「ランチは、午前の仕事に目途をつけてから自分のペースでとりたい」
「休日のオフィスの方が落ち着くので、休日に出勤して仕事したい」
フレックスタイム制が導入された職場では、このように“休憩も休日も自由に自分で決めたい”との声が上がることは想像に難くありません。
ですが、フレックスタイム制は、始業・終業時刻のみを社員が自分で決める労働時間制なのであって、休憩や休日についてはフレックス制とはなっていません。
とはいえ、たとえば11時30分に出勤のフレックスタイム社員に対して、ほんの30分後に「昼休憩は12時から1時間なので必ずランチにしてください」というのも現実的ではなく、柔軟性に欠けますよね。
そこで今回は、フレックスタイム制で休憩時間や休日をどう運用すれば、そのメリットを十分活かせるのか、詳しく確認していきたいと思います。
休憩時間はどうなる?
フレックスタイム制であっても、休憩時間については社員の自主的な決定に任せられてはいません。
そのため、労基法における休憩時間の規定がフレックスタイム社員に対しても、一般社員と同様に適用されることになります。
この点について、下記のような旨の通達が出ています。
- (フレックスタイム社員であっても)労働基準法の規定とおりに休憩時間を与えなければならない。
- 一斉休憩が必要な場合には、コアタイム中に休憩時間を定めるようにすること
- 一斉休憩が必要のない事業で、休憩時間をとる時間帯を社員にゆだねる場合には、各日の休憩時間の長さを定め、それを取る時間帯は社員にゆだねる旨を記載しておく
とはいえ、このように一斉休憩をフレックスタイム社員に必ず与える必要があるなら、必ずコアタイムを設けなくてはなりません。法律上、コアタイムは任意によるものであるにもかかわらず、です。矛盾が生じてしまいます。
そこで、労使協定による一斉休憩の適用除外制度を活用する方法があります。
「フレックスタイム社員は、各日60分の範囲内において労働時間の途中で休憩時間をとること」といった旨を、会社と社員間による書面協定で定めておくとよいでしょう。
なお、フレックス制において労働時間の長さは自分で決めることができるので、たとえば社員の当日の労働時間の長さが6時間未満の場合は、休憩時間は必要ありません。そんなときのために、「(労働時間が)6時間を超え8時間未満の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間をとること」といった旨を先の労使協定の中に定め、社員が自ら当日の労働時間の長さを選択できるようにしておいても問題ありません。
休日はどうなる?
では次に、休日も自由にとるようなフレックス休日が認められるかが問題です。
休日の付与義務は会社側にあり、会社は必ずしも休日を特定することまでは労基法上求められてはいませんが、特定することが望ましいとされており、休日の変更も就業規則の定めにしたがって行う必要があります。
そこで、休日もフレックス制にしようとする場合は、「休日の変更」という形をとらなければなりません。つまり、「休日は日曜日、土曜日、国民の祝・休日」などと特定して定めておき、それを社員の希望や自主的な申し出によって振替変更する、という方法をとります。
就業規則に「フレックスタイム社員はあらかじめ所属長に申し出ることで、社員本人の希望により休日の振替変更ができる」旨を規定しておいて、それを実施するということです。
行政解釈では、「就業規則の定めるところにより休日を振り替える場合、その休日は労働日となるので、休日労働とはならない」とされているので、社員本人による自主的な休日の振替であっても、就業規則によって会社があらかじめ承認した休日の振替なので適法となります。
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フレックスタイム制は、社員自身が生活リズムや仕事の進み具合に合わせて労働時間の配分を行うことができる労働時間制度です。
とはいえ、いざ実施する局面になると「休憩時間はどうなる?」「休日はどうなる?」と細かなところで躓きがちです。
一般社員とは違う取扱いとなりますから、ぜひ確認の機会にしていただければと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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