休職していたAさんが10月から復職することになった。今年度の残り6か月でAさんにも5日以上の年休を確実に取得してもらわなければならない。とはいえ、年末年始休暇もあるし、2月はもともと営業日が少ないし・・・大丈夫だろうか?
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会社には、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させることが義務付けられています。
そのため、上司としては年度途中で復職したAさんの年休取得が心配で、「年末年始休暇が5日付与義務にカウントされるならひとまず安心なのに・・・」とひやひやしています。
そこで今回は、年度途中で復職した社員の年休の取扱いと、年末年始休暇をはじめ特別休暇が年休の5日付与義務にカウントされるのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
社員が年度途中で復職した場合の取扱いは
Aさんのように休職や、長期欠勤だった社員が年度途中で復職した場合、会社に課せられた年休の5日付与義務はどうなるのでしょうか?
「年度の残りの勤務日数で、付与義務の5日間が按分割りされませんか?」とのご相談をいただくこともありますが(たとえば育休から復帰した社員の扱いなど)、答えはノーです。
この場合も、5日間の年休を取得させなければなりません。
ただし、残りの期間における営業日が、その社員に取得させないといけない年休の残日数より少なく、5日の年休を取得させることが不可能な場合には、その限りではないとされています。
↑「ただし~」以降の内容を例示すると下記のようになります。
【例】
- 休職していたBさんが復帰することに。今年度すでに1日の年休を取得済み(会社として今年度あと4日の年休を取得させなければならない)。
- Bさんの復職日を含めて、今年度の残りの営業日は3日間。
- よって、物理的に5日間の年休取得は不可能となるので「その限りではない」。
特別休暇は年休の5日付与義務にカウントされるの?
通達では「法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(法定の年次有給休暇日数を上乗せして付与されるものを除く)を取得した日数分については5日付与義務にカウントされない」との旨が示されています。
「会社としては特別休暇よりも年休を取得させないといけないから、いっそのこと特別休暇を廃止してしまおうか?」
このように思われるかもしれませんが、これについて次のような内容が通達されています。
- 法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇を、5日付与義務が定められた法改正をきっかけに廃止して年次有給休暇に振り替えることは法改正の趣旨に合っていない
- 社員の合意なしに、就業規則の変更によって特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が社員にとって不利益な場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要がある
以上の通達の内容をまとめると、特別な成立要件や趣旨、目的があって通常の年休の趣旨(心身の休息で仕事への英気を養う)と異なる特別休暇は、5日付与義務にカウントするのは不適当といえます。たとえば、慶弔休暇、永年勤続休暇、ボランティア休暇などが挙げられます。
一方、法定年休と同じような趣旨・目的のものは、5日付与義務にカウントしてもよいといえます。たとえば、お盆の時期の夏季休暇、年末年始休暇、リフレッシュ休暇、地域のお祭り休暇などが挙げられます。
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会社が年休の5日付与義務を果たさなければ、罰則の対象となり得ます。
記事の本文で5日付与義務に含めるのが不適当とされる特別休暇についてお伝えしましたが、厳密にいえば会社が有給で他に休暇を与えていて、それを含めば5日以上付与している場合には、刑事上の処罰を科すに足りる違法性はないといえるでしょう。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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