「来週の金曜日は計画年休日なのに、欠勤が多いBさんには年休がもうないらしい。Bさんだけ出勤させるのもビミョーだしなあ・・・」
年休の「計画的付与」とは、社員のプライベートな事情で自由に取得できるよう一定の日数を保持しながら、これを超える日数については、会社と社員の間での労使協定によって計画的付与を認めることにしたものです。
年休の計画的付与制度を実施する場合に問題なのは、計画年休の日数分の年休がない社員がいる場合にどうするかです。
その社員の年休日数を増やせば簡単なのもしれませんが、職場のなかでちょっとした不公平感が漂うのもまた事実・・・
そこで今回は、計画年休にあてる年休日数のない社員に会社はどのように対応するべきなのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
年休日数が足りない社員にまつわる問題
計画年休を労使協定により実施する場合、それにあてる年休日数を持っていない社員への対応について、通達では次のような旨が示されています。
- 年休日数が足りない、あるいはない社員を含めて年休を計画的に付与する場合には、付与日数を増やすなどの措置が必要である
そこで、計画年休にあてる年休のない社員や足りない社員がいる場合、その者に年休日数を増やすことはひとつの方法です。
とはいえ、これは前年度に欠勤して出勤率80%に満たない者や、入社してから日の浅い者にも計画年休を充たす程度の年休日数を追加して付与することになります。
人材マネジメント上不公平を招くことになるので、一般的に企業では受け入れがたいのではないでしょうか。
ただ、職場全体を一斉に休ませる場合(計画年休の一斉付与)、年休のない社員を休業させると、その者に休業手当を支払わなければ労基法違反となる旨も通達されています。会社に負担があるため、計画年休の一斉付与にかかる労使協定が結ばれないこともあるかもしれません。
実務的にどうするか?
そもそも年休の計画的付与制度は、年休の取得率をアップさせるという合理的な目的を果たすためのものです。
それなのに、計画年休に充当する年休日数が足りない社員に休業手当を支給するとか、年休を特別にプラスして与えるとか、はたまたその社員だけ出勤させるとかしないといけないというのはナンセンスです。
そこでポイントなるのが、通達によって示された次のような内容です。
- 労働協約、就業規則または労働契約により休日と認められている日については、休業手当を支給する義務は生じない
つまり、計画年休日に年休日数のない社員を休ませるのに、休業とするのでなく、上記の内容を就業規則などに規定することで、年休のない者について事前に休日(振替休日、特別休日など)と定めれば休業手当は不要となります。
年休日数があり強制的に計画年休日に充当される社員と、欠勤が多いなどの理由から年休のない者とのバランスがとれることになるでしょう。
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「計画年休日が休日扱いになって、時給で働くパート社員は不公平じゃないの?」
たしかに、当日が休みになって賃金請求権を失うことにはなりますが、就業規則などで年休のない社員については計画年休日を労働義務のない休日とすることは、計画年休の実施に伴う労働条件の変更(休日の増加)として合理的な理由があるので有効だと考えられています。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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