会社はパート社員からの無期転換の申込を断ることができるの?

ページが開かれた洋書の周りを囲むように置かれたシャクヤクの花。コーヒーの入ったカップ&ソーサ。

「もうすぐ6年目になるパート社員がいますが、無期転換の申込があっても断れますか?

 

該当するパート社員さんはここ1年ほど体調を崩しがちなので、無期転換後の仕事内容に耐えられるのかな・・・と心配している店長さんです。(この会社では無期転換後に職務内容と労働条件の変更があるようです)

 

有期労働契約が会社との間に継続して、通算した期間が5年を超えた6年目に無期転換申込権が発生しますから、会社としては差し迫った問題です。

 

健康状態を優先してもらうためにも、法律的に無期転換の申込を拒否できるのかについて把握しておきたいというのはよくわかります。

そこで今回は、6年目のパート社員から無期転換の申込があったときに受理しないことができるのか、詳しく確認していきたいと思います。

無期転換申込の不受理はできるのか

オフィスのテーブルに置かれたテイクアウトコーヒーの紙コップ。

無期転換申込権をもつパート社員からの無期転換の申込の意思表示が、会社側に到達すると、その時点で会社は期間の定めのない労働契約の申込の意思表示を承諾したものとして、法律でみなされます

 

よってその時に、就労日を現に締結している労働契約の期間満了日の翌日とする労働契約が成立することになります。

 

そのためパート社員からこの申込があると会社側に不承認とする余地はないように思われますが、適正な要件の審査権は会社側にあります

 

通算継続期間の内容やクーリング期間の有無といった無期転換の要件について、会社側が精査するとともに、その申込が適切になされているかを確認することは当然許されます。

 

その結果、会社が無期転換の申込を単なる意思表示の到達ではなく、「法律効果が伴う意思表示」として権限ある者が受け取るという「受理行為」となります。

 

もし要件を欠いていたとしたら「不受理」ということはあり得ますが、その不受理が正当でないときは、パート社員からの申込の意思表示が到達したときに、新たな無期労働契約は成立したことになります

無期転換申込を認めないのは解雇と同じ

資料のファイルを広げたオフィスのデスク。リングメモの上にスマートフォンとボールペン。コーヒーの入ったマグカップ。ペン立て。ノートパソコンに向かう女性。

前段でお伝えしたように、会社側が無期転換申込の意思表示を受理したときには、会社には「OK/NO」の意思表示を行う余地はなく、(法律上の効果として)申込を承諾したものとみなされます。

 

無期労働契約はその時点で成立したことになりますから、会社としてパート社員の無期転換を認めないという事由(その社員の健康状態が無期転換後の就労に耐えられないから、など)があるなら、新たな意思表示をもって、いったん成立したその労働契約を解約する必要があります

 

よって解雇となりますから、注意が必要です。その解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は社員をやめさせることはできない(労契法第16条)からです。

 

また、現に契約している有期労働契約の契約期間が満了する日前に、会社がその有期労働契約の社員との契約関係を終了させようとする場合は、これに加えて、労契法17条1項(※)の適用があることになります。

 

(※)会社は期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間に社員を解雇することができない。つまり、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような、特別に重大な事由がなければダメということ。

 

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無期転換する前と後で、仕事内容が同一なのに従前より過重な労働条件(転勤がある、長時間の残業がある、など)を課することは、法律上の趣旨(←パート、契約社員の人にも安心して長く勤められる環境を整備すること)に反するので望ましくありません(通達あり)。

 

ですが、仕事内容を変更すればそれに応じた労働条件に変更することは可能です。就業規則にその旨を規定しておく必要がありますから、該当するパート社員や契約社員の方たちに誤解を与えることのないよう対応しておきたいですね。

コーヒーの入ったカップ&ソーサ。イチゴが盛り付けられた器。スズランの花。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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