

ということになります。

 

よって、自宅へ仕事を持ち帰って業務を行ったことは間違いありませんが、これに費やした実施時間は労働時間には該当しません。

自宅でのオンライン学習時間はどうなるか

コーヒーカップでお茶しながら、自宅でオンライン研修中の女性。

それでは労働時間の基本的な考え方を踏まえて、自宅でのオンライン学習時間はどうなるのか、先の5つの拘束要件に照らし合わせてみてみましょう。

 

  1. オンライン学習は場所的な拘束がなく、自宅でも通勤前のカフェでも場所を問わずに学習OK
  2. 学習する時間帯は、深夜でも早朝でもOK
  3. ソファに寝そべりながらでも、お酒を飲みながらでもOK
  4.  会社からの指示や監督がない自宅での行為
  5. 「どこからどこまでこのようにやること」との遂行方法の拘束がなく、自由なやり方でOK

 

このように自宅でのオンライン学習も5つの拘束要件をすべて満たす時間にはあたらないので、労働時間には該当しません。

社員の学習意欲を高めるのに必要なのは

観葉植物とミニチュアサイズの黒板。黒板にはチョークでStartの文字が書かれている。

もし「残業代もつかないなら、プライベートの時間にオンライン学習をやりたくない」と言い出す社員がいるのなら、「会社には社員が自分の市場価値を維持していくために手助けする意図がある」と伝えることが大切です。

 

不確実性が高まっている現在では、会社組織としても柔軟に対応していくことが求められるので、新しい仕事のためのスキルを磨こうとしない社員に対して、ポジションを用意するには難しいこともあるかもしれないからです。

ですから会社は、常に社員のスキルや知識をアップデートさせることが必要なのです。

そこでたとえば、

 

  1. 組織の目標や将来的な戦略の方向性に沿って、キャリア計画を立てる必要性があること
  2. そのため会社は最新のスキルや知識を身につけるための支援策として、オンライン学習を用意していること
  3. 自宅学習のための時間的余裕を持てるよう、仕事の負荷を考慮すること

といったことを伝えると、社員の学習へ取り組む姿勢も変わるのではないでしょうか。

また会社には、社員がオンライン学習での学びを活かせる、やりがいのある業務を経験できる機会を設けることも必要になると思います。

 

変化の激しいこれからの時代、社員と力を合わせないで、会社を伸ばすことは難しいでしょう。最新のスキルを学んで仕事の幅を広げる重要性を、オンライン学習を通じて社員に伝えたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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