社員の勤務する場所が、本社や店舗、あるいは工場など、それぞれ別拠点にある場合も多いでしょう。そこで気をつけておきたいのが36協定の締結単位です。
職場が本社と店舗で分かれているけれど、「(36協定を)本社で締結しているからバッチリ、手続きに不備ナシ♪」と安心しているケース。
「本社も店舗も締結しているから問題ナシ・・・あっ、今年の春に新店舗がオープンしたが、バタバタしていて忘れていた・・・」といったケース。・・・これらのケースは要注意です。
というのも、36協定は本社だけでなく、支店、店舗、工場、営業所などそれぞれの事業場において締結しなければならないからです。
こういったうっかりミスは、よくやってしまいがちですから、今回は、36協定の締結単位をどう考えるべきなのか、そもそもについて詳しく確認していきたいと思います。
事業場の単位はどうみるの?
36協定の締結単位は、原則として労基法が適用される事業場ごとになっています。
この各事業場において、それぞれ36協定を締結しなければなりません。このことについて示された通達の内容をまとめると、下記のようになります。
- 労基法が適用される事業場とは、工場、事務所、店舗などのように、一定の場所で関連組織としてのビジネスが継続的に行われる、ひとつの事業のこと。
- ひとつの事業であるかどうかは、場所的にみて判断する。同一場所にあるものは、原則として分割しないで一個の事業とし、場所的に分散しているものは、原則として別個の事業とする。
- 場所的に分散していても、出張所や支所などで、規模が著しく小さく、事務処理なども独立して行えない程度である場合は、直近上位の機構と一括してひとつの事業として取り扱う。
事業場ごとに締結すること
前段でお伝えした通達の内容に照らすと、たとえば本社と支店と工場がある会社では、本社、各支社、各工場のそれぞれがひとつの適用事業場となります。
会社全体がひとつの適用事業場になるのではありません。
場所的に分散している会社の機構が、著しく小さな規模(単なる作業所、連絡所、駐在所など)でない限り、各工場、支店、営業所などはそれぞれ独立した適用事業場となります。
労基法36条では、「時間外・休日労働を適法化するには、事業場に所属する社員の過半数で組織する労働組合または過半数代表者との協定および行政官庁への届け出を要件とする」旨が定められていますが、この「事業場」とは、上述のそれぞれ独立した適用事業場を意味します。
36協定は、この適用事業場ごとにそこに所属する社員の過半数が加入する組合、または過半数代表者と書面の協定を結び、かつ、原則として所轄の労基署長に届けなければ適法な協定にはなりませんから、注意が必要です。
**
「本社しか36協定を結んでいなかった!」といったうっかりミスは、実はよくみられるのですが、その理由は「36協定は本社、A店舗、B支店を結べばOK」といった認識をしているためです。
そうすると、店舗が増えたり、支店の統廃合があった場合に、うっかりしてしまいがちです。「36協定はそれぞれの事業場で締結する」「事業場の単位は場所的にとらえる」この2点を覚えておくと、手続きモレを防ぐことができると思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事