
もうすぐ新商品開発プロジェクトが始動するが、リーダーから相談があった。「メンバーの誰が辞めても新商品の開発は頓挫するので、プロジェクト終了まで辞めないよう契約なんかできませんか?」・・・プロジェクト終了まで退職しちゃダメと会社が拘束できるものなのかな?
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新商品開発プロジェクトのため、社内で選抜チームが編成されました。プロジェクトメンバーは正社員ばかりですが、プロジェクト期間である3年間は退職させないようにしてほしい、とプロジェクトリーダーから相談を受け、対応に戸惑う人事担当者さんです。
プロジェクトが終了するまでの3年間は退職しないとの特約を、会社が社員との間で結ぶことはできるのでしょうか。
そこで今回は、プロジェクト終了まで社員を退職させない問題について、詳しく確認していきたいと思います。
正社員の労働契約

日本の雇用形態は、終身雇用制(期間の定めのない労働契約)と期間雇用制(有期労働契約)に大別されます。終身雇用制による雇用は、「正社員」とよばれ、募集・採用選考から定年に至るまで一貫したキャリア形成が構築される、長期雇用の仕組みとなっています。
そのため民法627条では、期間の定めのない労働契約においては、会社と社員の双方ともいつでも解約の申入れができ、解約の申入れから2週間経過すれば効力が発生することになっています。
これによると会社が行う解約の申入れ(解雇予告)は2週間前までに行えばよいことになりますが、労基法20条ではこの点に修正を加え、会社側による解雇予告は30日までに行わなければならないとしています。よって実務上は、会社側による解雇予告は民法の定めではなく、労基法の定めによることになります。
一方、期間の定めのない労働契約において、社員はいつでも退職を申し出ることができます。先にお伝えしたように、民法627条では退職を申し出た後2週間以上経過すれば、労働契約は解除されるとしています。会社の「承認」や「許可」は要件とされていません。
プロジェクト終了まで3年間退職させない特約はアリ?

では、プロジェクトが終了するまでの3年間は退職しないとの特約を、会社が正社員との間で結ぶことはできるのでしょうか。
労基法5条では、「会社は暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、社員の意思に反して労働を強制してはダメ」との旨が定められています。これは、暴行、脅迫によって労働を強制するという、昔にあった封建的な悪習を排除するために、憲法18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)を踏まえたものです。
「精神または身体の自由を不当に拘束する手段」には、長期労働契約、労働契約不履行に関する賠償額予定契約、前借金相殺、強制貯金等が該当します。
また「労働を強制」というのは、必ずしも社員が現実に「労働」することは必要でなく、意思を抑圧して労働することを強要したものであれば、労基法5条(強制労働の禁止)に違反することになります。
以上をまとめると、いつでも退職を申し出ることができる正社員(期間の定めのない労働契約)について、プロジェクトが終了するまでの3年間は退職しないとの特約を締結することは、強制労働と解釈されることもあり得るということです。よって、そのような契約を結ぶことはできません。
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「退職の申出は退職予定日の1か月前までに」といった旨を就業規則に定めるケースは多いと思います。
期間の定めのない労働契約においては、たとえ就業規則で1か月前までの申出を定めても、本人の退職の意思が固ければ、2週間経過後に労働契約は終了します。
就業規則で1か月前までの申出を定めてもムダなのかというとそうではなく、その趣旨は、むしろ急な退職の申出を抑制する点にあります。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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