「取引先から緊急の要請があったときに担当者が休みだったら、会社に呼び出しても問題ありませんか?」
昭和の時代なら「そんなん企業戦士として当たり前や!!」と片付く案件だったかもしれませんが、令和の時代ではコンプライアンスやモラルの意識が高まり、対応に悩まれることも多いようです。
問題は、すでに年休日が開始している(午前0時以降)のに、社員を呼び出したい案件(年休の取り消し事由)が発生した点です。
その日になって、すでに年休日としてスタートしているのに一方的に取り消すことは労基法違反となるからですが、取引先の期待にも応えたい・・・どうすれば・・・(一一")
そこで今回は、突発的な案件が発生した場合の年休取り消しの問題に会社としてどのように対応すべきなのか詳しく確認していきたいと思います。
年休日の取り消しは社員の同意がポイント
すでに年休日の当日が始まっている午前0時以降は、労働義務がない日(社員は仕事から解放され自由に過ごしてよい日)として成立しています。
そんな日に、たとえ重要な顧客からの緊急要請(社員の年休を取り消したい事由)が発生したからといって、一方的に年休を取り消して、社員に出勤を命じることはできないと解釈されています。
なぜなら、年休日としてその日はすでに進行しているので、これを一方的に取り消すことは当日の年休を与えなかったことになり、労基法違反になるからです。
ただし、年休日として当日が刻々と進行しているなかであっても、社員本人の同意さえ得ることができれば、当日の年休を合意のもと解除して、出勤を命じても問題ないとされています。
では、会社から年休日の当日になって「緊急事案のため出勤してもらいたい」との要請があった場合、社員としては必ずこれに応じなければならないのでしょうか。
会社の呼び出しに必ず応じないとダメか
休み中の社員を呼び出す理由(出勤要請事由)と年休制度の趣旨(仕事からの解放で心身を休ませる)を両てんびんにかけます。
そこで、どうみても会社からの呼び出しを断ることが社員としては権利の濫用にあたると考えられる場合には、社員に出勤要請に応じる義務が発生することになります。
つまり、出勤要請を拒否することは社員の義務違反となるでしょう。
たとえば、火災・爆発事故・人命救助といった重大で緊急性の高い事故や、その社員(担当者)しか修理できない故障が発生し、しかもその影響がめちゃくちゃ大きいような場合に会社からの出勤要請を拒否することは権利の濫用となります。
とはいえ、そこまでではないような場合、社員の権利濫用とまではいえないでしょう。たとえば、たとえ重大で緊急性の高い事案が発生していたとしても、現に出勤している他の社員でなんとかなったり、多少の遅れが生じても対処できることが予想される場合などです。
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さて、年休を取り消して呼び出した日の社員の給料はどうするべきでしょうか。
きちんと労使協定の締結したうえで、時間単位年休制度を職場に導入していない限り、1日の年休を分割することはダメです(=呼び出して出勤させた分だけ時給換算して支払うのはダメ)。
そのため年休日の途中で呼び出して働かせた場合、その日(午前0時から午後12時までの24時間)全体が休暇日でなかったことになります。
会社側の都合で年休日を取り消したわけですから、やはり通常の出勤日と同じ給料の扱いをするべきでしょう。
企業によっては、休日労働相当の割増分を支払っている場合もありますが、これは法律以上の有利な取扱いをしているので問題ありません。特別手当といったプラスアルファの加算制度にしている企業もみられます。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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