病欠を必ず年休に振り替えないとダメですか

カラフルな背表紙の手帳。ピンクの革の腕時計。コーヒーの入ったモスグリーンのマグカップ。黒縁の眼鏡。3色のダブルクリップ。

当日の朝の電話で欠勤した社員。あとで「年休で処理してください」と言ってくる。毎回「病気なんだから当然でしょ」といった態度がなんだかなあ。仕事の段取りをつけて計画的に年休をとる人との差が・・・。会社として病欠を必ず年休に振り替えないといけないもの?

 

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こういった年休取得にまつわるお悩みを、企業の人事担当の方からよくご相談いただきます。ご相談のキモは「病気による欠勤日を後日年休に振り替えることができるのか」ということです。

 

法定の年休を社員が権利として取得できるのは、あくまでも事前請求が要件となっているからです(事前とは前日の終業時刻より前ということです)。

そこで今回は、社員は当然の権利として欠勤日を後日年休に振り替えることができるのか、そして会社は後日の年休振替を行わないといけないのか、確認していきたいと思います。

社員の当然の権利ではない

黒のスマートウォッチとユーカリの葉。

「病気などの理由による欠勤日を、後日年休に振り替えることができるのか?」

 

これについて、社員が当然の権利として後日に年休を振り替える請求権を持っているわけではありません。あくまでも就業規則の定めや会社の承認があって、はじめて振り替えが認められることになります。

 

つまり、年休の事後請求をどのように取り扱うかは、年休の事後振替を会社で認めているかどうかによって違ってきます。

 

裁判例でも次のような旨を示しています。

  • 年次有給休暇を請求する場合、社員はあらかじめ時季を指定して、会社に通知することが必要で、社員が勝手に遅刻やその他の事情で就業できなかった日を年休に振り替えることはできないと解釈されるべき。
  • とはいえ、会社が社員の申出によって遅刻やその他の事情で就業できなかった出勤日を年休に振り替えた場合には、その日は事前に請求した年休と同じように、始業時刻当初から年休となる。

実務上の注意点

ノートパソコンとユリの花。

もし、年休の事後振替を認めるような内容が就業規則においてハッキリと書かれていなくても(明文化されていなくても)、事後取得をも認めるような労働慣行が成立している場合であれば、当然それに従わなくてはなりません。

 

欠勤日を年次有給休暇に振り替える場合について、下記のような旨が通達で示されています。

  • 【問】病気や事故などで欠勤した場合、その日を社員の請求によって年次有給休暇に振り替えることは違法ではないと思いますが、就業規則などでそのことを定める必要はありませんか?
  • 【上記の問に対しての回答】その取扱い(年休の事後振替)が制度として確立している場合には、就業規則に規定することが必要である

就業規則にきちんと定めていないことで「あの人には(年休の事後振替を)適用して、この人には適用しない」といった不公平があってはいけないからですね。通達でも示されているので、この点には注意が必要です。

 

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年休に事後振替について、日本の企業社会では認めることが慣行となっているケースが多いかもしれません。ですが、それが「当然のこと」として「(年休は)取ったもの勝ち」というムードになっているなら問題です。

 

真面目で仕事に責任感があり、周りに迷惑をかけまいとする人ほど年休が取りにくいといった環境は、「働きやすい職場」といえるでしょうか。

 

年休はすべての社員がリフレッシュして、気分新たに仕事に取り組んでもらうためにあるものです。事前の取得申請が原則であること、事後振替は当然の権利ではないことを職場での共通認識にしておきたいですね。

テーブルに置かれた7つの真っ赤ないちごたち。

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

無料コンテンツ。ページが開かれた分厚い書籍。ガラス瓶に活けられた四つ葉のクローバー。
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