健康診断を拒否するパート社員に会社はどうする?

手提げの紙袋から飛び出した野菜たち。キャベツ、玉ねぎ、唐辛子、ニンニク、りんご、ミニトマトなど。

「パート社員にも健康診断を受けてほしいが、今まで対象外だったのになんで受けないといけないのか、と拒否する人もいてどう対応すればいいのか・・・」

 

社員の健康管理ができていなくて、仮に労災でも発生したら大変です。

 

会社には安全配慮義務がありますが、これを怠ったため労災が発生すると、労災保険だけでなく民法上の損害賠償義務が生じます

 

そのため会社の方針として健康診断の対象を全社員にしたものの、受診したがらないパート社員に対して、法律上では受診の対象ではないのに受診を義務づけてもいいのだろうか?と悩んでしまう人事担当者さんなのでした。

 

そこで今回は、健康診断を受けたがらないパート社員への会社の対応について、詳しく確認していきたいと思います。

パートは健康診断の対象になるの?

積み重ねられたパンケーキの山にたっぷりのメイプルシロップ、ベリー、ナッツがトッピングされている。健康的?

まず健康診断とは、会社と社員の両方に義務づけられたものです。会社には社員に健康診断を受けさせる義務があり、社員には自己保健義務(自分自身で健康を保つ)による受診義務があります。

 

法律上の根拠としては、「使用者に対する労働者への健康診断実施義務(安衛法)」と「労働者の協力義務ないし受診義務(安衛法)」の規定にあります。

 

パート社員については、次の①、②の両方を満たす場合には健康診断の実施が必要とされています。

  1. 1年以上の長さで雇用契約をしているか、または、雇用期間を全く定めていないか、あるいは既に1年以上引き続いて雇用した実績があること
  2. 1週間あたりの労働時間数が通常の社員の4分の3以上であること。

※②にあたらない場合でも、①に該当し、同種の業務にあたる社員の1週間の所定労働時間の約2分の1以上の労働時間数がある者に対しても、健康診断を実施することが望ましいとされています。

「健康診断は会社と社員の両方に義務づけられたものなのに、健康診断が必要な社員とそうでない社員に分けられているの?」と意外に思われた方もいらっしゃるかもしれません。

 

すべての社員を健康診断の対象にすると、日雇いバイトなど臨時の働き手にまで実施しなければなりませんが、それは現実的ではありません。そのため、会社に対して健康診断を実施する義務が免除されているだけなので、パート社員も含めて全員に健康診断の受診を義務づけることには問題はありません。

実務上の注意点

ボリュームのあるハンバーガー。コーラの瓶。フライドポテト。健康的?

すべての社員に対して健康診断の受診を義務づけるにあたって、就業規則に「社員は日頃から健康の保持増進に努めること」「会社が実施する健康診断は必ず受診すること」「体調不良を感じた時には進んで医師の診療を受けること」など、自己保健義務を規定することが大切です。

社員の自覚を促し、健康管理への意識を高めてもらう効果もあります。

 

健康診断にかかる費用については、法律で会社に健康診断の実施の義務を課している以上、当然に会社が負担すべきものとされています(行政通達による)。

 

会社と社員の双方の協力で健康診断が実施されるため、要した時間について、所定労働時間中に実施された場合はそのまま労働時間となり、終業時刻後の所定時間外に実際された場合はそのまま労働時間にならないという、折半的な処理となります。

 

行政通達においても、健康診断は会社と社員が協力して実施されるものとして、次の旨が示されています。

  • 健康診断は業務遂行と関連して行われるものではない
  • よって受診時間は当然会社が負担するものではなく、会社と社員で話し合って決めるもの
  • ただし社員の健康は仕事に欠かせないものなので、受診時間の賃金を会社が支払うのが望ましい

冒頭の例でいうと、すべての社員に対して受診を義務づける以上、労働時間として処理することが適切だと考えられます。

 

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冒頭の例でパート社員が健康診断の受診にネガティブな態度をみせるのは、お金面の疑問や不安(健康診断の費用は自分持ちになるの?受診時間は給与からマイナスされるの?)があるからかもしれません。

 

疑問点にもきちんと答えて、みんなで健康管理に前向きに取り組みたいですね。

手提げの紙袋に入った野菜たち。ねぎ、にんじん、パプリカ、ズッキーニ、大根など。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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