
世間では働き手の高齢化が進んでいると聞くが、うちも同じだ。疾病の有病率は年齢が上がるほど高くなるが、うちの休職制度では復職するには治ゆすることが前提で、入退院を繰り返したり、病気と長く付き合っていくため通院が必要なケースなどに対応しきれていない。会社として早く対応を考えないと・・・
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職場の高齢化に伴って、様々な健康問題に対応しなければならないので頭を悩ます人事担当者さん。治療と仕事の両立への対応が必要な場面は、ますます増えることが予想されるからです。
重大な治療を伴う疾患については、メンタルヘルス不全を前提とした休職期間(3~6か月)では対応しきれない可能性があります。このような問題に対して「年休の積立制度」を運用するのもひとつの方法です。
そこで今回は、年休の積立制度の概要とともに、治療と仕事の両立に会社はどう対応するべきなのか、詳しく確認していきたいと思います。
年休の積立制度とは

年休の積立制度は、2年間で時効消滅する法定の年次有給休暇の残日数を、一定日数(通常は30~60日)に達するまで積み立てることを認める制度です。下記のような一定の事由のある場合に限定して、これを取得できるという運用となります。あくまでも消滅した年休の救済が制度の趣旨なので、使用目的以外の自由使用を認めるものではありません。
- 本人の疾病による長期療養
- 長期にわたる家族の介護
- 育児休業の延長
- 自己啓発(国内外の留学、資格取得など)
- その他の会社が認めた場合(転職支援など)
企業の自由任意の制度であり、これを認めるかどうかは就業規則に定めることになります。当然のことながら、年休の積立制度があるからといって、時効の有効期間中の年休取得を制限することはできません。
積立の対象となる年休は、法定の年休日数とする場合が多いですが、会社で法定を上回って付与している年休日数を対象に加えても問題ありません。
会社に求められる人材マネジメント上の配慮

現代では診断技術や治療方法が進歩し、かつては「不治の病」とされていた疾病も生存率が上がり、「長く付き合う病気」に変わってきています。社員が病気になったからといって、すぐに離職しなければならないという場合ばかりではなくなってきました。
ですが、入院期間は短くはありませんし、自宅療養など継続的な治療を要することもあるでしょう。もちろん会社には、人材マネジメント上の配慮が求められることになります。
「当社は休職制度があって入院や自宅療養にも対応できる\(^o^)/」と思われる人事担当者の方もいらっしゃるでしょう。
ただ、最近メンタル不調の社員が増えていることから、休職制度がメンタルヘルス不全のケース向けになっている可能性もあるので注意が必要です。というのも、重大な治療を伴う疾患については、メンタルヘルス不全を前提とした休職期間(3~6か月)ではカバーしきれないこともあるからです。
そこで前段でお伝えした、年休の積立制度を活用して「治療休暇制度」として、通院治療のために休暇が取得できるようにするのはひとつの方法です。病気になっても働き続けることができる、というのは社員にとって(特に高齢化が進む職場では)安心感を持てる制度だと思います。
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「年休の積立制度で積立できる日数がなんで“通常は30~60日”なの?積立できる日数を青天井にするとマズいの?」
年休の積立制度は、あくまでも時効で消滅した日数を対象とするものです。
消滅した日数のうち一定の日数に限定しての救済であるとともに、会社の管理負担や職場の業務調整の必要性から、一般的に30~60日というのが実務において現実的であるといえます。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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