30分の遅刻を時間休でチャラにしたい社員にどう対応する?

パソコンのキーボード。リングノートとメモパッド、ボールペン。ヘッドフォン。マカロンのお皿とミルクティーのカップ。ピンク色のバラの花。

「遅刻常習犯の社員が、つい先日も30分遅刻してきました。1時間の年休(時間休)を取得して遅刻と差し引きゼロにしてほしい、と言ってきましたが、会社として聞き入れないといけませんか?」

 

あまりに遅刻が度重なるとボーナスの査定に響くから・・・というのが、どうやら社員のホンネのようです。

 

とはいえ上司や人事担当者としては、遅刻をあとで年休に振り替えることが適法なのか、という点をまずは押さえておきたいところでしょうし、また周囲に与える影響(モラルハザードが生じるなど)も気がかりではないでしょうか。

 

そこで今回は、遅刻を年休でチャラにしたい(年休充当したい)社員への会社の対応について、詳しく確認していきたいと思います。

年休について法律的なおハナシ

ピンク色のポラロイドカメラ。休みの日。

そもそも年休制度の目的は、休日のほかに毎年ある一定日数の有給の休みを与えることによって、社員の心身の疲れを回復させて、「また明日から頑張って働こう!」というモチベーションの維持を図ることです。

 

よって、遅刻をしたあとでそれを帳消しにするために、年休を充当することは本来の目的に沿わないといえます。(そのため、年休の買い上げが禁止されています。)

 

言い換えると、年休制度は「実際に休暇を与えること」が目的になっています。とはいえ、年休自体はその利用目的を問わないものです。現実に会社を休んだ場合、それが事前に「年休を取ります」と言っていれば当然認められるものですから、たとえ欠勤(事前に年休申請していない)であったとしても、「事後に年休の充当を会社が認めた=違法」とはなりません

 

ですが、この年休充当はあくまでも事後処理的に行われるものなのであって、社員は当然の権利として「欠勤を年休充当したい」と請求できるわけではありません。このような事後の充当を認めるかどうかは会社の判断によります(会社の自由だということです)。

遅刻を年休でチャラにできるか

白のキルティングのチェーンバッグとスマートウォッチ。遅刻。

前段でお伝えしたように、事後の年休充当は会社の任意によるものなので、この点について明確にしておくことが「あとで年休を振り替えるのは社員の権利でしょ?」といった社員の誤解を防ぐポイントです。

もし、病気欠勤した場合に年休への事後の振替が職場で制度化されているのなら、就業規則にその旨を規定しておく必要があります。

 

そこで、日単位の年休を欠勤や病欠への充当を認めることにしている企業では、時間休(時間単位年休)を遅刻に充当しないといけないのか?という問題が浮上します。欠勤や病欠でまるまる1日分の年休充当を行う場合と、遅刻で当日の勤務時間の一部への充当を行う場合では、取扱いが異なりますから注意が必要です。

 

というのも、時間単位年休の取得単位である「時間」とは、整数の時間数のことをいうので、1時間に満たないものは含まれないからです(←「1.5時間」などはダメ。この場合は「2時間」に切り上げる)。そのため30分の遅刻でも1時間単位で年休を充当しなければ、適法な年休取得とはなりません。

 

「じゃあ、30分の遅刻で1時間の時間休を取得させれば問題なくない?」

このように思われた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、30分遅刻した社員が1時間の時間休を取得して、そのままその後の30分を就労するというのは「時間休を取得して就労義務を免除された社員が就労する」という矛盾した状況を作り出してしまいます

 

「遅刻しても時間休をとればいい(時間休があるかぎり遅刻していい)」

「30分遅刻したのは自分が悪いけど、残りの30分の年休を損している」

「遅刻してきたのに時間休とってチャラなんて、真面目にやっている自分が馬鹿らしい」

 

・・・といったように、職場のメンバーによくない影響がもたらされる(倫理感の欠如、職場の規律が乱れる)ことは想像に難くありません。

そのため、「遅刻を年休でチャラにしたい(年休充当したい)」という申出があったとしても、会社としては認めなくても問題ありません。

 

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時間単位年休で1時間に満たない時間数は、時間単位に切り上げる必要があることは、先にお伝えした通りですが、それでは就業時間が1日7時間30分の職場においては「時間単位年休の1日の時間数」はいくらになるでしょうか?

 

正解は「1日の時間数を8時間とする」です。間違いやすいポイントですので、念のため確認してみてくださいね。

オフィスのテーブルに飾られたバラとカスミソウのアレンジメント。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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