残業禁止命令の効果を高めるには

デスクの上に、パソコンのキーボード、マウス、手帳、眼鏡、ペン、コーヒーの入ったマグカップ、観葉植物が並べられている。

毎日遅くまで終わらない残業。社員は一生懸命なのかもしれないが、残業代が高くなるのはもちろんのこと、オフィスの光熱水費などを考えると・・・

そして何より連日の残業で、社員の健康がどうにかなってしまわないか心配だ。

 

経費削減の対策として、また社員の健康管理の一環として、たとえば18時になると強制消灯して退社を命じる会社もあります。

残業禁止命令の効果や法律的に問題があるのかどうか、みていきましょう。


一定時刻に社員を退社させることは適法か

時計を指さす男性上司。

労働基準法では「労働時間」とは、休憩時間を除いた実労働時間を指します。この労働時間にあたるがどうかは当事者の主観的な意思によらず、客観的に判断されるものとされています。まとめると労基法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間」のことをいいます。

 

つまり社員は会社の命令に応じて、所定の労働時間に対する労働の義務を負うことになります。ですから社員にこの労働時間を超えて、労働する権利があるわけではありません。

 

よって会社が一定の時刻に消灯して、社員を強制的に退社させることは社員の権利侵害とならず、問題はないと考えられます。


持ち帰り残業は残業代の対象?

ノートパソコンに倒れ込む女性社員。疲労困憊の様子。周りに資料が散乱している。

会社が強制退社させると、やむを得ず社員が「持ち帰り残業」をするケースも考えられます。つまり仕事場が職場から自宅へ移っただけ・・・。

では持ち帰り残業は労働時間にカウントされ、残業代の対象になるのか?

結論としては、持ち帰り残業は労働時間にあたらず、残業代の発生は認められません。

 

持ち帰り残業は自宅で行われるものなので、「会社の指揮命令下にある」とみるのは難しいからです。また会社は強制退社させているのであって、自宅での残業を意図しているわけではないので、残業代を請求できる根拠がありません。

 

無用のトラブルを防ぐため就業規則で「残業禁止命令に従わない社員にはペナルティーを課しますよ」の旨を規定することも考えられるかもしれませんが、大切なのは「なぜ社員は仕事を自宅へ持ち帰ってまで残業しようとするのか?」との視点から、現場の実態をしっかり把握することです。

禁止事項を規定すれば会社の手間は省けるかもしれませんが、社員にとっては「現場のことを何も知らないで、会社はサービス残業をしろと自分たちを縛る」とモチベーションを下げる要因にもなりかねません。

残業禁止のメリットを社員に伝えよう!

いきいきとした表情でパソコンに向かう女性社員。

自宅まで仕事を持ち帰ってしまう理由のひとつに、知識やスキルの不足を時間で補おうとすることがあります。

仕事に関する経験とともに知識やスキルがないために、タスクの優先順位をつけようにも判断がつかない。何がわかって、何がわからないのかも曖昧で、質問力がないために先輩や上司に聞くこともできない。タイムリミットが来たので、仕事を持ち帰るしかない。遅くまでの仕事が翌日の生産性に響く・・・

 

こんな悪循環を断ち切るには、知識やスキルを身につける時間を確保することが必要です。

また多様化する顧客のニーズをつかむには、市場など環境の変化を知る必要があります。遅くまで残業して同じ場所にべったり貼りついていては、変化をとらえる機会もなく、新しいアイデアも生まれそうにありません。

 

社外の人に会って仕事の話を聞いたり、勉強会に参加することで、新しい発想や効率の良いやり方を仕事にフィードバックでき、アウトプットの質や生産性を上げることができます。

役に立つ外部の情報を得る機会と時間を作り出すために、残業禁止命令があるのです。

 

残業禁止命令がもたらすメリットを、就業規則を通じて会社と社員で共有したいですね!

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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