残ってほしい人には早期退職優遇制度を認めなくていいの?

パソコンのキーボード、マウス、スマートフォンがデスクに並んでいる。紅茶の入ったカップ&ソーサ。デスクの傍らにガーベラやバラの春の花たち。

40代後半以降の中高齢層を対象に、転職・独立開業サポートを組み合わせた早期退職優遇制度を設けようという話になった。とはいえ、残ってほしい人が退職してしまうという事態は避けたい。制度の適用は会社が承認した人だけ、と限定してはダメなのかな?

 

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社員のセカンドキャリア支援のため、早期退職優遇制度を検討する人事担当者さんです。社員の高齢化が進む中、会社としては管理職のスリム化という意味合いもあります。

 

制度の適用を会社の承認によるものにすると、社員に不利益を与えることになるのか?と考え込んでいます。

 

そこで今回は、早期退職優遇制度の適用に会社の承認という要件を設けてもいいのか、詳しく確認していきたいと思います。

早期退職優遇制度とは

パソコンのキーボードと電卓がテーブルに並んでいる。傍らにチューリップの花。

早期退職優遇制度は、通常の退職より有利な条件を提示して、一定年齢以上の社員に対して定年前より早期の雇用契約の合意解約の申込みを「お誘い」するものです。

 

制度の主な目的は、中高齢者の自発的退職のバックアップであり、早期退職優遇制度に転職・独立開業支援制度を合わせて中高齢層のセカンドキャリアをサポートする企業も多くみられます。

 

早期退職にあたってどのような優遇条件をつけるのかというと、具体的には、(早期退職は自己都合退職であるが)会社都合扱いの退職金を適用する、退職金に特別加算金を付けるといった方法がとられています。

 

このように、従前の労働条件を不利益に変更するものではないので、誰を対象とするのか、どのような条件を提示するかについては、その内容が法律や労働協約等による制限、公序良俗に反するものでない限り、原則として会社の広い裁量に委ねられることになります。

 

では、残ってほしい有能な人材が退職してしまうという事態を避けるために、早期退職優遇制度の適用を会社の承認によることにしても問題はないのでしょうか。

制度の適用に会社の承認という要件を設けてもいいの

パソコンのキーボードとイヤフォン。傍らにマトリカリアが飾られている。マグカップ。

制度を適用するか否かを会社の承認によるものにすると、会社が承認しない場合、社員はそのまま会社にとどまり働くか(雇用関係の維持)、優遇条件の適用を受けずに退職するかを選択するしかありません。

 

ですがそれは、単に会社と社員の希望が合わないため、退職しても特別の利益を得ることができないというだけです。雇用契約を継続する場合、社員に何らの不利益を強いるものではありません。

 

そのため、社員の制度適用の申請に対して会社による承認が要件とされていたり、一定の場合(ライバル会社へ転職する、傷病等で勤務継続ができなくなり退職する、懲戒解雇事由に該当するなど適用が不適当である、といった場合)には適用除外となるものが多く見受けられます。

 

繰り返しになりますが、早期退職優遇制度の主な目的は、転職や独立開業をサポートするため(そして特別の加算金を支給すること)だからです。

 

まとめると、制度の適用に会社の承認という要件を設定することは、公序良俗に反しませんし、また会社に必ず承認しなければならないという義務もありません

 

早期退職優遇制度の申請は、社員にとって「定年前より早期の退職」という重要な意思決定を伴うものなので、恣意的な運用は許されるべきではありませんが、会社に必要不可欠な人材を確保する場合に、承認を拒否することはこれにあたりません

 

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「早期退職優遇制度+転職・独立開業支援制度=中高齢社員のセカンドキャリア支援」ということは、本文でお伝えした通りです。

 

転職・独立開業支援制度では、情報提供、転職先(または取引先)の紹介、資金的な援助、転職・独立開業の準備のための特別休暇の付与などの方法がとられることになります。

 

企業規模が多くなるほど、セカンドキャリア支援でとくに重視されるのは特別休暇の付与とされています(セカンドキャリアに必要なスキル知識を習得するための研修受講、独立開業の準備をする者に特別休暇を付与する、など)。

いちごと生クリームがたっぷりのったパンケーキのお皿。カップ&ソーサ。ナイフとフォーク。ギンガムチェックのナプキン。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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