
うちの会社では、家族がいれば一律1万円の家族手当が支給されている。そして、割増賃金の算定基礎に家族手当も含まれている。・・・家族手当って、割増賃金の算定基礎に入れなくていいんじゃないの?私たちにはラッキーだけど、会社にしたら損じゃないのかな?
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人事部に異動してきたばかりの給与計算担当者さんが、割増賃金の計算に戸惑っています。
割増賃金、いわゆる残業代の計算で問題なのは、(割増賃金計算の)基礎に算入される賃金と除外される賃金です。というのも、残業代の単価が変わってくるからです。
労基法では、割増賃金の基礎から除外される賃金の種類が限定されている(限定列挙)ので、それ以外の賃金は必ず計算に含めなければなりませんが、誤解も多く見受けられます。
そこで今回は、多くの企業で導入されている家族手当と残業代計算の関係について、詳しく確認していきたいと思います。
残業代の計算に含めるべき賃金とは

いわゆる残業代の計算に含めるべき賃金について、労基法では「これらの賃金だけは割増賃金(残業代)の基礎に算入しなくていいですよ」と、除外される賃金を限定列挙しています。
つまり、下記の7種の賃金のみが除外される賃金であり、ここに列挙したもの以外は全部、残業代の計算に含めなければなりません。
たとえ「残業代の計算に含めないことに社員の同意をもらっている」としても、会社と社員の間で自由に決定できるものではありません。
【残業代の計算から除外される賃金】※限定列挙(これ以外は計算に含める)
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(平成11.10.1より)
- 臨時の賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
※子女教育手当は、特定の層の子どもについての支援を重点的に行うために支給するものです(大学生の子どもへの支援を充実させるため、など)。
※臨時の賃金は、臨時で偶発的な事由にもとづいて支払われるものをいいます。
家族手当といってもケースバイケース

家族手当は、「残業代の計算から除外される賃金」として限定列挙される手当のうちのひとつですが、「家族手当」という名称であれば、そのすべてが除外できるというわけではなく、名称によらず実質によって取り扱うことになっています。
つまり、家族手当の支給基準、支払い方法によっては、下記のように除外できるケースとできないケースがあるということです。
【残業代の計算から除外できるケース】
ポイント:扶養家族の人数やこれを基礎とする金額を算出した手当であること
- 例1:扶養している配偶者には1万円、子については5千円を支給する
- 例2:扶養家族が2人の場合には1万円、3人以上の場合には2万円を支給する
【残業代の計算から除外できないケース】
ポイント:扶養家族の人数に関わらず一律に支給される手当ではダメ
- 例1:扶養家族がいれば、その人数に関係なく一律3万円を支給する(←冒頭の例はこのケースに該当)
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給与体系の見直しで、諸手当の統廃合を行うこともあるかと思います。
その際に「残業代の計算から除外される賃金」を廃止して、基本給に組み入れたりする場合、残業代単価(割増賃金単価)が上昇することは、人材マネジメント上注意しておきたいポイントといえます。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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