「正社員の〇〇さんと仕事内容はほとんど変わらないのに、給料に差があったりボーナスがないのはおかしい、とパートから不満を漏れ聞いて困っています」
・・・パートと正社員が同じ職場でごっちゃになって働いていて、同じような仕事をしていたら賃金面も同等にしないとだめなのだろうか、「同一労働同一賃金」というし・・・
このように「同一労働同一賃金」という言葉をめぐって、お悩みを抱える経営者、人事担当者の方は少なからずいらっしゃるようです。
法律で定める意味としては(ごく簡単にいうと)「パートと正社員の待遇に不合理な差をつけてはダメ」ということで、すぐさま「同じ仕事=同じ給料」といっているのではありません。
そこで今回は「いわゆる同一労働同一賃金」をめぐる問題について、詳しく確認していきたいと思います。
いわゆる同一労働同一賃金とは
異なる雇用区分(たとえばパートと正社員)といえども、不合理な待遇の違いを設けてはダメだと、これまではパートタイマーについてはパートタイム労働法8条、契約社員については労働契約法20条に規定されていました。
働き方改革関連法により、それまで別々の法律条項であったのが統合され、取扱いが1つに条文化されました。
同じ会社に雇用されるパート・有期労働者と通常の社員(正社員)との間の待遇について「不合理と認められる相違を設けてはならない」という取扱いを「いわゆる同一労働同一賃金」(日本型同一労働同一賃金)と一般的に呼んでいます。
「異なる雇用区分といえども不合理な待遇の違いを設けてはダメ」ということを、日本型同一労働同一賃金の世界では「均衡待遇」といいます。日本型同一労働同一賃金の指標には、均衡待遇のほかに「均等待遇」といわれるものがあります。
これらの内容を簡単にまとめると、下記のようになります。
- 均等待遇・・・雇用関係が終了するまでの全期間において、職務内容や責任の程度、配置等の変更の範囲が同じ場合には、パート・契約社員であることを理由に、基本給、賞与その他の待遇それぞれについて、差別的取り扱いをしてはダメ(同じ待遇にしなくてはならない)
- 均衡待遇・・・異なる雇用区分といえども不合理な待遇の違いを設けてはダメ(職務内容や責任の程度、配置等の変更の範囲、その他の事情の違いに応じた範囲内でバランスのとれた待遇にしなくてはならない)
均等待遇について気をつけるべき点
前段でお伝えした均等待遇について、気になるのが「雇用関係が終了するまでの全期間」というのは、いつから起算するのか?という点です。
たとえば、パート社員が入社当初は正社員のサポート業務をしていた場合、正社員とは職務内容が異なります。
では「全期間を通じて職務内容が同一」ということにはならないのでノープロブレム・・・ということでいいのでしょうか?
このことについて、通達では以下の旨が示されています。
- 「雇用関係が終了するまでの全期間」とは、パート社員が正社員と職務内容が同一となり、かつ職務内容と人材活用の仕組みが正社員と同一となってから雇用関係が終了するまでの間のこと
- つまり、入社後に上記の要件を満たすまでの間に正社員と職務内容が異なり、人材活用の仕組みが正社員と異なっていた期間があっても、その期間まで「全期間」に含めるものではなく、同一となった時点から将来に向かって判断する
仕事するうえでのパート社員と正社員の役割が異なり、職務内容等の違いを客観的に説明できる場合、「均等待遇」についての問題は生じないと思います。
ですが、当初は違ったけれど途中からパート社員の職務内容等が正社員と同じになったのに、待遇は依然としてパート社員のまま・・・というケースには注意が必要です。
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雇用区分(職種、資格、雇用形態、就業形態などの区分。社員区分と言ったりも)の呼称や定義をどのようにするかは、会社の自由です。
ですが、職務内容等で客観的に説明ができないような雇用区分は見直すことをお勧めします。職場におけるそれぞれの雇用区分の職務内容等を今一度チェックしておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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