「みなし労働時間制にしても、結局上司が部下の労働時間を把握しないといけないなら、意味なくないですか?」
会社は常に労働時間を把握して、社員にいま何時間働かせているのか、法律上で許されるタイムリミットまであと何時間なのかを知っておく必要があります。労働時間にまつわる法律の規定に違反してはいけないからです。
とはいえ、オフィスを出てセールスする営業職などでは、労働時間の算定が一般的に難しいため「みなし労働時間制」をとるわけであって、それなのに社員の労働時間を把握しないといけないのなら、「どうしろというんだ」という気持ちになりそうです。
そこで今回は、みなし労働時間制をとっている場合でも、会社には労働時間を把握する義務があるのかどうか、詳しく確認していきましょう。
みなし労働時間制とは?
労働時間をカウントするのが困難な業務や、業務の遂行方法を社員自身の裁量にゆだねる必要がある業務など、これらの業務にかかる労働時間については、通常の労働時間の算定では不適切だといえます。
そこで別に労働時間の算定方法が定められており、これがみなし労働時間制です。みなし労働時間制には、次の3種類があります。
- 事業場外労働に関するみなし労働時間制
- 専門業務型裁量労働に関するみなし労働時間制
- 企画業務型裁量労働に関するみなし労働時間制
たとえ「わたしの外回り営業の労働時間をみなし労働時間制でカウントされるのはいやです!」などと社員が主張したとしても、これは労基法で決められた労働時間の計算方法であるため、社員との合意や就業規則上の根拠は必要とされません。
事業場外労働や裁量労働による勤務を会社から命じられることによって、自動的に労働時間計算の特例の適用を受けることになります。
みなし労働時間制では会社の義務が免除される
では、このみなし労働時間制においても、会社の労働時間把握・算定義務はあるのでしょうか?
結論からお伝えすると、会社の労働時間把握・算定義務は「管理監督者」及び「みなし労働時間制の適用される社員」については免除されています。
通常業務においてかかる具体的な実労働時間の配分を、社員本人に任せるのが裁量労働制の趣旨であるため、会社にその把握を求めるのは無理を強いることになるからです。
まとめると、事業場外労働や裁量労働においては、会社の具体的な指揮命令下で働くというものではなく、一定の要件はあるものの、自分の裁量でもって断続的に働くという特殊なスタイルをとります。
そのため、実労働時間がいったい何時間であるのか会社としては把握できないので、みなし労働時間制をとることとなり、その場合には会社の労働時間の把握・算定義務を免除している、という話です。
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冒頭のような「みなし労働時間なのに会社は労働時間を把握する義務があるの?」という疑問はあっても、なぜか「フレックスタイム制なら会社は労働時間を把握しなくてもよい」と思い込まれているケースが多いようですが、これは誤解です。
フレックスタイム制はたしかに社員本人が、自由に出・退社時刻を決められるものですが、「みなし労働時間制」ではないので、会社の労働時間の把握・算定義務は免除されていません。
ごっちゃにせずに、フレックスタイム制の職場では、社員ごとに各日の労働時間の把握をすることをどうぞお忘れなく^^
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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